毎週月曜日18時45分より90分間、知的創造システム専攻では、知的財産管理・戦略特論の講義が始まる。本特論では、わが国でも、特に知財先進企業と評価される4社の知財部門の責任者であった著名な4名の客員教授により、現場でのかなり生々しい知財と知財戦略について講義が行なわれる。
20名を超える社会人大学院生も、真剣に耳を傾け、知財(ここでは、特許に関するものが多いが・・)の桁外れのパワーと、現実に実践された知財戦略のすさまじさに、息を呑む場面も多い。各講義において、知財、そして知財戦略というものがどのようにとらえられているか、興味深く聞き入ってみると、いずれの講義においても、捉え方は常に一貫している。
知財は、国からいただく勲章などではなく、企業価値を最大化させるための最強のツールであり、知財戦略は、企業経営に多大な影響を及ぼす知財のパワーを最大限にまで引き出す役割を担っている。そして、戦略の成功・失敗は、戦略策定の繊細さと、策定された戦略を実行する大胆さに左右される。講義を聴いていると、以前テレビで、映画監督の黒澤明氏がウイスキー片手に“悪魔のように細心に、天使にように大胆に”と語っていたことを、何度か思い出した。特に、戦略実行の大胆さについては、多様で、かつ、深い、かなりの数の経験に大いに影響を受けることがわかった。本特論の各客員教授が、いくつもの、知財にかかる実際の修羅場をくぐり抜けてきた真の“いくさ人”であるからこそ、講義における一つ一つの言葉が、いやに心に重く響くのであろうか。
お久しぶりです。IPコース一期生の久野です。
酒井先生の投稿での「いくさ人」という表現は良い表現だと思います。普通、知財部門は企業の中ではスタッフ部門ということで、ともするとマニュアルに従った事務処理をこなすだけの事務屋になりがちですが、「いくさ人」という表現は、知財部門の人間を鼓舞するとともに、経営における知財の本当の役割を認識させるきっかけになると思います。
良く思うのですが、特許業務には様々なタイプの人が必要です。一人でやろうとすると、一人の中にさまざまな資質が必要と言うことになります。
発明者との会話によって発明を発展させるためには、自分自身も仲間の発明者になれるだけの独創性や発想の柔軟性が必要です。
特許権の取得のフェーズでは、緻密さと職人技が必要ですし、該当事業の要望を、取得する特許権に反映する営業マンのような資質も必要です。
権利活用のフェーズでは、まさに「いくさ人」としての戦略眼、不確実性の中で意思決定できる胆力と洞察力と、法的な評価のわかる専門性なども必要です。
知財における「いくさ人」、すなわちIPオフィサーのための教本として、「特許戦略論」という書籍を出しましたので、紹介いたします。
http://www.bk1.co.jp/product/2722819