「論語と算盤」型資本主義とは何か 特別講演

「論語と算盤」型資本主義とは何か ~渋沢栄一の企業家精神~

blog070710.jpgゲストスピーカーシリーズ最後は「論語と算盤」 ~渋沢栄一の企業家精神~と題し、シブサワ・アンド・カンパニー(株)代表取締役の渋沢健氏にご講演いただきました。渋沢氏は日本資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一氏の血筋を受け継ぐ方であり、現在はヘッジファンド、ベンチャーキャピタルファンド、バイアウトファンド等を含む「オルタナティブ投資」を専門とする独立系の運用コンサルタントとしてご活躍されている。

講演いただいた内容には、上場の意義、ファンド投資収益の根源、ファンドの収益源について、渋沢氏のこれまでの経験を踏まえた、考え方に基づいた説明があった。特に企業価値と市場価格の差異によって、ファンドの収益が決まることは明白だが、最近では投資会社による企業の買収などがよくメディアに取りざたされているが、これは「ファンド資本主義」であり、合理的な資金の運用や企業価値の向上を目的として、色々な価値観が混在する中、良い面もあり、また難しい面も存在するという話があった。また、これだけ市場価格の変動が激しい中においては、経営者がその同じ時間軸に立つことは非常に難しいといった話があった。

blog070710-2.jpgしかしながら、いかに企業価値を高めるため、また収益を高めるために事業を拡大させたとしても、一番重要なことは、「経営者一人が大富豪になっても、そのために社会の多数が貧困に陥るようなことでは、正常な事業とは言えない、またその幸福を永続することができない」(「論語と算盤」)という言葉があった。まさに、「正しい道理の富でなければその富は永続することができない。論語と算盤という懸け離れたものを一致させる事が今日のきわめて大切な務めである。」(「論語と算盤」)という話は、全ての根源にかかる重要な言葉であると思った。

また、お話の中には「元気振興の急務」という内容があり、「堅実なる事業に就て何処までも大胆に、剛健にやれといふのである。」(「論語と算盤」)という一文があった。これは、日々を無事に過ごすことができればそれでよいといったような考えは非常に危険だということであり、まさに守りに入るというよりも、もっと大いに計画もし、発展もして、世界との競争に向けて進むべきだという話だった。まさに現代社会を見据えた言葉だと思った。

blog070710-3.jpgもう一つ非常に印象に残ったことは、「常識とは何か」というところで紹介された「Good To Great」Jim Colliins著ビジョナリー・カンパニー2 -飛躍の法則からの一部分で、実際にGoodカンパニーは多くいるが、Greatカンパニーは少ない、それは、もともと皆がGoodカンパニーを目指しており、そういった教育を受けてきているからだという話があった。また、それではGreatカンパニーはやはり超一流の大企業なのかというと、全くそうではなく、無名の企業であったりするということだった。だが、いったい何がGoodからGreatに変えるのかというと、それは、何が経済エンジンであるかを知ることから始まり、それだけではなく、情熱を持って取り組むことができ、更には、どういった部分で自分達が世界一になれるかということを常に考えることがGreatカンパニーになる秘訣だということだった。これは、渋沢栄一氏の言葉にもある「『智』、『情』、『意』の三者が権衡を保ち平等に発達したものが完全の常識だ」という言葉からも、まさに『智』は知識:知ることであり、『情』は知るだけではなく行動する情熱を持つことであり、『意』は自分のするべき道を明確にし、常にWillの心をもつことだと話している。これは普遍的な考えであり、当たり前の事を、当たり前にやることの難しさを再認識させられるような話だった。

最後に、資本主義社会の中の資本家とはいったいどこにいるのか?という話の中で、大事なことは、お金を集めることもしかり、それをいかに使っていくかということを考え、経済界の進歩に貢献しなくては、国家の繁栄は望めないという話があった。お金持ちでなくては何もできないということはなく、最近では個人投資家なども増え、お金をいかに増やし、またそれを使っていくかを考え、経済に貢献することが、今後ますます重要となるということだった。

今回のゲストスピーカーシリーズでは、どれも非常に内容の濃いものばかりであり、また自身の経験を元に、資本市場の論点を浮き彫りにし、そして今後必要となる企業経営上の論点について様々な視点からお話をいただくことができた。

渋沢健氏が書かれているブログのご紹介:渋沢栄一の「論語と算盤」を、今考える皆様も是非ご覧ください。

次回は、ゲストスピーカーシリーズとは異なるが、株式会社ビジネスバンク 代表取締役 浜口隆則氏による「戦わない経営」その心と実践と題してご講演をいただきます。

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