世界中から注目される坂村健氏(東京大学大学院教授)をお招きして第39回KIT虎ノ門サロンが開催されました。
坂村氏の提唱するトロン・プロジェクトやユビキタス・コンピューティングは様々な分野で導入が進んでおり、デジタル家電などの組込型コンピューターの基本ソフト(OS)としては、世界最大の市場占有率を誇っています。記憶に新しいところでは、小惑星探査機「はやぶさ」に搭載されいるOSもトロンです。将来的にはモノ同士がネットワークを結び、情報交換が行われるそうです。
今回は専門分野のお話だけでなく、『世界との差』や『日本の構造的問題』など、多岐にわたって熱く語って頂きました。
まず始めに、日本にはイノベーションを生むための制度・人材・インフラが乏しく、インターネットなど先端的な分野で世界に後れを取っており、この現状をなんとか打破するべきで、国として公共的なバックアップが必要だと言われています。
さらに、税制の問題、規制緩和の問題など...イノベーションを妨げる要因は様々だが、一番問題なのが「個が確立されていないので誰も判断したがらない。意志決定のスピードが遅く、世界との差がどんどん拡がっていく」と嘆いておられました。大企業ではなく、優秀な人材や革新的アイディアにお金が集まらないと、GoogleやAppleのような競争力のある会社は育たないと危惧されていました。
坂村氏は毎週のように海外の会議や会合に参加しており、他国の事例を踏まえながら、ETC、住基カード、食品トレーサビリティーなどに対して多くの問題提起をされていました。このような標準化戦略に対応できる専門的な知識を持った人材育成が急がれており、【社会人向け大学院】の必要性も強調されていました。
国家・企業との様々な実験を通して、より良い社会を実現しようとする取り組みは、大学院教授という枠にとらわれない"社会的プロジェクトリーダー"としての役割も果たしています。
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