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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2011年08月 アーカイブ

数学一家から化学へ

カテゴリ:応用化学科
2011.08.05

応用化学科 小松 優(こまつ ゆう)教授 小松先生は日本溶媒抽出学会の会長などを務め、海外の研究者との幅広いネットワークで知られる。その多彩な研究歴の原点をうかがうことからインタビューは始まった。

——数学一家で育ったそうですね?

 「父は小松勇作といって、旧制金沢医大から東大数学科に進んだ数学者で、専門書も多数著しています。東工大の教授になり、図書館を初めて造ってその館長も勤めました。母親の兄は矢野健太郎といって、やはり数学者で数学の入門書を多く書いてます」

——私が学生の頃は、数学者といえば矢野健太郎さんでした。素人にも数学を分かり易く面白く解説した本には大変、お世話になりました。その数学一家でどうして化学に進まれたのですか?

 「うちはみんな数学で、紙と鉛筆で座ってばかりいるけど、僕はワンパクで体を動かす方が得意だった(笑)。中学・高校の化学の先生の影響でしょうか。リトマス試験紙など視覚に訴える実験を多くしてくれて子どもの興味がわくようにしてくれました。

 僕はどちらかというとモノづくりよりも基の物質の変化に興味がでてきた。数学は嫌だったけれども、まあまあ出来た。だから、ものの動きでよく分からないのが、数式的に解析すると割と予測できるというのが面白かったんだ。

 例えば最初に化学反応で色がつきました。順番に行くと次はどこで色がでるかということが分かると、次に再現しやすくなりますよね。次から次へとそうやって進むことができる。

 僕の専門の溶媒抽出というのは現象が一番見やすいのです。物質には気体・液体・固体とありますよね。気体というのはちょっと試してみたことはあるのですが、メチャメチャ難しい。ちょっと漏れたりするとアウト。あっと言う間にダメになる。一方、固体というのは反応が遅いのです。すると、ものの現象で一番分かり易いのは液体で、水と油のように液体と液体の中での反応を見るのが溶媒抽出で、それが面白くてずーっとやってきたのです」

「僕はワンパクだから化学に進んだ」と小松先生 溶媒抽出については藤永薫先生( http://kitnetblog.kitnet.jp/koizumi/2009/01/post-4.html )のインタビューでも解説した。固体または液体に適当な溶媒を加え、その溶媒に溶ける成分を溶かし出す分離法だ。衣類についた汚れをベンジンで取るシミ抜きは身近な溶媒抽出だ。古い携帯電話など廃棄物から有用金属を回収する「都市鉱山」の中心となる技術も溶媒抽出だ。小松先生と藤永先生は、溶媒抽出の世界的権威ヘンリー・フライザー教授のいる米国アリゾナ大学に留学中からのご縁だ。

——先生も都市鉱山は研究されているのですか?

 「今、自動車会社から研究費をもらってやっているのはマフラーを分解した時に出るプラチナや金です。昔は表面塗装をして、クロムとか危ないものが入っているから、このような危ないものを環境中に出さないようにと捕まえた。溶媒抽出の層を通すと有害な金属を取り除けるのです。しかし、今はクロムを全部使ってはいけない事になりました。変わってマフラーの中のプラチナを取り出そうと。都市の廃棄物の中から大事な金属を回収できれば、日本は世界でもベスト10に入るくらいの資源国家なのです」


——水の浄化も企業と組んで研究されているそうですが。