2021.04

        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

Monthly アーカイブ


小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

捨てられる熱の回収・利用を目指す

カテゴリ:機械工学科
2021.04.23
 

機械工学科 藤本 雅則 准教授 偶然、このインタビューで前回の瀬戸雅弘先生に続いて機械工学科の先生が続くことになった。しかし、二人の先生方が機械工学に進んだきっかけは全く違う。また現在の研究領域もかなり離れている。特に藤本先生の研究は機械工学という名前からは素人が想像できない分野だ。期せずして機械工学という領域の広さ、多様性がわかる展開となった。

――先生は滋賀県立虎姫高校のご出身です。虎姫という高校名は珍しいですが、地名ですか?

 「そうです。虎姫町という地名です。長浜市の北側に隣接してます。虎姫高校は滋賀県北部の進学高という感じです」

――そこから石川県のKITに進学というと、何かきっかけがあったのですか? やはり高校の先生の推薦?

 「いいえ、違います。高校自体、大学の進路決定は生徒まかせで、みんな適当に勝手に決めなさいという感じでした。当時は今と違って情報源が豊富ではなかったです。その中でKITは大学案内のカタログというか紹介プログラムが充実していたので、そういうもので興味を持ったという記憶があります。インスピレーションで最初にパッと決めた感じですかね」

――理系志望は決まっていたのですか?

 「はい。父親が機械設備関係の仕事をしていまして、いろいろな資格を持っていました。その資格を取るためにもいいし、機械工学は一番つぶしが利くと常々聞かされていました。父の話にはなるほどと思いました。それは魅力的だと、機械をやろうと決めたのです」

――先生にとってKITの機械工学科はドンピシャの選択だったのですね?

 「ええ、私にとっては最高の選択です。高校生の時は進学校の中で勉強が出来る方ではなく、成績も上位ではなかったのです。KITに来たおかげで学問に目覚めたと思います。新谷一博先生( http://kitnetblog.kitnet.jp/koizumi/2009/04/post-10.html#more )、佐藤恵一先生、矢嶋善次郎先生にも教えていただきました。おかげで研究の道に進むことができたと思います」

――それでKITでは何を専攻されたのですか?

 「最初からヒート、熱をやりました。熱工学です。具体的に言うと、イオン風をつかった凝縮促進というテーマでやったのです。イオン風というのは気体中で電場をかけるとイオンの流れができますが、イオンだけでなく中性粒子も加速されて流れになるのです。このイオン風を使って熱の移動を促進させようというものです」

――イオン風と言うと、私は小惑星探査機「はやぶさ」で有名になった宇宙ロケットの推進力に使うイオン・エンジンを思い浮かべますが?

 「あそこで使うイオンとはケタが違って。こちらのイオン風( ionic wind )は空気中の分子に電場をかけることで駆動して、一つの流れにするというもので、イオンとは言いながら実は原子、電子レベルの意味でイオン化はしていないのです。

 ちょっと判りにくいですが。いかんせん、こちらは消費電力が小さいので推進力はないのです」

――では具体的にどのように応用されるのですか?

 「例えば火力発電に使うボイラーがありますね。タービンを回すために高温、高圧の水蒸気を作ります。通常は発電に使った水蒸気はそのまま廃棄してしまうのですが、これをイオン風などの利用によって熱を効率良く回収することができます。また熱交換器としても十分可能と考えています」

――そうなると、電気電子工学もかなり勉強する必要がありますね。

 「そうです。私が研究室に入って最初にやったのは、高電圧電源を自作したことです(笑)。今でこそ、手頃な大きさのものを十数万円ぐらいで買えるのですが、当時はなくて、あっても非常に高価で、我々の研究費で買える代物ではありませんでした。それで仕方がなく回路を考えトランスを組み合わせて作ったのです。100Vの交流を入れて30kVTの直流を作り出しました」

実験結果を分析する藤本先生クボタで水処理も

――博士課程を出られてから、大阪にあるクボタに入社されます。クボタは農機具のメーカーだと思っていました。

 「そうなのですが、実はクボタはトラクターといった機械分野の他に環境系の水処理分野もあるのです。当然、私は水処理分野に配属されました。研究職ではなく、普通の一般社員としての入社なので、いろいろなことを経験させてもらいました。もちろん現場で工事も体験しましたし、設計、研究、開発もしました」

――クボタに4年間おられて、エンジニアとしてこれからというときに、縁あってKITにこられました。現在はどのような研究を?

 「はい、会社にようやく慣れたところだったので、正直迷いました。ただ、こちらに熱の専門家が少ないということなので、いろいろなことができるかなと。

 今、進めている研究の一つは氷をできるだけ高い温度で凍らせる技術です。氷は温度が0℃になるとすぐにできるわけではありません。冷蔵庫などで冷やしていってもマイナス10℃以下になってもなかなか凍らない液体の状態が続くのです。そういうところに何かホコリのような核になるものを入れたり、ショックを与えてやると、それがきっかけで凍るのです。

 我々はそのキッカケに電場を使って凍らせられないかといろいろ試しているのです。まだ試験管レベルですがマイナス5℃くらいまでできました。これがもっと0℃に近づけば氷を作る時に省エネになるわけです」

試験管に製作した氷を紹介する藤本先生 藤本先生の研究は新たにモノを作るというよりも、捨てられているエネルギーを回収し、再利用していこうという、どちらかというと地味な分野だ。しかしKITも全学をあげて推進しているSDGsの流れでは重要なポジションを占めていて、これからますます注目されそうだ。

< 前のページ