本専攻の専任教授である杉光一成教授が、マイコミジャーナルへ連載記事を書かれておりますので、本日はその第二弾をご紹介いたします。
第一弾は、平成19年10月15日にマイコミジャーナルのウェブページに掲載されたものです。(1) サブタイトルは「知的財産に関する誤解その1」 - (何か起こったときに対処すればいい)第一弾にご興味のある方は、こちらをクリックしてください。さて、前回のコラムでは、知的財産についてあまり気にしていない経営者の方々を対象とした内容だったが、今回はすでに知財についてはそれなりに理解しているが、それを利用してどうしていけばよいのかわからないといった方々を対象とした内容となっている。その第二弾は、平成19年10月30日にマイコミジャーナルのウェブページに掲載されたものです。(2) サブタイトルは「知的財産に関する誤解その2」 - (知的財産はコストばかりで利益は出ない)
第一弾から引き続き、非常に内容の濃いコラムですので、ビジネスパーソンには必読です!
-------------(以下内容は掲載記事より抜粋)----------------
経営者にとっては当然のことながら、資金繰りが経営の関心事となるためキャッシュフローが気になるのは十分に理解できる。また、株主に対する責務として決算報告がある以上、「会計上の利益」を出したいという気持ちも理解できる。
しかし、このような具体的金銭的利益あるいは「会計上の利益」で知的財産の「利益」を語るのは大きな誤解である。
知的財産権は独占排他権であると言われるが、独占排他権という表現は法律的な表現であり、具体的には、他人を排除し、自分のみが独占的に実施できることを意味する。すなわち、これを経営的観点から見ると、ある会社が特定の技術、例えばインクジェットプリンタのインクに関する技術について特許権を取得した場合、その技術を他社が利用することができなくなるため、その技術の属する交換インクのマーケットに他社が参入できなくなることを意味する。これがマーケットへの他社の参入を制限できるという、経営的な側面から見た知的財産権の機能となる。
マーケットへの参入が制限された世界では、高収益がほぼ約束されるのは昔から見られる現象である。護送船団方式と言われた過去の銀行業界、今でも免許制のテレビ業界などがそれである。そもそも、独占禁止法に市場支配を禁止する規定が存在すること自体、マーケットへの参入を制限すると企業側が「利益」を出しすぎて、消費者にとって不利な価格設定(つまり高価格)がなされうるという懸念が背景にある。
もちろん、独占禁止法で規制されている方法によってマーケットへの参入を制限することは法律違反として許されない。しかしながら、規制をされていない、あるいは法律上許されている方法である限り、他社のマーケットへの参入をいかに制限し、参入障壁を築いていくかは、全ての経営者が目指すべき重要な方向であることは間違いないであろう。
マーケットへの参入のコントロールを合法的に行えるツール、まさにそれが知的財産権であり、参入障壁の形成による「自社事業の発展・拡大」が知的財産権による本来的な「利益」となるのである。
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