小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2009年05月 アーカイブ

ロボティクス学科 出村 公成 教授 久々に説得力があり刺激的な本を読んだ。

 「ものつくり敗戦」(木村英紀著。日本経済新聞出版社)だ。著者の木村氏は理化学研究所の研究者で制御工学の第一人者。内容は背表紙によると、日本型「ものつくり」の限界を明らかにし、普遍性を追求せず、暗黙知ばかり重視する「匠の呪縛」の危険性を明らかにする警告の書という。

 詳しい内容は省略するが、木村氏はこれから日本の技術には「理論」、「システム」、「ソフトウエア」の三分野がますます重要になってくると指摘している。しかし、この三つは日本が長年、苦手としてきた。なぜ日本が不得意だったかというと、三分野とも「見えない」からだという。確かに筆者自身も技術に興味はあるが、具体的にモノが見えない分野は原稿にしにくいし苦手である。

 この本を読んで、インタビューしたばかりの出村教授の話を思い出した。

 出村教授はニューラルネットワークの「学習理論」で博士号を取り、現在、ロボットを動かす「ソフトウエア」を研究している。ロボットは「システム」の一種だろう。日本の苦手三分野を1人でまとめて挑戦していることになる。

 「2050年までにサッカーの世界チャンピオン・チームに勝てる自律型ロボットのチームを作る」のが目標のロボカップは1997年に始まった。KITは99年からこのグローバルな大会に挑戦し続けている。夢考房ロボカップ・プロジェクトと出村研究室の共同研究によるロボットは02年から3年連続で世界大会準優勝という好成績を挙げた。

――「学習理論」からなぜ「ロボット」に?

 「もともとは生体の神経系統を模したニューラルネットワークをやっていたのですが、どうしてもブラックボックスになってしまい、高度な情報処理は難しいですね。

 ロボットには興味があって所属していた大学の研究室でもロボットのOSとかも作っていたのですが、ロボットというのは研究にならないことを相当やらないと駄目なのです。動かすだけでも非常に大変で、決められた年月で学位を取りたかったので当時は諦めたのです」

――ロボットはKITに来られてからですね。