「デジタル時代の技術標準と知的財産戦略-日米を代表するパテント・プールの現状と課題」

10月13日(木)およそ70名の知的財産業界の関係者にお集まりいただき、『デジタル時代の技術標準と知的財産戦略-日米を代表するパテント・プールの現状と課題』を開催しました。

本セミナーは、K.I.T.虎ノ門大学院の新企画であるK.I.T.プロフェッショナルミーティングの第一弾。主に社会人の方々を対象として「一流と対峙することで、一流に近づける」というコンセプトのもと、各分野の第一線で活躍するプロフェッショナルと出会えるイベントを開催していきます。

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今回のセミナーのメインテーマは『パテント・プール』。

ITやデジタル技術の進展著しい現代においては、技術標準に関連する複数社の、しかも数多くの必須特許の効果的なライセンス方法が求められています。このような状況下で、技術標準に関連する必須特許を集めて管理し、一括ライセンスする仕組みを創り、成功しているケースがあります。このような仕組みを『パテント・プール』と呼びます。

最初の講演者は、ライセンサー27社、ライセンシー1400社以上を誇る、米国を代表する特許管理会社MPEG LAのCEOであるラリー・ホーン氏。

同社は1997年に動画・音声圧縮規格であるMPEG-2規格のパテント・プールを開始。同規格は現在、世界中のデジタルテレビ、DVD、STB(セットトップボックス)等で使用されるなど広く普及しています。

講演では、まず同社の様々な取り組み例に挙げながら、パテント・プールの成り立ちや仕組み、メリット・デメリットなどについてお話しいただきました。さらには、同社が近年取り組んでいるライフサイエンス関係の話題を中心に、パテント・プールの新たな可能性について共有いただきました。

続いて、デジタルテレビやケーブルテレビの規格を対象とするパテント・プールを管理運営するアルダージ社社長である中村嘉秀氏にもお話いただきました。

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中村氏からは、パテント・プールの課題や今後の展望についてご説明いただき、なかでも「パテント・プールの枠組みを導入することで、かえって特許権者の利益を損なっているケースがある」というのは、長年運営に携わってきた中村氏ならではのお考えでした。

セミナー後半に行われたパネルディスカッションでは、木越力 客員教授をモデレーターにお迎えし、事前に参加者の方々からいただいた質問を踏まえながら、ラリー・ホーン氏と中村嘉秀氏のお二人に答えていただきました。

「パテント・プールの運用で最も大変なことは何ですか?」という質問に対しては「全く違った意見を持った人たちの利害をどう調整するか」が大きな課題であるということは二人揃って強調されていました。価格決定や収益の分配などは、いまだに業界でも解決策を模索しているとのことです。

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加えて、ラリー・ホーン氏は「世界各国で法制度や知的財産に対する意識の違いが大きいことも重要な課題だ」ということを付け加えておられました。

引き続き、本大学院では、K.I.T.プロフェッショナルミーティングや虎ノ門サロンなど、各分野の第一線で活躍するゲストスピーカーを招聘し、教育付加価値の高いイベントを開催して参ります。ご期待ください!

次回は11月5日(土)。日本の知的財産戦略の第一人者でいらっしゃる丸島先生による『丸島儀一の知的財産戦略-技術で事業を強くするために』を予定しております。

お知り合いやご同僚の方々とお誘い合わせのうえ、是非ともご参加いただければ幸いです。

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