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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

アルミで創った究極のエコハウス

カテゴリ:建築デザイン学科
2010.10.19
 

建築デザイン学科 宮下 智裕 准教授 アルミ二ウムを使った究極のエコハウスを創ったり、指導した院生がエコ建築コンペでグランプリを取るなど活躍が目覚ましい宮下先生。今、KITでも最も元気な先生の中の一人だ。

――どうして建築に進もうと思ったのですか?

 「いきなり難しい質問ですね。昔からものづくりが好きだったということがあります。空間自体を作ることが好きで、それをずっとやりたかったということでしょうか。

 例えば洋服とかは、比較的短くて終わってしまうでしょう。それに対して建築はかなり長く残る。身の回りの物のデザインをしていくのに、建築とか住宅というのはすごく身近で、しかも長く残るという意味で、素敵な仕事かなと」

――なるほど、でも最近は建築もすぐ壊されて長く残らないようになっていませんか?

 「そうです。実はその問題にも挑戦していて、RDA(Re-Design Apartment Project)というプロジェクトをやっています。これはどんなものかというと、KITの指定寮の多くが25年近くたっているのです。建てられてから古いものが多くて問題も出てきています。こうした木造のアパートを学生と一緒にリノベーション(改修)しようとしています。
 
 去年2棟、2部屋立ち上げて,新しく直しました。学生がどういうところに住みたいか、何を求めているかをきちっとリサーチし、単に新しいというだけではない価値というのを考えます。それを学生がデザインし、自ら家賃を払って住むというプロジェクトです。そうすると、町自体が、ある意味、学生が自分たちでデザインした町になっていって、一つの特徴にもなるのです。そして、これは環境でいうところの超寿命化で、立派な環境問題への対策にもなるのです」

――環境がご自身のデザインのキーワードですか?

 「建築の分野でいうと、構造の人は構造に特化していかないとなかなか専門性は得られない。けれども実際は構造だけあっても意味がない。材料は材料ですごく進んでいるけど材料だけあっても、ものは建たない。それぞれの分野の良さを引き出して一つの形にデザインしていくことが重要なのです。言ってしまうとプロデュースに近いのです。

 そして、その源は何かと考えた時に、今、おそらく一番の拠り所は環境だろうと。環境を考えないデザインというのは、これからはあり得ない。構造も設備も材料も、それを合わせたデザインも、環境という一つの大きなフィールドの中で、それぞれがどうあるべきかを考えて建築を創っていくというのが私の研究室のテーマなのです」

――その流れの中にアルミニウムのエコ住宅もあるわけですね。

 「昨年、金沢市に完成した住宅は私の研究室と建築家の山下保博さん、約20の企業が参加したプロジェクトです。国交省の省CO2推進モデル事業の第一回に採択していただきました。この家は私の自宅でもあり、全くの実験住宅なのです。
 
 アルミ造という、アルミで建っている建物は全国でもう10棟くらいあります。だからアルミで建てるだけでは意味がない。では何をやっているかというと、アルミの構造体自体は熱伝導率が良いので、これを冷暖房に使っています。壁と天井自体が暖かくなったり、冷たくなったりするのです。なのでこの家はエアコンが一切ない」

自宅でもあり実験住宅でもあるアルミハウス――暖房は熱水を通すのですか?

 「温水を通します。この熱も自然エネルギーでやろうということで地中の熱を使って持っていってます。
 
 この家ではアルミは構造であり、デザインの意匠であり、内装材でもあり、冷暖房機器でもあるのです。さらに言うと、照明も入っているのです。しかも全部LEDです。だから照明の機器でもあるのです。

 ですから、全部のものを今回開発したアルミリングですべて兼ね備えるというもので、それが結局、エコにつながるというわけです。一つの集大成というか4年ほどかかりましたが」

――でも始めにかなりお金がかかりそうです。

 「これ自体は正直言うと、すべてのものがオールインワンで入っているのでちょいと高いのですが、大体坪80~90万。この規模で言えば2,500~3,000万円で建てられるようにしようと思っています。簡単に言えば鉄骨造の住宅を建てたのと同じくらいの初期コストはかかります。ただ、ランニングコストはかなり安くなります」

――昨年、グランプリを取ったのはどのような作品ですか?

 「環境省とデザインアソシエーションという団体が共催するローカーボン・ライフデザイン・アワード2009というのに院生の小田真也君と応募してグランプリを取りました。“ATATAKA-YA”(あたたかや)という作品です。
 
 これもアルミ製でピラミッドをさかさにしたような形が4基集まっています。中に何が入っているかというと竹のチップ。竹を細かく砕くと発酵して50~60度も熱が出るのです。それでこの下にいると暖かくなる。
 
 今、竹の害で里山が荒れているのです。その竹を町に持ってきてバス停とか屋外カフェなどに利用し、発酵が終わったら堆肥となるので、それを里山に戻して循環させましょうというコンセプトです。この循環の発想が評価されました」

ATATAKA-YAの模型と宮下准教授西海岸で学んだ自由と実践

――また、経歴に戻ります。先生は芝浦工業大学で修士を終えられた後、米国・南カリフォルニア建築大に留学されていますが、東ではなく西海岸を選んだわけは?
 
 「ニール・ディナーリという建築家にあこがれて、その人の下で働きたかったのですが、ビザの問題もあるし簡単にはいかない。そのうち彼が南カリフォルニア建築大で教えていることがわかり留学したのです。私学のちょっと変わった大学で、本当に世界的な建築家がいっぱい教えにきているのですが、大学の建物自体は空いた工場を借りて、自分たちで改造して校舎にしているのです。
 
 自分の作品を展示したいと、壁の色を好きな色に塗り替えたり、あるいは壁自体を抜いてしまってもかまわない。その代わり、元に戻しておきなさいと。それ自体が勉強でなかなか面白いです。だから本当にものづくりが好きなのが世界中から集まってくる。東部のアカデミックな理論的な大学とは違います。
 
 やはり、私も机の上だけの研究は好きではなくて、小さいものでも現実に社会にものを作って、それが社会にどう影響するのかというとこまでみないと、なかなかモノが動いていかないような気がして」
 
 宮下先生の創造と活動の原点は、シリコンバレーを生んだ米国西海岸の自由で実践的な風土で建築を学んだことにあるようだ。

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