小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2010年07月 アーカイブ

電子情報通信工学科 牧野 滋 教授 最近、国民的に関心を呼んだ科学関連ニュースといえば、何と言っても小惑星探査機「はやぶさ」の帰還だろう。2003年に打ち上げられ、小惑星「イトカワ」に到達し表面のサンプリングを試みて、再び地球を目指し途中で何度も通信途絶しながらも2010年に約60億kmの長い旅を終え、無事地球にカプセルを落下させて燃え尽きた。

 こうした遠く離れた探査機や人工衛星との通信に欠かせないのがアンテナだ。牧野先生は30年にわたって三菱電機で衛星搭載用のアンテナの研究に取り組み、07年よりKITに。三菱でアンテナといえば別段信一先生もKITにおられ、このインタビューで紹介した(http://kitnetblog.kitnet.jp/koizumi/2010/02/post-24.html)。

――「はやぶさ」も成功したし、日本の宇宙通信関連のアンテナ技術は国際的にかなりのレベルまで行っているのですか?

 「いやいや、予算が全然少ないですから・・・。米国はNASA(米航空宇宙局)、ヨーロッパはESA(欧州宇宙機関)、日本はJAXA(宇宙航空研究開発機構)が宇宙関連の研究をまとめています。あまり変わらないように見えますが、現在のアンテナの状況や将来の動向などは、ヨーロッパが企業や大学に研究資金をばら撒いて先行しています。

 アンテナ研究の成果を発表するワークショップみたいなところを時々、聞きにいくのですが先端的な技術は全部ヨーロッパです。米国は理論をよく発表します。しかし、軍事関連が多くなかなか表に出てこないのです。

 ヨーロッパは本当に理論に基づいたものを作っていて、素材や作り方も研究しています」

――ヨーロッパが進んでいるとは意外ですね。やはり国際学会などに良く出ていないと分からないですか?

 「その通りです。学会で日本からも何か出すものありませんかと聞かれるのですが、恥ずかしくて出せないです。全然違います。

 同じアンテナを1枚作るのでも、ヨーロッパだったら軽くて精度が良い材料を作って実際に飛ばしています。日本はまだまだです。

 人工衛星は信頼性がすごく大事です。日本ではそのために部品レベルで良いものを集めて全体で良いものを作りましょうというレベルがずっと続いています。

 ところがヨーロッパでは本当にぺらぺらで軽いものを全部一体化して作ってしまうことが進んでいる。複雑なジャングルジムに見えるようなアンテナでも3次元CADで一体化して設計、性能も全部シミュレートしてしまう。

 企業や大学の機械屋さん、電気屋さん、材料屋さんが一体となって開発する。それを指導するのがESAなのです。日本ではこのような開発はあまり聞いたことがありません」
 
――宇宙関連での遅れはちょっと心配です。

心理情報学科 伊丸岡 俊秀 准教授 KITの心理情報学科は全国でも珍しい「工業大学の心理系」だ。人間の心の動きを分析、総合して将来のものづくりへの応用を目指す。

 08年には最新鋭の機器を備えた「感動デザイン工学研究所」(神宮英夫教授のインタビュー参照、http://kitnetblog.kitnet.jp/koizumi/2009/01/post-5.html#more)も完成し、より高度な研究開発が可能となった。

 伊丸岡先生は金沢大文学部で心理学を学んだ後、大阪大学大学院で医学博士を取得した「文理融合」の申し子だ。専門は視覚認知という、モノの見え方と脳の関連を追及する学問。

――元々は文系だったのですか?

 「修士まで完全に文系の心理学です。修士の頃、脳機能計測がかなり一般的になってきて、私も計測を体験する機会がありました。

 ちょうど、その頃は心理実験だけではちょっと掴みきれないというか、本当に人間のことを調べられているのか自信がなくなっていた時期でした。やはり脳機能というとこからアプローチしなければ分からないと思って博士課程で脳機能計測をしたいと阪大に移ったのです。
 
――そもそも心理学をやろうと思ったきっかけは?

 「心理学でなければいけない、というきっかけはないです。大学は行動科学科で、もともと私はコンピュータに興味がありました。ただ、コンピュータ、そのものを研究するのではなく、それを使って人間を調べる、人間に働きかけたいという漠然としたものがあっただけです。

 なので、分野としては文系みたいなことをやりたいと思っていたのですが、高校生の頃、本当に大学で文系に行ってしまうと本を読むだけではないかと心配していました。

 たまたま目にした大学パンフレットで文系なのにコンピュータに向かっている写真が載っている学科があって、それが行動科学科だったのです」

コンピュータで人間を研究したかったという伊丸岡准教授 伊丸岡先生が学位を取った脳機能計測とは生きている脳の各部の生理学的な活性をさまざまな方法で測定し、画像化したりすること。脳の構造を画像化すすることはCTをはじめ、診断や研究のため古くから行われていたが、機能を画像化すする試みは80年代から盛んになってきた。

 測定する機器としては機能的MRI(核磁気共鳴)やポジトロン断層法(PET)、近赤外線分光法(NIRIS)などがあり、神経細胞の電気活動を可視化する方法として脳電図や脳磁図(MEG)がある。

――阪大での脳機能計測は何を使ったのですか?