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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

がけ崩れ防止ロボットを開発中

カテゴリ:ロボティクス学科
2017.11.18
 

ロボティクス学科 土井 隆宏 准教授 土居先生は幼稚園児の頃からの夢を実現させてロボット研究に打ち込んでいる。今回のインタビューはちょっと趣向を変えてロボットの映像を見ながら、いろいろと伺った。

――先生はロボットを作りたいと子供の頃から思っていたのですか?

 「はい。テレビの影響が大きいですね。友人たちはガンダムが好きとか、ドラえもんが好きというのが多かったです。私は"コン・バトラーV"という番組が好きでした。幼稚園の卒業文集に将来の夢はロボット博士になることと書いていました」

――それはすごい。大学は東京理科大学 機械工学科から東京工業大学の大学院に進まれます。

 「たまたま理科大にはロボットをやっている先生は少なくて、当時、使っていたロボット関連の教科書が東工大の広瀬茂男先生が書かれた教科書で、それが面白かったので広瀬先生の研究室に行きたくなったのです」

――東工大のロボットというと森 政弘先生が有名です。何十年も前の新聞社科学部時代に授業が面白いというので取材に行ったことを覚えています。確か乾電池数個で人間1人が乗れる乗り物を作れというもので、学生のグループを競わせる先進的でユニークな授業でした。ロボコンなどが始まる何年も前でした。

 「森 政弘先生の流れです。森先生の下に梅谷 陽二先生がいて、梅谷先生の下に広瀬先生がいて孫弟子のような感じです。東京理科大の学部の頃に広瀬先生の教科書で4足ロボットの話がいろいろ出ていて、これは面白いなと思い、研究室に見学に行ったりして決めました」

――やはり4足ロボットは一番実用性が高いのですか?

 「そう思っているのですが、もちろん研究者によって意見はいろいろあります。4足の良いところは、電源を切ってもそのまま立っていられるのです。2足だとモーターの電源が切れると倒れてしまうのです。そうなると建設ロボットとか、安定して動けないといけないものには使えません。2足なら大丈夫で、実際に建設用のロボットを企業と一緒に開発しています」

http://www2.kanazawa-it.ac.jp/doi-lab/research/index.html

――これはかなり大きそうですね。

 「ええ、7tあります。 名前はTITAN 。 普段は千葉県の茂原市にある建設会社の倉庫に置いてあります。ただ、私が行かないと動けないので、今マニュアルを作ったり、使いやすいインターフェスを開発したりしています」

――このロボットはどのような工事に使われるのですか?

 「がけ崩れを防ぐ工事があります。がけに穴を開け鉄筋やコンクリートを挿入して固めるのです。そのようなところで、従来は車輪を使って登って行って、ドリルで穴を開けたりする機械が使われていました。しかし、車輪だと横に移動できないのです。あとはがけがコンクリートフレームという格子状のコンクリートで補強されているところがあります。電車や車で高速を走っていると脇のがけによく見かけますよね。このフレームを無視して横に動いたりするとコンンクリートの角を壊してしまったりするのです。そこでフレームをまたいで横に移動できるロボットがあればと研究が始まったのです。

――なるほど、格子があるから滑り落ちる心配もない。

 「でも、フリーではなくて実はワイヤーで吊っているのです。ワイヤーの力と足の両方を使っています。大体、がけで作業するロボットは安全のため、みんなワイヤーはついています。良くクモに似ていると言われます。絵になるのかテレビなどの取材もたびたび受けています」

――製作費用もかなりかかりそうです。

 「 国から補助金も出ていて、数千万円はかかっていますが、億円ほどはかかっていません。できるだけ安い、建設機器用の汎用部品を使っています。それと、この会社は自前で工場を持っているので安く作れるのです」

――これはまだ実験用とのことなので、人間がやるのと比べてスピード感はどうなのですか?

 「人間がやるにしても機械を固定して、作業して、また次のところに運んでやるわけです。会社の方が言うには、一つの穴から次の穴に行くまで3分ぐらいで行ければ良いという話なのです。それなら、このロボットで大丈夫です。動きとして目で見るとそんなに早くないのですが、2mを3分ぐらいで動きます」

――肝心なことを聞くのを忘れていました。動力は何ですか?

 「軽油でディーゼルエンジンを動かしポンプを回して油圧で動かしています。コントロールはリモコンで将来、完全に自動化するとボタン1個で全部できるはずです。今のところはレバーを倒すと、後は馬とか犬みたいにロボットが自分で足の動かし方を考えて動いてくれるといいなと思っています。もちろん全部手動にすることもできるのですが、足を一本ずつ動かすのならいいのですが、歩行動作には必ず全部の足を同時に動かすという動作が必要なので、人間はコントロールできないのです」

足場の悪いとこにも着陸できるヘリも

――その他にはどんなロボットを開発中ですか?

 「足関係で言うと、最近やっているのは瓦礫とか岩場に着陸できるヘリコプターです。足をずっと研究していて、地上を歩くものは結構、制約があるのですが空中から降りると、割と楽にいろんな所に行けるのです。飛ぶところより、足のところです。鳥とか昆虫のように、木の枝にとまったりとか、そういうのができないかと思っています」

小型4足ロボットと土居先生――東日本大震災のとき、日本には災害の時にすぐ使えるロボットがなかったと批判されましたが、ロボット関係者はどのように反論したのですか?

 「ご存知にように昔から日本でロボットは開発されているのですが、メンテナンスがされていないとか、国のプロジェクトで予算がバーンとつくと、そのタイミングで一生懸命作る。しかし、その後、予算を切られてしまうとお金がなくなり終わってしまう。継続的に保守、点検する制度がないのです。息の長い開発、研究を支援する仕組みが必要だと思います」

 土居先生が最後に話されたことは、ロボット関連だけでなく広く日本の科学技術全般にも通じる気がする。特に研究開発で作った成果のモノや書類を後世のためにきちんと保存しておく仕組みもないのだ。

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