知的創造システム専攻・3期の月曜日5限(18:45~20:15)・6限(20:30~22:00)は「交渉学要論」を開講しています。
全4回からなる本授業は、交渉学を学ぶために作成された3つのケースを通して、交渉の事前準備から交渉シナリオの作成、交渉の実施に至るまで、交渉学の基礎を実践的に学びます。知的創造システム専攻だけでなく、ビジネスアーキテクト専攻の生徒も対象となります。
授業を担当するのは3名の客員教授。法律実務の専門家であるパナソニックラーニングシステムズ(株)顧問の一色正彦客員教授、ファイナンス実務の専門家である(株)インスパイア代表取締役社長CEOの高槻亮輔客員教授、そして交渉学の専門家である東京富士大学准教授の隅田浩司客員教授が、それぞれの専門的視点から受講生の学びをサポートします。
今日は4回目、最終回の授業を2コマ分、いつもより長めにレポートします!
最終回となる今回のケースでは、これまで2回の1対1交渉よりも複雑な、多数当事者間の交渉のケースを取り扱います。
簡単な設定を書きますと...
◆とある外国の商社X社から原材料を輸入し、日本である食品を販売しているA社・B社・C社のライバル3社。受講生の皆さんには、そのいずれかの経営陣を担当して頂きます。
◆今回は調達元であるX社に不祥事疑惑(裁判で係争中)が発生。マスコミ報道や政治家の発言などを通して社会的批判・関心が拡大し、3社は共同記者会見を90分後に急遽開催しなくてはいけなくなりました。
◆事実関係がはっきりしない中、記者会見では共同声明を発表し、マスコミや社会からの批判や疑問に真摯に応えなくてはいけません。しかし、A社・B社・C社とも、全く異なる状況にあり、簡単にまとまる状況にはありません。
◆このような状況を再現すべく、受講生の皆さんには、2種類の情報を事前配布してあります。全員に渡される「共通情報」(A4・6ページ)と企業ごとに渡される「個別情報」(A4・3ページ)です。いずれも交渉に必要な情報や制約条件が緻密に記載されており、また、実際のビジネス同様に、皆が知っている情報があれば、自社しか知らない情報もあるという状況が生まれます。
...という状況です。詳細は書けませんが、大変緻密かつ意地悪な設定です。3社がまとまらなくてはマスコミや社会からの批判が過熱し、大きな打撃を受ける状況ですが、それぞれの利害は対立しており交渉は難航必至です。
受講生の皆さんは、前回の授業の後半で解説された多数当事者間の交渉におけるポイント踏まえ、事前に交渉シナリオを作成。メールで提出して頂いた上で今日の授業に臨んで頂いています。
●授業が始まると、まず30分の作戦会議を実施。これは同じ立場(A社・B社・C社)になった受講者同士が3つのグループに分かれて意見交換することで、今回の交渉シナリオをブラッシュアップするものです。各グループの議論はファシリテーターがサポートします。
●次にいよいよ3社によるロール・シミュレーション(模擬交渉)を実施。これは開始間もないタイミングの写真ですが、その後交渉は予定通りに難航し(笑)、10分後には皆さん厳しい表情で頭を抱え始めます(受講生の皆さんに申し訳ないので写真は掲載しません)。
●ロール・シミュレーションの前半40分が終了すると、これも実際の多数当事者間の交渉と同様、個別交渉の時間が設けられています。3社ハッピーエンドが理想ですが、簡単にそうもいかない設定。となると、ビジネスの世界と同様、自社がハッピーになるため1社に絞って交渉することができます。
●なお、3社のうち2社が個別交渉...ということは、当然1社が交渉の席から外れるわけですが、皆さん休憩どころではありません。次の個別交渉、全体交渉に向け、必死にシナリオを修正してらっしゃいます。
●その後、後半のロール・シミュレーション(20分)を経て、共同声明を作成(10分)。休憩を経ていよいよ共同記者会見に臨みます。
記者役を担当するのは先生方および他の受講生。不祥事の記者会見、しかも内容をまとめるに十分な時間は無かった...ということで、会見内容は当然歯切れが悪く、またそれに対して厳しいツッコミが飛びました。
最後に、一色先生、高槻先生、隅田先生より、それぞれ専門的な視点からまとめがあり、より創造的な選択肢を検討できた可能性や、全員に抜け落ちていたある視点、そして実際の体験談に基づいた具体的な対応ポイントなど、どれも学びの多い解説となりました。
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