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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

心理科学科 の最近のブログ記事

心理情報学科 渡邊 伸行 准教授 渡邊先生が心理学を志したきっかけは「誤解」にあったという。高校生の時に外部から見ていた学問と大学に入って内部から見た学問との違いに驚くという話は良くある話。そこをどう折り合いを付け乗り越えて行くかは個人個人で皆違うのだろう。渡邊先生はどうされたのだろうか?

――若い人がスマホで使う顔文字や絵文字、スタンプの効果も研究されているとか? 最先端ですね。

 「コミュニケーションの研究の一環として、学生がLINEやTwitterなどで使っている顔文字などの効果もテーマの一つに入れているのです。あくまで学生がそのような興味を持ってくれたら、やりましょうかという感じで進めています。

――あれは当人の顔でなくても、やはり顔の表情が送られてくると、受け取った人は何か感じるものがあるということなのですか?

 「もともとは文字だけだとやはり無機質なので。あとは感情が伝わらないとか誤解が起きるのを防ぐために生まれたのではないかと。最初は()や^ ^ を使って人の顔に見せる顔文字から始まって、黄色い丸い絵文字になって、さらにLINEのスタンプが生まれたという感じです。

 スタンプはキャラクターや芸能人がイラスト化されているので、それがウケたのかも知れません。

 またLINEというインタフェースだからこそ使えたのでしょう。メールであれをやると、容量がかかったりとか、受け手によっては文字化けのように、きちんと伝わらないということもあるでしょう」

――心理学者としてのご専門は、顔の動きから心の動きを探ろうみたいなことですか?

 「もう少しシンプルな話です。顔の動きに対して、人がそれをどう判断しているかと。例えば相手の口角が上がったとか、目が細くなった時に人がそこからどうやって感情を読み取るかという話ですね。

 例えば、普通に会話をしていて、相手が何か笑ったようだなと判断したとします。それが相手の顔のどのような動きに基づくものなのかと考えるのです。結構知覚レベルになるかもしれないのですが、僕自身そのようなことを研究してきたのです。

 あと、文脈というか背景ですね。同じ笑顔の顔写真でも、「3か月前に恋人を亡くしたばかり」という文脈を加えることで全く違って見えることもあります」

――なるほど

 「顔のどういう視覚的な手掛かりに基づいて、表情を判断しているのかというところと、あとは、それがいろいろな文脈に置かれた時に、それがどのように変容するかと言ったところを研究しながら、人が顔を見てから感情を判断するまでの認知メカニズムの研究をやってきました。博士論文のテーマもそのような研究です」

――工学的な応用もあるとか。

 「実際、最近のデジカメではスマイルシャッターと言って、撮られる人が微笑むと口角の動きで自動的にシャッタを切ってくれるとか。あと携帯のアプリで無表情の写真を読み込んで怒りや笑いの顔に変化させるとかありますね。その辺はもともと心理学の知識があって、それを工学的に応用した例です」

――そもそも先生が心理学をやろうと思ったきっかけは何だったのですか?

心理情報学科 石川 健介 教授 「ものづくり」が中心でエンジニアを養成するKITだが、意外な職業につける道もある。その1つがスクールカウンセラーなどになれる臨床心理士への道。KITは北陸3県で初めて、臨床心理士第一種指定大学院を設置している。ここで指導されている石川先生に話をうかがった。

----先生は秋田県から埼玉大学教育学部に進まれ心理学を学ばれました。何かきっかけがあったのですか?

 「きっかけは特になかったです。とにかく家を出たかったのです。進学の時に普通に法学とか経済とか、いろいろ見ていく中で心理学というのがあるぞと気がつきました。ちょうど埼玉大教育学部にカウンセラー養成コースというのができていて、それでちょっと興味を持って行ってみようかなと。私はそこの1期生なのです。今はもうないのですけど。

 以前は日本の心理学の多くは文学部の心理学科と教育学部の教育心理学科が大部分。今は時代が変わりまして心理学部というのがあります」

----教育心理というのはどんなことをやるのですか?

 「学校で役立つような、先生がどういう風に子どもに関わったら良いのかとか、どのように教えたら良いのか、子どもはどういう風に発達していくものなのかなどです」

----大学院は金沢大学に進まれます。

 「埼玉大の学部のころから興味のある学会にいくつか参加していました。大学で勉強しているより学会に出た方がいろいろ勉強になりました。その中で面白いと興味をもった先生が金沢大学に移られたのです。

 ちょうど、私は学部を出る頃で就活して企業から内定をもらっていたのですが、自分で働いているイメージが出来なくて。もっと勉強したいという気持ちが強くなり、どうせなら面白い先生がいる金沢大にちょっと行ってみようかなと大学院を受けたのです」

「ヒトに興味があるので心理学を専攻した」という石川先生----その先生の何が面白かったのですか?

 「認知・行動療法(応用行動分析)の大家の1人だったのです」

*認知・行動療法とは認知(ものの受け取り方や考え方のクセ)に働きかけて気持ちを楽にする心理療法の一種。強いストレスを感じると私たちは悲観的に考えがちになって、問題を解決できない心の状態に追い込まれがちだ。認知行動療法は、そうした考え方のバランスをとってストレスに上手に対応できるように手助けする治療法だ。

----修士の時はどのような研究を?

 「その時は、統合失調症(当時は精神分裂病と言いました)の方を対象にしたソーシャル・スキル・トレーニング(SST)を研究していました。認知・行動療法を統合失調症の方の対人関係の障害に適用して、少しでも改善していこうというアプローチです。それを精神科の病院に行かせていただいて、研究しました。その時、その病院にいらしたのが、塩谷享先生(KITカウンセリングセンター長)です。私はSSTの研究をやり始め、修士課程、博士課程へと進みました。」

学習障害を研究中

----現在はどのような研究を?

心理情報学科 吉澤 達也 教授 ヒトが物を見て認識するのはわれわれ一般人が思っているほど簡単なことではない。目と脳の複雑極まりない相互作用の結果なのだ。吉澤先生はコンピュータによる画像処理から始まって、生物物理学、実験心理学といった領域にまで足を踏み入れ、しかもカナダ・マギル大学、米国・ニューヨーク大という超一流の国際的な環境で視覚について研究されてきた。

----先生は長野県出身で東京工業大学の電気電子学科に入学されました。なにかきっかけはあったのですか?

 「電気電子で何かやりたいというより、東工大で、そこの偏差値が一番高かったのです。たまたま、おじが東芝に勤めていてディスプレイが3行ぐらいしかないけど本体が巨大な、ごく初期のワープロの開発責任者だったこともあります。コンピュータにもある程度興味はあったので。

 実は高校の時、本当は法学部に行きたかったのです。しかし、現代国語の成績が相当悪くて諦めたのです。しかも試験を受けている時はほぼ満点だと思って解答しているのですが、いざ返ってきたのを見ると・・。解っていると思って、結構自信があって書いているのだけれど、毎回全然。それで法学部は」

----東工大の学部時代はどんな研究をしたのですか?

 「学部は東工大で授業も受けていたのですが、東大の生産技術研究所で卒論も修論もやりました。当時、旭化成で画像処理用のワークステーションを作っていて、それに載せる品質検査用のアプリケーションの一つを担当しました。

 不織布という、織らないで熱や圧力で圧縮して繊維を束ねてつくる布があるのですが、その布の中で繊維がいろいろな方向を向いているか、圧着している部分の面積が一定かどうか、等間隔になっているかどうか。そのようなことが品質に影響するので、それをコンピュータで自動的にやろうと」

----では博士課程もその延長で?

 「修論を書いている時に、コンピュータを用いたアルゴリズムで解析していても、実際われわれが物を認識している場合とはだいぶ結果が違うのですね。人が見たらパッと分かるのに、コンピュータは分からないと。でも逆もあるので、本当の意味で認識させるのであれば、ヒトの視覚のことについて分からないと駄目だろうと。

 そんなことを考えているときに、たまたま東工大の池田光男先生が書かれていた視覚を心理学、物理学で分析する本を読んで同じ東工大で、そのような先生がいらっしゃるならドクターは東工大でやろうと。今までの画像処理とかほとんど関係なく一からやり直したのです」

----研究の方向を変えて、97年からカナダのマギル大学http://www.mcgill.ca/に留学されます。日本ではあまり聞かれない大学ですね。

 「モントリオールにあるカナダで最も古い大学で世界的に有名です。この1校だけでA・ラザフォードを始め10人のノーベル賞受賞者を出しています。医学部は世界のトップ10に入ると言われています。この医学部の眼科付属研究所に4年近くいました」

----そこではどのような研究を?

心理情報学科 田中 吉史 准教授 田中先生はKITでは少数派の文系出身。小学生の頃は現代音楽を愛好するというちょっと変わった少年だったという。でも、ご自分の興味について関心を持ち続け、今でも「真の創造性とは何か?」という本質的な問題を追求している。

——先生が心理学に進まれたきっかけは何ですか?

 「私は都立大学(現・首都大学東京)の人文学部という文系出身です。最初の1年は学科に所属しないで、一般教養とかの授業を受けてから、いろいろ選んで2年目から決めるのです。哲学にしようか、心理学にしようかと迷って、結局心理学にしたのです。

 やはり哲学は考え抜いて終わりな感じでしょう。心理学はもうちょっと実験したり、データを取ったりして、証拠を取ってやるので」

——心理学は日本では文系ですが、国際的には立派な理系、科学ですからね。

 「そうですね。それが何かちょっと哲学よりは良いかなと。最後はそういう証拠があがるということで。もちろん、その前にも考えるプロセスというのがあります。心理学ではモデルを作ったりする部分もすごく大事なのです。それがないと実験も何も出来ないというのは後から痛感したのですけれども」

——先生は心理学の中で、どのような分野がご専門なのですか?

 「僕は認知心理学なのですけれども、主にどちらかというと記憶とか、思考とかを対象にしています。人間が考えるとはどういうことか、そういったことに興味があります。もともと哲学をやろうかと思っていた時もあったので、脳の仕組みとか神経とか、そういう話よりも、やはり考えるとか記憶するとか、学習するとかといったことに関心があるのです」

——さらに具体的にはどのような研究ですか?

 「ちょっと長くなるかもしれませんが、お話しましょう。もともと心理学をやる前は何か音楽をやりたいと思っていたのです。その時、音楽の趣味が友達と全然合わなくて、何でこんなに他の人と趣味が合わないのだろうと思い悩み始めたのです。

 それは多分、音楽の聴き方とか、人によって好みとかいろいろあるではないですか。そういう個人差があってでしょうけど」

——へえ。先生はどんな音楽が好きだったのですか?

 「クラシックですが、割と新しい時期のクラシックです。現代音楽とよばれている分野です。小学生ぐらいの時から聞いたりしていました。面白かったですし、心地よいというのもあったかな。やはり、すごくエキサイティングなところもあるし・・・」

「小学生から現代音楽を聴いてました」と語る田中先生——それはまた珍しい小学生ですね。そんな子供、初めて聞きました。ませた子がワーグナーのオペラを聞いたり、ビートルズに凝ったりするならまだ分かりますけど。

 「そうですね。親も困っていました。他の子と趣味が合わないので」

——どうせ伺っても分からないでしょうが、どんな作曲家の音楽がお好きだったのですか? 私が知っている現代音楽の作曲家は武満 徹ぐらいですが。

心理情報学科 伊丸岡 俊秀 准教授 KITの心理情報学科は全国でも珍しい「工業大学の心理系」だ。人間の心の動きを分析、総合して将来のものづくりへの応用を目指す。

 08年には最新鋭の機器を備えた「感動デザイン工学研究所」(神宮英夫教授のインタビュー参照、http://kitnetblog.kitnet.jp/koizumi/2009/01/post-5.html#more)も完成し、より高度な研究開発が可能となった。

 伊丸岡先生は金沢大文学部で心理学を学んだ後、大阪大学大学院で医学博士を取得した「文理融合」の申し子だ。専門は視覚認知という、モノの見え方と脳の関連を追及する学問。

――元々は文系だったのですか?

 「修士まで完全に文系の心理学です。修士の頃、脳機能計測がかなり一般的になってきて、私も計測を体験する機会がありました。

 ちょうど、その頃は心理実験だけではちょっと掴みきれないというか、本当に人間のことを調べられているのか自信がなくなっていた時期でした。やはり脳機能というとこからアプローチしなければ分からないと思って博士課程で脳機能計測をしたいと阪大に移ったのです。
 
――そもそも心理学をやろうと思ったきっかけは?

 「心理学でなければいけない、というきっかけはないです。大学は行動科学科で、もともと私はコンピュータに興味がありました。ただ、コンピュータ、そのものを研究するのではなく、それを使って人間を調べる、人間に働きかけたいという漠然としたものがあっただけです。

 なので、分野としては文系みたいなことをやりたいと思っていたのですが、高校生の頃、本当に大学で文系に行ってしまうと本を読むだけではないかと心配していました。

 たまたま目にした大学パンフレットで文系なのにコンピュータに向かっている写真が載っている学科があって、それが行動科学科だったのです」

コンピュータで人間を研究したかったという伊丸岡准教授 伊丸岡先生が学位を取った脳機能計測とは生きている脳の各部の生理学的な活性をさまざまな方法で測定し、画像化したりすること。脳の構造を画像化すすることはCTをはじめ、診断や研究のため古くから行われていたが、機能を画像化すする試みは80年代から盛んになってきた。

 測定する機器としては機能的MRI(核磁気共鳴)やポジトロン断層法(PET)、近赤外線分光法(NIRIS)などがあり、神経細胞の電気活動を可視化する方法として脳電図や脳磁図(MEG)がある。

――阪大での脳機能計測は何を使ったのですか?

感動デザイン工学研究所 所長 神宮 英夫教授 新しいモノ造りの方法が世界中で試みられている。しかし日本の場合、これまで成功してきた高度な技術を駆使した先端製品に頼りすぎてなかなか他の方法を見出せないでいる。従来型のモノ作りに頼るだけでは世界市場で勝負できないという現実がある。

 例えば携帯電話やパソコンなど。日本製は機能過剰になりすぎて外国では売れないという現象が起きている。孤立してしまい世界の進化とは別の途を行くという意味で「ガラパゴス化」と呼ばれている。

 一方、米アップル社のiPodのように、技術的にはそれほど画期的な製品でなくても新しいコンセプトやライフスタイルを提示し世界のベストセラーになった商品もある。

 こうした状況の中、金沢工業大学は2008年3月、感動デザイン工学研究所をオープンした。コンセプトは「心理学をものづくりにどう生かすか?」だという。

 真新しい研究所を訪ね神宮英夫所長に聞いた。

――感動デザイン工学とは初めて聞きました。

 「若い人たちと研究所を作る議論をしていて浮かんできました。最初は"感性"デザイン工学としたのですけれど,"感性"は結構使われていて新鮮味がない。そのころ企業コマーシャルで出始めていた"感動"に注目しました。今、製品に求められているのはいかに消費者の心を揺さぶる製品を生み出すかです。

 似たようなことは欧米の大学ではエンジニアリング・サイコロジーと呼ばれていろいろ試みられています。"ものづくり心理学"とでも訳せるでしょうか」

――先生はもともと心理学の出身ですか?

 「はい。人が時間をどうやって感じるかという時間知覚を研究していました。光は目、音は耳といった専用の器官が時間にはないのに人はなぜ時間がわかるのかということです。学芸大学という教員養成の大学で、技能学習、つまり上手にピアノを引くにはどうすれば良いのかなどを追及していました。時間知覚と体の動きとはうまくタイミングを取るという重要な問題だったのです」

――それと現在の研究の関連は?