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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

2009年02月 アーカイブ

学生を指導する 電気電子工学科 宮田 俊弘 教授 透明導電膜という材料がある。世界中のメーカーが熾烈なトップ争いを繰り広げている液晶テレビのディスプレーや太陽電池になくてはならない材料だ。それ自体で製品として売られていないので重要な割には一般市民にはあまり知られていない。
 
 この膜、その名のとおり透明(光を通す)なのに電気も通すという面白い性質を持っている。電気を通す代表は金属だが、普通、金属は光を通さない。また透明なものもガラスのように電気を通さないのが普通。ところがある種の金属の酸化物は透明なのに電気を通すのだ。
 
 液晶は電圧を掛けられることで変化し光を通すので、電極が透明でないとディスプレーとして見えないわけだ。また太陽電池も光を通す電極があるからこそ電気を外に取り出せる。
 
 この透明導電膜、今までほとんど酸化インジウムが使われてきた。しかし、このインジウム、ほとんどが中国からの輸入に頼っている。宮田教授は同じく電気電子工学科所属の南内嗣教授と共にインジウムに替えて豊富な亜鉛を使うプロジェクトを推進中だ。経済産業省の希少金属代替材料開発プロジェクトに07年から採択されている。

――時代の潮流の研究ですね?

 「実はこの研究はKITの南内嗣先生が20年以上も前に始めていたのです。私は当時まだ学生でした。南先生は1984年に世界で最初に酸化亜鉛を使って、酸化インジウム並みの非常に高い導電性と光透過性を実現させ論文発表をしたのです。当時、酸化亜鉛で透明導電膜を開発している人は世界に極僅かでした」

――実用化が難しかったのでしょうか?

 「そんなことはありません。われわれは90年代前半には基本的な技術はすべてクリアしていました。何度も学会で発表し、新聞発表もしましたし特許も持っています。でもメーカーが使ってくれないのです。インジウムの技術が確立し、いくらでも輸入できましたから」

――あえて新しい技術を使う必要がなかったわけですね。

 「われわれも稀少金属の代替とはいわなかったのです。ただ、亜鉛はインジウムに比べて値段は百分の一、非常に安いですよと。インジウムは重金属ですけど亜鉛はおしろいに使われているくらい人体に優しい材料ですとか。もちろん埋蔵量も多いので資源的な問題もないと言ったのですが。当時は資源ナショナリズムもなかったので、やはり早すぎたのですね。ようやく時代が追いついてきたということです」

――インジウムは中国以外では産出しないのですか?

  建築学科 西村 督 准教授 建築の構造形式の一つにトラス(truss)とよばれるものがある。細くて短い金属や木の部材で三角形を基本として組み合わせていく形式だ。良く知られているように多角形の中で一番単純な三角形が一番力学的に安定している。トラスは一般の住宅やオフィスに使われることはあまりないが、軽くて丈夫なため店舗や展示場など広い空間を覆う必要がある時には屋根の構造として良く使われる。変わったところでは今年、若田さんらが乗り込む予定の国際宇宙ステーションも基本構造はトラスだ。

 西村准教授は大学卒業後、太陽工業株式会社に入社した。同社はこのトラスと空気膜構造を得意とする会社だ。有名なところでは東京ドームの屋根を担当したことで知られ、NHKの「プロジェクトX」でも紹介された。同社はその前1970年の大阪万博でアメリカ館の空気膜構造を手がけ、一躍注目されていた。

 西村准教授は同社にいる10年近くの間に全国津々浦々の現場で100個所以上のトラス建築を設計してきた。金沢では泉が丘のトヨタカローラ営業所だ。夜になるときれいに見える建築だという。

――トラス建築を実際に建てる時に難しいのは?

 「部材はコンピュータのデータを工場に送って、ミリ・オーダーの精度で作られます。
鉄も伸び縮みをしますので、建てる時がどの時期か夏の一番暑い時か、冬の寒い時とかを考えて、どれだけの温度を与えておかないといけないかを考慮しなければなりません」

――設計以外ではどんなお仕事を?

 「会社時代の最後のほうですが、ちょうど2000年に建築基準法が大きく変わりました。そのためにどんな準備をしなければならないかという対策ですね。もうコンピュータで設計して次から次へと仕事をこなさないといけない状況でしたので、そのため早く設計できるツールを開発したりしていました」

 西村准教授の現在の研究テーマは「構造物の安定限界の解明と合理的な構造形態を生成するデザインツールの提案」だ。平たく言えば建物が壊れるぎりぎりの条件はどんなものかを解明し、簡単に合理的な構造を設計できるコンピュータのツールを作ることだ。

 こうした研究に携わるきっかけになったのはある実験だ。1990年に大阪でおこなわれた世界花博で太陽工業が施工したドーム型のパビリオンを博覧会終了後に壊すことになった。しかし、ただ壊すのはもったいないというので実物実験をすることになった。