前回の公聴会レポートに引き続き、今回は知的創造システム専攻の方々の発表を紹介いたします。
本専攻は、これまで約200名もの知的財産専門人材を輩出し、知的財産の創造・保護・活用という「知的創造サイクル」をマネジメントする知的財産プロフェショナルの育成をメインに弁理士資格等の国家資格にも対応するカリキュラムを採用しています。
従来、社内におけるOJTでの習得に頼らざるを得なかった分野の専門知識を大学院という高等教育機関で体系的・効率的に修得することが可能です。
さて、学校PRはこれぐらいとして、2月18日~23日に行われた公聴会の中から3名の方をご紹介したいと思います。
●まずはじめに小路さん、研究テーマは『デジタル著作物流通促進のための著作権の共有に関する考察』
ロースクール卒業後、企業の知財法務担当としてご活躍されている小路さん、本研究では音楽、写真、動画など様々なデジタル著作物をどのように流通させ課金・販売すれば良いのか?SNSとの相乗効果は?権利設定と権利行使の検討、共有著作権や二次的著作物の問題などなど、現状のプラットフォーマー(iTunes/YouTube/オールスポーツコミュニティなど)の事例を深く検証しながら、著作権者、プラットフォーマー、そして私たち消費者これら3者の新たな関係性を考察しました。
●続いて大内さん、研究テーマは『映像配信システムに関する技術動向分析と今後の研究開発分野・テーマに関する提言』
大手通信機器メーカーで長年キャリアを積まれてきた大内さんは、その専門的知識を活かし、総務省や経産省を中心とした政府政策動向、映像情報メディア学会や電子情報通信学会の論文動向、通信技術に関わる特許出願の動向などを丁寧に分析しながら、今後の情報通信技術の可能性を予測し、3点の研究開発分野・テーマを提言としてまとめました。
「東日本大震災による電力や通信インフラの壊滅的な被害により、各種インフラ、システムの問題が明らかになった」という大内さんの言葉が、将来を見据えた技術開発の大切さを物語っていました。
●そして最後は、羽矢崎さん、研究テーマは『アップル社はいかにしてiPhoneのような革新的製品を創りあげたか?』
丸島ゼミで知財戦略を研究されてきた羽矢崎さん、今回発表されたテーマは“旬の会社”米国アップル社です。ご自身も通信キャリアにお勤めで同社の強さを十二分に把握されていらっしゃいます。
携帯音楽プレーヤー市場、モバイルPC市場、デジカメ市場、これらすべて日本企業が得意としてきたマーケットです。しかし、この「iPhone」という革新的な製品によって業界の勢力図があっという間に塗り替えられてしまいました。その特許開発や国際標準化戦略、サプライヤーとの関係性、弱みを解消し強みを強める知財戦略など、臨場感溢れるプレゼンテーションが行われました。
今回の発表時間は30分でしたが「半日は余裕で語れてしまいます」との言葉がとても印象的でした。先生方からも「もっと詳しく聞きたい」との感想があげられ、後日、勉強会を開催する企画もあるそうです。ぜひまた聞かせて欲しいものです。
どの発表も1年以上にわたるゼミ指導を受けて練り上げられてきた研究内容。たくさんの見学者の前で皆さん緊張されながらも気迫と熱意が伝わってきて、聴いているこちら側も熱くなってしまいました。
あとは修了式だけですね。皆さま本当にお疲れさまでした。
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