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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2011年04月 アーカイブ

電子情報通信工学科 會澤 康治(あいざわ こうじ)教授 一般にはほとんど知られていないが強誘電体という物質がある。會澤先生はこれを使った新しい情報処理デバイスの研究を目指している。

——強誘電体とはどんな物質ですか?

 「強誘電体というのは誘電体の一種です。誘電体は電圧をかけると内部にプラスを帯びた部分とマイナスを帯びた部分に分かれるのです。物質の中には多かれ少なかれプラスとマイナスに分かれる成分があって、電圧をかけると中でそういったプラスとマイナスに分かれる状態になります。それを分極といいます。

 普通は電圧をかけないと、そういう状態にならないのです。ところが強誘電体というのは一度、電圧をかけて、その後で電圧をかけるのをやめても、その分極状態が残っているという性質があるのです。しかも、電圧をかける極性、プラスとマイナスを入れ替えると、その分極の向きも変わるのです」

 ここで、會澤先生のご説明に加えて、もう少し誘電体について説明しておこう。テレビ、パソコン、携帯などの電子機器にはコンデンサーという部品が必ず入っている。電気を瞬間的に蓄える機能があるが、これは誘電体に電極を付けた構造をしている。誘電体は直流の電気は通さないので絶縁体と同じ意味で使われる。ガラスやセラミックス、プラスチックは誘電体だ。

——強誘電体はメモリーに使えそうですね。

 「まさしくそうです。プラスとマイナスの向きの違いをデジタル回路の1と0に対応できるのです。また、電圧、電源を切ってもその状態が保たれていますから、いわゆる不揮発性メモリ、フラッシュメモリなどに置き換えられます」

——フラッシュメモリよりも性能がいいということですか?

 「今のフラッシュメモリはトランジスタの中に電子が残っているか、いないかで、1と0を区別しています。問題点は書き換えの回数に制限があるのです。同じところをずっと使っていると動かなくなる。でも、回路的な工夫で実際はもっと長持ちします。強誘電体は全く別の原理なので回数の制限はありません。また消費電力が低く、より高速なデータの読み出し、書き換えが可能なのです」

——強誘電体はいつごろから研究が行われているのですか?

 「強誘電体という材料は昔から知られてます。基本原理も40-50年前から分かっています。ただコンピュターのメモリにというのは90年ごろからの話です」

——具体的な材料はどんなものを使うのですか?

建築学科 永野 紳一郎 教授 2011年3月11日に起きた東日本大震災は日本に未曾有の被害をもたらした。この被害から立ち直るためにも、防災科学の重要性はこれからますます高まる一方だろう。永野先生はKITの地域防災科学研究所で「火災」をキーワードに研究をすすめている。

――先生はもともと建築の「設備」が専門ですね。

 「はい。九州大学で修士をとり、1984年にフジタの技術研究所に入りました。その頃ちょうど、半導体製造の工場に使うクリーンルームの建設が非常に伸びていた時期でした。バブルの前で半導体もどんどん受注が入ってましたし。しかし、クリーンルームというのはまだ、あまりノウハウがあるようでなかったのです。

 フジタの技研には最初からクリーンルームをやるということで入りました。大学では設備関連で、ビル風など風分野をやっていました。今度は室内になるわけですが、当時はシミュレーションがなかったのです。パソコンは世にでたばかりでまだまだ非力でした」

――そうするとあちこちの半導体工場を見て回ってということですか。

 「そういうことではないです。研究所ですから、あくまで研究所が委託を受けてコンサルするという感じです。実務は設計部門がしっかりやっていますので。空調は吹き出しと吸い込みがあって、大体、設計手法は確立されてました。

 後は粉塵の濃度とかを予測して、ホコリがたまるかたまらないかというシミュレーションを、そういうことをやってました。私は入社して1年目は社内でそういう気流解析の技術を勉強しました。その後5年間、東大の生産技術研究所に国内留学というかたちで修業させていただいたのです」

――それは恵まれていますね。当時の生研というと今、国立新美術館があるとこですね。

 「はい、六本木です。生研ではもっと本格的なシミュレーションをしました。すでに日立製のスパコンをつかって。もっとも今からみれば貧弱ですが。

 シミュレーションといっても粉体一個一個の動きを追うのではなく、ガスとして扱います。空気の流れを解けば、それに煙が乗って流れるというのも同じロジックで解けるのです。そのまま解けば、重さは関係なく、とにかく煙の流れをちゃんと制御してやれば、それで微粒子制御になってきます。重いものは下に落ちますが、軽いものは煙と一緒にずっと舞います。だから、それをそのままちゃんと空気全体にその煙が残らないようにする“吹き出し”、“吸い込み”を設計してやれば良いのです」

――要するにクリーンルームのシミュレーションではホコリの溜まらない流れをつくるということですね。そうすると、一方に吹き出しをつくり反対側に吸い込みを作ればいつでもパーッと出て行きそうな気もしますが。

 「おっしゃる通りですが、そう簡単には行かないのです。一番シンプルなのは“層流型”と言い、部屋の天井全面が吹き出しで、一方、床全面を吸い込みにすれば、すっと通りますよね。だからどんなに汚そうと全部吸い込まれます。ただし、それは莫大なコストがかかります。普通の工場ではそこまでお金をかけられないのです。

 それで、吹き出しは天井ですが吸い込みは壁に付けるとかして、100%は無理だが90%とれるような気流設計にしようということになります」

 永野先生はその後、東大・生研からフジタに戻り、ドーム空間や大きな吹き抜けのアトリウム空間の気流を研究、00年よりKITに来られた。

――KITにいらっしゃってからはもっと広く、風一般を研究なさっているわけですか?