「「安全学」という学問は成立しうるか?」第23回KIT虎ノ門サロン

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第23回KIT虎ノ門サロンは、「「安全学」という学問は成立しうるか?」と題して、明治大学理工学部 学部長の向殿政男先生にご講演いただいた。話の最初から向殿先生からは「私は「安全学」という学問は成立すると思っています!成立させたいんです!」というコメントがあり、今回はどのようにして、またなぜ成立しうるのかについて、様々な事例を踏まえて話をいただいた。特に向殿先生は工学畑を歩んでこられた方でもあり、安全学といっても、工学的アプローチから安全学を学ぶという視点から話が合った。

最近の安全問題の中には、ニュースなどで目にしたことのなるような列車事故、エレベーター事故、ジェットコースター等、取り上げると非常に多岐にわたって安全についての問題点などは挙げられるが、それぞれの事故を「安全」という視点から検証すると非常にいろいろなものが見えてくることがわかった。

話を聞くなかには、設計段階においてやはり安全面についての意識が低く、起きるべくして起きてしまったといったケースも少なからずあるということだった。また、大事なのは保守点検であり、保守点検だけで新しいビジネスモデルも十分作り上げることも出来るのではないかという話もあり、物はいずれ壊れてしまう運命にあるから、後は保守点検でいかに安全・安心に使い続けるかに、本当の意味での「安全」が確保できるのではないかということだった。最近では壊れにくい性能の良い機器類が多く開発されており、だからこそ定期的な保守点検を怠るケースが多くなってきている。ここに大きな問題があるという指摘があった。

その他現代のグローバル社会では、各国々とのやり取りも非常に活発化される中、国や文化の違いによる「安全」の基準や認識が全く異なるケースが多々あり、海外に行くと驚かされるケースが結構あるという話もあった。

最後に、安全の領域横断的側面としては、1.技術的側面 2.人間的側面 3.組織的側面があるという話があり、実際に「安全学」を行っていく上でどのように学問として成立させることが出来るかというところでは、安全は、「技術」、「人間」、「組織」を総合して初めて実現されるということであり、まだまだやることは沢山あり、多くの専門家の意見なども聞きながらとにかく「安全学」という学問を成立させたいという向殿先生からの強いコメントがあった。

これからの世の中、便利になっていくのはいいが、「安全な世の中」を作り上げていくためのハードやソフト面での研究はますます複雑化するような気もしたが、確かに今後の「安全」をテーマとした専門家が必要となる時代は間違いなく来るような気がした。そして、やはりこの学問を成立させるのであれば、日本がその先端を切るべきではないかと思った。向殿先生からも、「日本が最初になってほしい」という強い気持ちがあり、明治大学では既に今年の4月から安全学系を一専攻内に設けて、実際に授業を行っている。きっとこのような学問が必須となる日も近いのかもしれない。

次回のKIT虎ノ門サロンでは、読売新聞社 科学部 部長 小出重幸氏をお呼びして『「環境問題のうそ、ほんと」地球温暖化など、なにが、どこまで本当か?』をテーマに行われます。日時:7月23日(水)19:00~ (時間帯が変更となりました)

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