小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2011年03月 アーカイブ

電気電子工学科 花岡 良一 教授 電気流体力学というあまり聞き慣れない分野がある。液体や気体に電界や磁界をかけると液体や気体が流動するという現象を研究する学問だ。上手く利用できれば新たな原理のポンプやモーターにつながるため、あちこちで開発競争が行われている。しかし電気磁気学と流体力学の両方にまたがるため研究は難しい。花岡先生はこの困難な開発に挑戦してきた。

——先生はKITから金沢大で修士をとり、またKITに戻られたのですか?

 「はい、そうです。もともとはここで助手として電気機器の研究をしていたのですが、後に学長になられた京藤先生が“ぜひ電力をやってほしい。うちの大学ではどうしても電力が必要なのだ。電力のない大学は外科がない医学部のようなものだ”と説得されたのです。当時、KITには大学院がなかったので金沢大の電力の講座に行きました。

 行った当時は、いろいろと気体の放電とかその解析とかやっていたのですが、その中で
液体中の放電というのを誰もやる人がいない。難しくて分からないから。私はそれなら挑戦しようとそのテーマを選んだのです」

——空中の放電ならば雷の問題とか良く聞きますが、液体中の放電なんてあるのですか?

 「当時、極低温のケーブルを開発しようという動きがあったのです。そのときに液体窒素をつかうわけです。ところが、一番、ネックになるのがいわゆる高電圧をかけた時のクエンチという現象です。ちょっと熱がどこかに発生すると、それが重なっていって熱が大きくなって断線してしまうのです。その原因が放電なのです。
 
——液体窒素中に放電するのですか?

 「液体窒素の中で電極が放電を起こすのです。少しでも熱が加わると、そこでバブルができます。気体化して、そこで放電が起き、どんどん膨れ上がっていくという恐ろしい現象です」

——極低温ケーブルは実用化されたのですか?

 「一部、極低温ケーブルということで実用化されつつあります。まだ問題があって完全になっていません。超電導ではないのですが、低温なので抵抗がぐっと小さくなる。私はその開発をしていたわけではないのですが、基礎研究ということで、液体窒素の中の電気伝導とか、破壊のメカニズム、そういったものをやっていました。

 こうしたさまざまな放電を研究しているうちにEHD(Electrohydrodynamics)電気流体力学という現象を知ったのです」

——EHDを一番、最初に発見したのは誰なのですか?

 「かなり前で、歴史はずっと古いのです。1800年ぐらいから知られてました。電圧をかけると液体がわーっと動き出すのです。動き出す現象があるにもかかわらず、電気伝導の理論の中にはEHDは全然入っていなかったのです。要するに流体力学と電気がくっついたものですから、理論解析がものすごく難しいわけです。みんな嫌ったわけです。電気伝導がEHDにどう絡むかを実際に証明して解析したのは私が初めてなのです」

——EHDはどんな液体で起きるのですか?

 「どんな液体でも起きます。水でも起きます。メカニズムは液体によってかなり違うのですが、非常に絶縁性の高い液体ですと、不平等になっているような電界をかけると分極してプラス、マイナスに分かれたものが、強い電界がかかっている方に動き出すのです。

 私が対象にしているのは絶縁性が高い液体です。本当は電流が流れないはずの液体なのに電気が流れる、電気伝導が起きる、放電してしまう。その特性は何で決まるのか、70年代、80年代世界中で盛んに行われてきたのです」

——そんな基礎的なことが分かっていなかったのですか?