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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2011年11月 アーカイブ

電気電子工学科 小原 健司(おはら たけし)教授 2011年は超電導現象がオランダで発見されてちょうど100年になる。超電導とはある種の物質を液体ヘリウム温度(マイナス269度=絶対温度4.2K)まで冷やすと電気抵抗がゼロになるという現象。電気抵抗がゼロになれば、例えば送電ロスはなくなり省エネは革命的に進む。また1986年にはマイナス243度(絶対温度30K)以上でも超電導が起きる高温超電導物質の発見が世界中でブームとなったこともある。現在までの最高温度はマイナス109度(絶対温度164K)である。小原先生は研究者としてのスタート時点から一貫して超電導と取り組んでこられた。

——最初は超電導の何を研究されたのですか?

 「最初は超電導線の安定性、不安定性というものです。超電導線はその頃不安定だったのです。すぐに超電導ではなくなって常電導になってしまう。超電導マグネットが瞬間的に超電導でなくなると、どうなるかというと爆発のようになるのです。大きな魔法瓶のようなものに液体ヘリウムが入っていて、そこにマグネットがあるのです。電流で磁場を作っている。そのときに何かあった途端に常電導になったら、抵抗が一気に出て、熱がばっと出るのです。

 そうすると周りの液体ヘリウムが熱でばっと気化してしまいます。そうなると広い実験室も一瞬にして真っ白になってしまう。山の中に霧が立ちこめて何も見えなくなってしまうのと同じ感覚です。大規模なものを、1回だけ経験したことがあります。

 実験も含めて3年ぐらい、超電導線の安定性について研究し、論文を電気学会誌に投稿しました。」

——それがスタートですね。その後の応用は?

 「いろいろなことをやりましたが、77年以来ずっとやっているのは磁気分離です。磁気力を使って、汚れた水や空気をきれいにしようという。普通の状態では磁石に吸い付けられるのは鉄などの磁性金属だけですが、磁場の中ではすべての物質は磁性を持つのです。それを強い磁力で捕まえるのが磁気分離です。この利点は濃度の薄いものを大量に高速に分離できることです。

 今、実は一生懸命やろうとしているのは話題になっている除染関連です。福島原発から出た放射性物質が地上にあり、それを水で洗い流す除染作業が問題になっています。水にとけ込んだ希薄でしかも細かい放射性物質を磁気分離ならば確実にとれるのではと考えています。以前のつくばの研究仲間や大阪大、熊本大の先生達とアイデアを出し合っています。」

——福島の除染は社会問題になっているので是非実現させて欲しいです。

 「この磁気分離による汚染除去は95年ごろから結構脚光を浴びて、国のプロジェクトでいろいろやったのです。一番大きかったのは科学技術庁で、その後NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)だとか。私は04年にKITに移籍する前に、原子力予算や、その前は科技庁の超電導マルチコアプロジェクトで環境ホルモンを浄化したり、地熱水の中のヒ素を取り除くなどの研究をしていました。」

「磁気分離は除染に有効」と小原教授——磁気分離は他の方法に比べ何が利点なのですか?

電気電子工学科 平間 淳司(ひらま じゅんじ)教授 電気電子工学科、平間先生の全研究テーマの3分の2は「生き物」系だという。しかも生き物といってもキノコとか植物そして昆虫系だ。ユニークな研究にいたった背景をうかがった。

——最初は電気がご専門ですよね

 「私はもともと小さい頃からものづくり派で、電子部品を使ってものを作ったりしていて、電子工作や電子回路にすごく興味があったのです。小学校5年生ぐらいから真空管でラジオを作ったり。中1の時にはアマチュア無線の資格を取ったので無線機を自分で作りましたね。もちろん送信機も受信機も真空管です。

 電子回路が好きで高校も電気ですし、兄がKITの土木に行っていて、電子工学科もあるというので、親に僕も行きたいと頼んで」

手製の真空管アンプを見せる平間教授——それが、どうして生体の研究に向かわれたのですか?

 「大学出て就職したりしているのですが、基本的にはKITにずっといるのです。ただ学位を取ったのは人間に係るテーマでした。

 ノドが病気になると、声がしわがれ声のような病的な声になってしまう。そういう時に、音を調べて診断技術に使おうというのが、自分の学位論文でした。

 もう少し詳しく言うと、喉頭がんとかポリープになると声がおかしくなるのです。その声を音響分析して、特徴を抽出します。こんどはその特徴から逆に音声合成で病気の人の声を作ったのです。

 それで次はお医者さんを相手にさせていただきました。臨床の現場では患者さんの声を聞いて、この患者はしわがれ声、空気が抜ける声とカルテに書くのだそうです。そのトレーニングをするために病気の声の合成装置を作ってあげたのです。

 それを熟練したお医者さんに聞いてもらって“これは確かに病気の声が出てる”などと評価してもらったのです」

——なるほど、すでに電気、電子だけの研究ではないです。でも、どうしてその学位論文をやることになったのですか?

 「もうお亡くなりになった先生ですが、医学系の先生がちょうどここの電子工学科に入ってこられたのです。その先生の下で研究をさせていただいたので、音声関連に興味が出てきたのです。その時に、自分で装置を作ったりいろいろしますので、電子回路などの技術が役立っているなという感じで研究ができたのです」

——それで生き物系の研究にも目覚めた?

 「学位を取ったとき、ちょうど他の方から“植物関係とか害虫防除とかで面白いことをやってみないか”と声をかけられたのです。

 医学系は大切なテーマですけど、単独でやるのはきついかなと。相手がお医者さんなので実験がやりにくいのです。それならと思い切ってテーマを変えてその話に乗らせてもらおうと。それから15年近くたつのですが、ずっと生き物系です」

——それは農業関連の方のですか?