全8コマ中4コマでグローバルビジネスの最前線で活躍するゲスト講師を招いて熱い議論が交わされる「グローバルビジネス特論」。今回のテーマは、いま話題の「BoPビジネス」です。
主に途上国の低所得者層を指す言葉として、最近メディア等で取り上げられる機会が増えた「BoP」=Bottom/Base of the Pyramid という言葉。
世界的に使われている定義によると「1人当たり年間所得3,000ドル未満」の層を指し、その数は全世界に約40億人(世界総人口の72%)、所得の合計はなんと5兆ドルとのこと。世界中の企業が新しい成長市場として注目しているこうした「BoP」層を対象としたビジネスの現状や、実際に取り組む際のポイントについて概観するのがこの日のゴールです。
ゲスト講師は野村総合研究所の公共経営戦略コンサルティング部の平本督太郎氏。日本の大手企業に対する調査・コンサルティングほか、経済産業省によるBoPビジネス支援の取り組みにも中心的役割で携わられています。
平本氏によると、BoPビジネスのポイントは3つ。
1)購買力があり、拡大ができる市場
BoPビジネスが注目される理由は、現在の市場規模だけでは決してないとのこと。先進国市場の成長が鈍化しているのに対し、BoP層の所得水準は各国の経済成長とともに伸びることが予想されます。
ちなみに、BoP層より高い購買力を持つ中間層は、2030年になるとおよそ55億人になると言われていますが、そのうち35億人が2005年時点においてBoP層と呼ばれる人々です。
2)流れ込むソブリンマネー
日本以外の欧米先進国、特に米国はODAの総額が増加傾向にあります。そのODAの仕組みとして、途上国の社会課題解決に政府と企業がパートナーシップで挑むPPP(官民連携)型が増加。企業にとっては、金銭面をはじめとする様々なリスクを抑えながらの市場参入が可能なチャンスが到来している状況です。
近年台頭するビジネス開発型NPOも、BoPビジネスにとっては重要なパートナーとなりえます。
3)BoP層は先進諸国とは異なる成長シナリオをたどる
たとえば、上下水道と携帯電話の普及率を比較すると、先進諸国では「上下水道が普及した後、携帯電話が普及」という流れをたどっています。しかし、途上国では携帯電話が爆発的に普及しているのに対し、コストと時間がかかる上下水道は普及率が伸び悩んでいるのが現状です。
インドネシアでは、上下水道が未整備なため、トイレとして使用しているような不衛生な川から生活水を採っているといった地域はまだまだあります。しかし、そうした地域の住民でも、携帯電話を持って、テレビやDVDを楽しんでいるのです(写真を見せていただきましたが、ビックリしました)
つまり、先進国の常識で考えると、参入のタイミングを間違える危険があります。
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こうしたポイントを踏まえ、授業の最後にはBoPビジネスの「コンセプト策定」「製品開発/事業検討」「事業推進」の3つの段階における重要なポイントをお話しいただきました。
最後に平本氏がおっしゃったことで印象的だったのは「メディアや書籍で多く取り上げられているため、今から行っても遅いと思うかもしれないが、市場があまりに大きいため、まだまだ手つかずの領域は多い」ので「遅いということは全くない」というお話。
確かに、日本の人口1億人強に対し、数十億人というのは、国内市場や先進国市場だけを相手にしていては考えられない数字。日本の常識では考えてはいけません。平本氏をはじめ多くの方がBoPビジネスに感じておられる魅力や可能性の一端を感じることができる講義でした。
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