故郷の富山県立大学で博士課程を終えられた福江先生は思いがけもなくオランダのデルフト工科大に留学することになった。
――デルフト工科大ではどんな資格で何を研究されたのですか?
「ゲストリサーチャーという立場でして基本的には"お客様"です。
私が所属していたのはインダストリアル・デザイン・エンジニアリングという学部です。つまりデザインを専門にしているところなので、コンピューターを使った大規模な解析とかタービンそのものを持ってきて実験してみるとか日本の工学系のような設備はないのです。
その代わりデルフトでは建築の梁なら梁の部分だけを丹念にシミュレーションしていたのです。全体ではなくて。私からすると、なぜそんな部分だけを、計算でも分かるようなことをやるのだろうと、すごく思ったのです。当時の私は大規模解析が大好きな人間でしたので。
今、振り返ってみると、デルフトの研究室でやっていたのは、大事なところだけをしっかりパラメータ化して、設計の勘所をちゃんと押さえて応用しましょうということだったのだと。やはりデルフトは凄いと」
――コンピューターによる解析、設計が進み過ぎて最初から頼り過ぎてしまっている。設計の原点に返ろうということでしょうか?
「そうです。ちょっと前、7~8年前ですかね。いわゆるコンピューター・シミュレーションが設計現場に一挙に普及したときがあって、その時は関連する大学の研究室はコンピューター・シミュレーションのお悩み相談室みたいになってしまったのです。
典型的なのは、シミュレーションでこんな結果がでたけど正しいですか? というのがありました。(笑)」
――何のためのシミュレーションか判らない。
「最近は3次元のシミュレーションが高性能でバリバリ使えますが、何も考えずに3D CADのモデルをポンと入れたら解析できるのです。
ところが、それをやると1つデメリットがあって、例えば構造とか、どこの流れの変化がその性能に影響しているかというのを見抜けないのです」
――なるほど。

テニスのラケットや釣りざおなどに使われているため、FRP(fiber-reinforced plastic,繊維強化プラスチック)はすっかり馴染みのある言葉となったが。しかし、どのような材料でどうやって作るかは、あまり知られていない。学生時代から実験を通じてそのFRPの奥深い魅力にとりつかれたという斉藤先生に研究の現状や課題をうかがった。
田中先生は、元々、機械工学科で複合材料の基礎研究をされていた。最近はそれに加えてバイオマテリアル、バイオメカニクスなど生体関連の研究もされているという。二つの異種領域にまたがる、最もイノベーションが期待できる分野の一つだ。
――修士ではどのような研究を?
畝田先生はもともと研究者になるつもりはなかった。修士課程を修了したら就職し、技術者としての道を歩むつもりだったという。それが恩師の勧めで博士課程にまで進み、防衛庁に勤務した後で再びKITに戻って来られて2013年から教授に。今までの研究の一端をうかがった。
――博士課程終了後に防衛庁技術研究本部に入庁されますが、この研究を伸ばしていこうという考えもあったのですか?