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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

コケを使って環境重視の建築、都市を

カテゴリ:建築学科
2014.09.22
 

建築学科 円井 基史(まるい もとふみ)准教授 円井先生はもともと建築デザイン志向。しかし、環境系の研究にシフト、現在はコケを使った屋上緑化や都市緑化などに取り組んでいるという。そのいきさつをうかがった。
 
――先生は鳥取県ご出身で、東京工業大学で建築を専攻されました。何かきっかけはあったのですか?

 「何となく日本一難しい大学を受けてやろうと思って、東京大学とか京都大学を目指していたのですが、前期で失敗し、後期で東工大に受かったのです。

 父親が旧建設省で土木関連の仕事をしていましたので、親は土木に進んで国家公務員になってくれればと言っていましたが、僕は何となく建築を選んでしまった。土木よりは何となくものづくりに近い、何となく格好良いなという。あまり詳しい深い動機はなかったと思いますね」

――しかし、大学院では建築のデザインよりも環境系に進まれます。

 「梅干野 晁(ほやの あきら)先生の授業を受けたのがきっかけです。私は元々自然愛好派で山とか緑が好きだったのです。大学の2,3年生の頃でしょうか。建築は格好良いのですが、自然破壊をしているというか。特にバブルの時や高度成長期は山をどんどん削って宅地開発していたので、環境破壊の一端をあまりやりたくないというのもありました。

 梅干野先生は緑をかなり重視されていました。私自身も建築を離れるという手もあったのですが、建築の中で緑を守る、あるいは緑と共生して住むなどを追求していこうと思ったのです。都市の中の緑とか、あるいは里山とかを人間とうまく関係性を保ちながらやるにはどうするか。そのようなことをやってみたいと。

 梅干野先生が温暖化など都市の熱環境も研究されていたので僕もそれをやっていました。緑は熱の観点からだと意外と説明しやすいのです」

----先生は大学院の時はどのような研究を?

 「修士の時にフィリピンのマニラを対象に居住街区のプロジェクトを提案しました。発展途上国で、かつアジアのモンスーン地域で水とか緑をうまく使い、かつスラム地域のごく低層という条件でした。かなり高密度で住んでいる所をちょっといい具合に改善して、高密度だけど緑や水をうまく使って快適に住めるような居住街区を提案しました。それを熱環境的にも評価して、これだけうまく住めるよという提案も。もともとデザインとか設計が好きだったので、環境ともうまく融合させようとしました」

----修士にしては国際的ですごいですね。ずっとフィリピンに行っていたのですか?

 「ずっとではなく、1回だけです。僕が参加する前から続いている国のプロジェクトがあったのです。それに東工大の建築や土木の研究室が関わっていたのです。研究室の先輩がリモートセンシングや現地調査などをされていたので、それも使わせていただいて。僕が現地に行ったのは1,2週間程度です」

----博士課程はどんな研究を?

 「本当は都市計画とかデザイン的なことをやりたかったのですが、テーマが大きすぎて手に負えなくなりそうだったので、少し方向転換しました。取り組んだのは蒸発冷却といって、水が蒸発する時に蒸発潜熱、いわゆる気化熱で表面温度が下がることを利用します。水撒きや打ち水の原理です。

 道路の舗装で、表面に小さな穴の空いたポーラスな舗装があります。穴に水を溜めるので保水性があります。この保水性舗装で蒸発冷却をうまく使おうという考えです」

----急に地味になりましたね。

 「そうそう。試験体も作って。3次元のCADと表面温度を出せるソフトがありまして、そのシュミレーションソフトに乗るような計算モデルを作って、先ほどの修論のフィリピンの街区や東京の街路に保水性舗装を適用したら、どのくらい環境が改善されるかという研究です」

自然愛好はバリバリの本格派

----そして次は日本大学の研究員に行かれます。

 「日大の生産工学部というのが千葉県習志野にあります。そこから誰かいないかと声をかけてもらって3年契約で行きました。生命工学を使って循環型の社会を作ろうという感じで、それも化学系と建築系と建築設計的な複合的なプロジェクトで面白かったです。

 僕が付いた上司がコンクリートの先生で、その時に植物のコケ(苔)をコンクリートに生やしたいというテーマも一部ありました。僕もコケに少し興味があったのでやってみよかと。緑化をすることによって景観、あるいは熱環境、水環境が変わるのではないかと。そこがコケ植物の研究のスタートですね」

----なるほど。先生は08年からKITに来られました。すでに校舎の上などでコケを育てているのですか?

「コケによる緑化は簡単ではありません」と言う円井先生 「まだ、そこまで行っていません。ある民間企業と組んで、川の護岸擁壁の所にすぐコケが生えるように、わざと穴を多く空けているモルタルにコケを切り刻んだものを塗布した実験をしました。また別の企業に分けてもらったコケの緑化剤の試験体を置いて成長具合や蒸発散量などを調べています。

 あと扇が丘のキャンパスで、護岸擁壁の試験体を何パターンか暴露試験をしています」

----緑化に使うコケの種類は何でも良いのですか?

 「コケは世界に2万種類、日本に2千種あると言われています。ほとんどが森林など自然界にありましてコンクリートを好むコケとか街中にあるコケはやはり限られています。街中ではブロックの目地と溝の淵などに生えていますね。こういったコケと屋上緑化に使うコケはまた違った種類です。

 屋上緑化に使うのはスナゴケが有名です。太陽に強いというか乾燥に強いスナゴケがあるのです。ただ、そのスナゴケはコンクリートには生えないのです」

----コケ栽培はもっと簡単かと思いましたが結構難しそうです。コケツアーも企画なさっているとか。

 「研究室を立ち上げた時に親睦の一貫としてスタートしました。せっかくだからコケを見に行こうと金沢市内の庭園とか、お茶室の庭園にもコケがいっぱいあります。他の研究室からも参加しています。実は北陸は全国的に見てもコケが元気な地域なのです。生育に適しているのだと思います」

コケを植えた実験体を示す円井先生 円井先生の自然愛好は単なるあこがれではなく、筋金入りの本格派だ。世界オリエンテーリング選手権日本代表、立山アドベンチャーマラソン優勝という輝かしい経歴の持ち主だ。このバイタリティで環境適応型建築の研究を引っ張ってもらえそうだ。

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