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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

( ^ω^ )や^ - ^ の研究も

カテゴリ:心理情報学科
2016.10.03
 

心理情報学科 渡邊 伸行 准教授 渡邊先生が心理学を志したきっかけは「誤解」にあったという。高校生の時に外部から見ていた学問と大学に入って内部から見た学問との違いに驚くという話は良くある話。そこをどう折り合いを付け乗り越えて行くかは個人個人で皆違うのだろう。渡邊先生はどうされたのだろうか?

――若い人がスマホで使う顔文字や絵文字、スタンプの効果も研究されているとか? 最先端ですね。

 「コミュニケーションの研究の一環として、学生がLINEやTwitterなどで使っている顔文字などの効果もテーマの一つに入れているのです。あくまで学生がそのような興味を持ってくれたら、やりましょうかという感じで進めています。

――あれは当人の顔でなくても、やはり顔の表情が送られてくると、受け取った人は何か感じるものがあるということなのですか?

 「もともとは文字だけだとやはり無機質なので。あとは感情が伝わらないとか誤解が起きるのを防ぐために生まれたのではないかと。最初は()や^ ^ を使って人の顔に見せる顔文字から始まって、黄色い丸い絵文字になって、さらにLINEのスタンプが生まれたという感じです。

 スタンプはキャラクターや芸能人がイラスト化されているので、それがウケたのかも知れません。

 またLINEというインタフェースだからこそ使えたのでしょう。メールであれをやると、容量がかかったりとか、受け手によっては文字化けのように、きちんと伝わらないということもあるでしょう」

――心理学者としてのご専門は、顔の動きから心の動きを探ろうみたいなことですか?

 「もう少しシンプルな話です。顔の動きに対して、人がそれをどう判断しているかと。例えば相手の口角が上がったとか、目が細くなった時に人がそこからどうやって感情を読み取るかという話ですね。

 例えば、普通に会話をしていて、相手が何か笑ったようだなと判断したとします。それが相手の顔のどのような動きに基づくものなのかと考えるのです。結構知覚レベルになるかもしれないのですが、僕自身そのようなことを研究してきたのです。

 あと、文脈というか背景ですね。同じ笑顔の顔写真でも、「3か月前に恋人を亡くしたばかり」という文脈を加えることで全く違って見えることもあります」

――なるほど

 「顔のどういう視覚的な手掛かりに基づいて、表情を判断しているのかというところと、あとは、それがいろいろな文脈に置かれた時に、それがどのように変容するかと言ったところを研究しながら、人が顔を見てから感情を判断するまでの認知メカニズムの研究をやってきました。博士論文のテーマもそのような研究です」

――工学的な応用もあるとか。

 「実際、最近のデジカメではスマイルシャッターと言って、撮られる人が微笑むと口角の動きで自動的にシャッタを切ってくれるとか。あと携帯のアプリで無表情の写真を読み込んで怒りや笑いの顔に変化させるとかありますね。その辺はもともと心理学の知識があって、それを工学的に応用した例です」

――そもそも先生が心理学をやろうと思ったきっかけは何だったのですか?

 「誤解から始まっているのです。高校の担任の先生が心理ゲームが好きで定期試験の後に息抜きを兼ねて良く使ったのです。また当時テレビ番組でも"それいけ!ココロジー"といった心理テスト系の番組が流行っていて、面白そうだなと。

 もう一つは予備校の模擬試験を受けている時に、文系では経済か法律しか勉強する分野がないと思っていたのに、文学部には史学や心理学という分野があると気づいたのです。4年間勉強するならこのような分野が良いと。それで受験は史学と心理に絞ったのです」

――それで日本大学の心理学科に進まれた。

 「しかし、入学してみたら、自分が"心"だと思っていた"人の気持ち"に関する講義はほとんどなくて、何か違うぞと。心理学でいう"心"と、一般的に思われている"心"が違うことに気づいたのです。

 もう一つは数学と生物で、僕はセンター試験を2年連続失敗していて、数学や生物は二度とやりたくないと思っていたのです。と思っていたら、心理学科のカリキュラムの中に統計法と生理学という必須科目が入っていて、"あれっ!何か違うぞ"。"心理学は文系じゃないの?"と。結構、理系の要素が強くて1年目はどうしようと思っていました。面白くなかったです。

  だけど、一応、学校には通って2年目になって少し専門科目が出てきて、ようやく面白いと思えるようになってきました。それと、1年時の担任の山田 寛先生と結構仲良くなったことが大きいです」

ご自身の似顔絵と渡邊先生――大学に"担任"なんてあるのですか? 初めて聞きました。

 「日大は心理学科だけで1学年150人なのですよ。それを大体50人で3クラスに分けて、それぞれでオリエンテーションをやったりするのです。山田先生とは新入生歓迎会で親しくなって、先生の授業も取るようになりました。3年時に山田先生に東京の科学博物館でやっていた"大顔展"に連れて行っていただいて、先生の専門の表情認知の世界に関心を持つようになったのです」

*「大顔展」( www.kahaku.go.jp/special/past/kao-ten/ )
 1999年に東京上野の科学博物館で開かれた伝説的な企画展示。恐竜展のようなおざなりな企画ではなく、「顔とは何か?」というテーマのもと人類学、心理学など学際的な学者がジャンルを超えて協力し、多くの観客を集めた。

顔のデータベース作りを目指す

――それで博士課程まで進まれたのですか?

 「ドクターでは山田先生と表情認知の研究をしたのと同時に顔のデータベースを作ろうというプロジェクトに参加しました。顔の研究をするときには、実験で用いるために人の顔の写真を撮らなければなりません。実験目的で使うための顔データを集めるのは結構大変なのです。特に表情となると、いろいろな表情の動きをモデル人物に作ってもらうだけで大仕事です。いちいち怒ってください、笑ってください、眉を寄せてくださいと頼まなければなりません。せっかく作ったデータベースですが今はいろいろな事情でもう使えなくなっています」

 渡邊先生が恩師に連れられて観たという「大顔展」は筆者も観た。化粧に関する展示があったせいか、普段科学博物館には来ない若い女性たちが列を作って入場待ちをしていたのが印象的だった。あのような面白い刺激的な企画を最近、科学系博物館で見かけないのが寂しい。

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