【授業レポート】著作権法応用特論(市村直也)

新年明けましておめでとうございます!虎ノ門キャンパスでは1月5日から、2011年の授業がスタートしています。今回レポートするのは知的創造システム専攻・4期の木曜日・6限(20:30~22:00)に開講している「著作権法応用特論」です。

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この授業は、著作権法に関するこれまでの学習(「著作権法特論I」「著作権法特論II」)の総仕上げ。著作権法の重要判例を素材に、著作権をめぐる最先端の議論について検討します。情報化社会の急速な進展に伴う、最新の事案についても積極的に取り上げます。

授業を担当するのは市村直也教授。早稲田大学法学部卒業後、社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)にて著作権業務に携わり、その後弁護士・弁理士登録。著作物データの違法共有で社会問題となったファイル交換ソフトに対する訴訟など、著作権に関する数多くの訴訟を最前線で担当しておられます。

著作権という重要テーマについての指導体制を強化するため、市村先生には今年度より専任教授としてK.I.T.虎ノ門大学院により深くかかわって頂いています

本日は7回目の授業。全8回からなるこの授業の後半4回は、毎回数名の発表者が割り当てられ、特定のテーマについて、指定された裁判例に基づいてプレゼンテーションすることが求められます。プレゼンをとりまとめ、発表することで、理解が曖昧な個所や、新たな疑問が発見され、より深い理解や知識の定着に結びつけることができます。今日のテーマは「同一性保持権」と、「著作権の間接侵害」の2つ。それぞれ発表の持ち時間は30分、質疑応答が15分です。

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最初のテーマは「同一性保持権」。著作物が著作者の意に反して改変されることがないように、著作権法第20条1項に定められている権利です。

扱った事件は4つ。「三国志III事件」「ネオジオ事件」「ときめきメモリアル事件」「DEAD OR ALIVE事件」。特に男性の方、ピンときたかもしれませんが、全てゲームに関する事件です。
これらは、ゲームのプログラムそのものを改変するのではなく、ゲームの遊び方を変えてしまうようなプログラムや機器を提供することで、著作者(メーカー)が意図したのと異なる遊び方ができてしまう、という状況が「同一性保持権」の侵害に該当するか否かが争われた事件です。

詳細はここでは割愛しますが、4つの事件のうち、2つの事案で侵害が認められ、2つの事案では侵害が認められませんでした。なかでも、登場人物の能力値を改変するプログラムについて、「三国志III」は適法なのに「ときめきメモリアル」では違法という判決が下されました。この違いを論理的に説明できるかどうかが発表のポイントとなりました。

少しずつヒントをもらいながら教室全体でディスカッションをしますが、なかなか論理的な解にたどりつきません。しかし、こうやって一流の先生のもとで考えるという経験は、貴重な機会です。

※「ときめきメモリアル」の場合は「三国志III」とは違い、データの改変がゲームの重要部分を占めるストーリー性を壊してしまうため「映画の著作物の侵害」(著作権法2条3項で映画の効果に類似する著作物についても映画と考えるという定義があります)にあたるというのが両社で異なる判決が下ったというのが先生の説明でした。

続けて2人目の発表。詳細は省略しますが「著作権の間接侵害」がテーマでした。カラオケ機器の無断リースやファイル交換ソフトの提供、2ちゃんねる上での著作権侵害における管理者の責任など、間接的に著作権侵害を犯している事案をテーマに発表してもらいました。

なかでも、ファイル交換ソフト「ファイルローグ」の事件は市村先生がJASRAC側の弁護士として実際に担当した事件!重要かつ最新の判例について実際に手がけた先生から習える...まさにK.I.T虎ノ門大学院ならではの豪華な一幕でした。

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