本日は、知的創造システム専攻・4期に開講している「国際交渉特論」をご紹介します。ビジネスアーキテクト専攻の方も受講可能で、実際に多くの方が受講されています。
全4回(1回・2コマ)からなる本授業。3期の「交渉学要論」で学んだ交渉の基礎を活かし、国際的交渉というさらに難易度の高い交渉に必要な前提知識と戦略シナリオの作成方法を学びます。
本授業の特長の1つが、5名の交渉の実務家と専門家による「チームティーチング」。
法律実務の専門家としてパナソニック(株)で数々の国際交渉を手掛けてきたパナソニックラーニングシステムズ(株)事業開発総括・主席コンサルタントの一色正彦 客員教授、ファイナンス実務の専門家である(株)インスパイア代表取締役社長CEOの高槻亮輔 客員教授、交渉学の専門家である東京富士大学准教授の隅田浩司 客員教授、慶応義塾大学教授の田村次朗 客員教授、そしてTBSテレビでコンテンツのライツマネジメント業務に従事する田中康之 客員教授の5名が、それぞれの専門的視点から受講生の学びをサポートします。
2回目となる今回の授業では、前回配布された1つ目の交渉ケースについて模擬交渉を実施しました。受講生は2つの立場に分かれ同じ事例について別々の情報がまとめられた資料が配布されています。
完全なるオリジナルケースですので、具体的な内容は書けないのですが、知的財産に関する多数当事者間の訴訟トラブルの事例で、過去に担当教員が実際に体験された事例をベースに作成されました。
これまで100回以上企業の知財担当者や弁理士、弁護士を対象に実施されたというこのケース。なんと10回に1回もきれいな答えにたどり着くことがない難ケースだとか…
●18:50~19:20 交渉チームごとの作戦会議
初めに学習目標を確認したら、チームごとに分かれて交渉の進め方を議論。同じ立場で協力しながら交渉に挑むパートナーと、事前課題として作成した交渉シナリオに基づき、模擬交渉の進め方や役割分担を議論します。
●19:20~20:05 模擬交渉(前半)
いよいよ模擬交渉を開始。やみくもに議論するのではなく、事前に検討した交渉シナリオや「Mission」「ZOPA(交渉可能領域)」「BATNA(合意可能領域)」に基づきながら、交渉を進めていきます。静かに淡々と交渉を進めるチームもあれば、上司役と若手社員役に分かれて「このままでは家庭が…」など演技を交えて交渉を進めるチームもありました。もちろん交渉のツボはちゃんと押さえられています。
●20:15~20:15 強制ブレイク
立場ごとに前半戦の振り返りと後半戦に向けた作戦会議を行いました。ここから本格的に先生やティーチングアシスタントの皆さんが、議論の整理をサポートしていきます。
●20:15~21:00 模擬交渉(後半)
交渉も後半戦。複雑な状況を整理し、お互いに共有するため全てのテーブルでホワイトボードを使った状況の整理が行われていきます。今回のケースは、交渉の両当事者が連携してトラブルに対応することがポイントとなり、こうした共通認識の形成が重要になります。
●21:00~21:15 感想戦:ケース交換
それぞれ一定の結論にたどり着いたところで模擬交渉は終了。その後、お互いのケースを見ながら振り返りと意見交換を行いました。
●21:20~22:00 フィードバック
最後に4名の担当教員より、今回の交渉ケースのポイントについて改めて整理が行われました。
今回のケースは、不完全な情報の中で、利害が完全には一致しない2社がどう協働して損害を最小限にするかというもの。そうした状況でどう交渉を進めていくか、というのがフィードバックのポイントとなり、
参考までに、先生のコメントをいくつか掲載すると…
「問題・課題が進行していく中、現状ではわからないことや、できないことに着目すると何も進まない。今、どうすればリスクを最小化できるかにフォーカスしないといけない」
「たとえば100億円のリスクがあるうちに、両社が過去の責任について揉めたらダメ。まずは協働してそれを40億とか70億とかできるだけ減らすことにフォーカスして、その後に責任分担の話をすれば良い。現状で大事なのは、そうした訴訟プロセスをしっかり合意することである」
「具体的な手順や体制を決めて、決められることにフォーカスする。そうしないと何も決まらない」
…いかがでしょうか。複雑な交渉もこうしたセオリーを身につけることで、より良い結論にたどり着く。そんなことを実感する授業でした。
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