丸島儀一の「知的財産戦略」-技術で事業を強くするために-

11月5日(土)虎ノ門キャンパス13F大講義室にて、KITプロフェッショナルミーティング「知的財産戦略」-技術で事業を強くするために-が開催され、知財業界の“カリスマ”丸島 儀一教授から長年のキャリアに裏付けされた力強いお話を聞くことができました。

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当日は100名近い参加者、それもメーカー知財部や特許事務所の方などを中心とした方々にお集まりいただき、丸島先生の持つ求心力の強さを実感しました。

元々、技術志向型である日本の企業においては、知的財産を活用した事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略の三位一体の経営戦略を実現することがグローバル競争で勝ち抜く唯一の手段であるのは間違いありませんが、それを実現できる人材が不足しており、その育成が急がれています。

このような状況を受け、本セミナーは知的財産の必要性・重要性を語りかけるものであり、非常に分かりやすく企業活動と知的財産の関係を説いたものでした。

知的財産を事業競争力として活用するための経営戦略、事業戦略など、ご自身の経験、現在に至る活動、弁理士としての専門知識をベースとした中身の濃い講演内容となりました。

●以下、丸島先生のお言葉を紹介させていただきます。

「知的財産部門は事業戦略を実行するために存在する。決して知財のための知財になってはならない」

「他社に対する優位は技術が作るもの、それを持続させるのが知財の仕事」

「ある技術で勝とうと思ったら、5~10年前から準備しておかなければ間に合わない。スティーブ・ジョブズ氏はAppleから離れていた10~15年もの間、研究開発と権利化を着実に進めていた。それが現在の成功に結び付いている。つまり先読みの勝負」

「モノを作るのは簡単だが、製品化に至るまでの過程で知財上の弱みを克服せねばならない。そうしないと容易に他社から攻め入られてしまう。某企業のAndorid端末のように弱みを解消しないまま大々的に製品を発表してみても、中身を見てみたら第三者の特許を使っているケースも多い。強みだと思って発売した自社製品が、逆に自社の弱みをさらけ出してしまう結果をもたらす」

「新たに事業戦略を立てる際、自社製品の持つ知的財産上の強みと弱み、その両方を正確に認識しなければならない」

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●強みを増す戦略と、弱みを解消する戦略。知財戦略の取るべき道は2つあると丸島先生は言います。

「強みを増す戦略は交渉、訴訟(妥協してはならない!勝たなければならない!)で解決できるが、弱みを解消する戦略は訴訟ではなく交渉で解決しなければならない」

「弱みを解消する戦略とは、妥協点を探すことである。つまりお金で解決できない場合が多い。交渉が大事になってくるが非常に難しい。弱みの解消の目的で形成した知的財産を最大限に活用し相手の弱みを突いて、NOをYESに変えていかなければならない」

「交渉をする際、自社の攻めの知的財産を交渉の道具として使う。そのためには前もって相手が脅威と感じる(相手が使いたくなる)権利を取っておかなければならない。質と量を維持しながら、強みを守る訴訟用の守りの特許と弱みを解消する妥協用の攻めの特許をはっきりと意識して権利化していくことも重要」

●交渉する際に必要となってくるのが、相手の状況はもちろんのこと、自社技術・製品の強みと弱みを正確に把握する事だと、丸島先生は言います。ではどうすれば良いのか?

「事業部門や開発部門は新しい事業計画(技術製品)の強みは言うが弱みは言わない。しかし事業の強みを維持するためには自社の弱みの真実を聞き出さなければならない」

「そのためには、事業部門、開発部門の人間から信頼されていないといけない。知財の仕事は事業(全社)のためにやっている、知財のためではない。事業部・研究開発者・発明者の方々に喜んでもらえることは何でもやった。その結果、友好な社内人脈が形成され、事業部門・技術部門からの信頼を勝ち取ることができた」

●それでは、知財部門にとって重要な活動とは?

「各事業部の強み、弱みの認識と全社の強み、弱みの認識に基づき各事業部の最適化と全社の最適化の機能を果たす活動が重要である。一例を挙げると販売製品は事業部ごとに異なるが、全社的に見ると技術は共通しているケースが多い。知財部門が全事業部を横断的に活動するような組織作りと仕組み作り、さらには、この活動ができる知財人材の育成も大切」

こちらで全ての話を紹介することが出来ないのが残念ですが、丸島先生のお話はいつでも明快で力強く、知財の仕事の面白さとダイナミズムを肌で感じ取る事ができました。

※さらに詳しい内容を知りたい方には、丸島先生の近著「知的財産戦略-技術で事業を強くするために」をお勧めします。

講演会の後に開催された懇親会も丸島ゼミの方々のご協力もあって盛大に開催することができました。この場を借りて感謝申し上げます。

今後も魅力的なイベントを開催して参りますので、皆様ご期待ください!

 

 

 

 

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