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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2015年02月 アーカイブ

電気電子工学科 宮城 克徳 教授 現在の我々の生活を支えてくれているのは交流電力システム。その重要機材の一つが電圧をコントロールしてくれる変圧器(トランス)だ。一般人には馴染みのない、実に地味な存在だが、実際は騒音を出したり内部が劣化したりするので絶え間ない研究、開発が進められている。長い間、このトランスの研究をしてこられた宮城先生の話をうかがった。

----先生は室蘭工業大学電気工学科のご出身ですが、大学に入るとき電気関係に進みたいという何かきっかけはあったのですか?

 「特に電気をやりたいというわけではなくて、当時、電気とか電子は工学部の中で割と競争率の高い人気学科でした。そこで挑戦してやろうと。

 電気に入って特に何をやりたいということもなかったのですが、目に見えない電気を見る事ができるという研究室に衝撃を受けました。そこで研究していたのはいわゆる放電の実験です。雷もそうですが、放電現象そのものは大昔からあるのですが、電気を肉眼で見る方法というのはそれほど多くないので面白いと思ったのです」

----それで修士にまで進まれて放電のどのような研究を?

 「対象物としては電線を絶縁する碍子(がいし)ですね。碍子に汚れが付きますと電気を通しやすくなってしまうのです。基礎実験としては液体の上に電極を置いて放電させて観測します。その時にシュリーレン法という方法を初めて使いました。これを使うとマイクロセカンド、100万分の1秒という短い時間での放電の変化の様子がわかります」

 透明な物質の中で場所により光の屈折率が違うとき、縞模様やもや状の影が見える現象をシュリーレン現象と呼ぶ。暑い日に長時間日光が当たった自動車の屋根の上にもやのようなものが見える事がある。これは温度によって空気の密度が変わるためにおこるシュリーレン現象の一つだ。シュリーレン現象を利用して目に見えないものを見えるようにするのがシュリーレン法だ。シュリーレンはドイツ語のSchliere(むら)からきている。

----修士を終えられて、重電関連が専門の明電舎に入社され沼津の電力機器工場に配属されます。室蘭から沼津だと暖かくて暮らしやすかったですか。ここではどんな仕事をされたのですか?

 「いいえ、北海道の寒さに慣れていると最初、沼津は蒸し暑く感じました。慣れるまで夏の暑さはつらかったです。ここで電力用変圧器、トランスの研究開発をしていました」

----トランスというと素人の私には、まだ研究すべきことがあるのかと思ってしまいます。現代においてトランスの研究開発というと何が難しいのですか?

 「難しい点はたくさんあります。これからもまだまだ出てきます。その一つは音です。騒音。ブーンという動作音。中は電線をくるくる巻いたコイルだからどうしても動くのです。そのために音が出る。

 それでいかに振動を抑えるか、少なくするかというのは課題として残っています。他に、中に入れる油ですが、化石燃料をなるべく使わないようにして植物性の油に替えていこうという動きもあります」

----それは冷却用の油ですか?