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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

酸化物、高分子材料、そして電池へ挑戦

カテゴリ:電気電子工学科
2018.03.31
 

電気電子工学科 河野 昭彦 准教授 河野先生は今までに3回、研究分野を大きく変えているという。最初は酸化物、次は高分子材料、そして今は電池。新しい分野に入っていく時には勇気がいるが、やってみると面白いので学生たちにもどんどん挑戦することを勧めている。

――先生が科学技術の道に進まれたきっかけは?

 「中学生の頃にNHKの科学番組アインシュタインロマンを見て面白いと思ったのです。一番興味を持ったのは宇宙ですね。小学校3年の頃に親が小さい天体望遠鏡を買ってくれて、それで星とかを見るのが好きでした。家は九州の田舎だったので星は綺麗でした。」

――でも、天体物理を専門にはできなくて・・・

 「で、私が学位を取ったのは材料関係なのですけれども、それは全て昔の宇宙の不思議に目覚めたことからきていると思います。

 モーターとか制御とか、そういうモノづくりよりも、物質の本来の姿を追求すると言える材料などに興味を持っていました。半導体の本質は何かといった具合です。

 正直に言うと当初は電気回路とかはあまり好きでなかったです。ものすごく人為的な感じがして。それよりも原子、電子とかの世界に興味がありました。」

河野先生は「本質的なことを考えるにが好き」――その方向で研究をしていらして、学位論文が「高導電性透明酸化物薄膜の熱電子励起プラズマスパッタ法による形成と電子物性に関する研究」という結果になるわけですね。これをオープンキャンパスで見学に来た高校生に分かりやすく説明すると、どうなるのですか?

 「分かりやすく言うと、液晶ディスプレイとか太陽電池に使う透明な電極を作ることです。太陽電池ですと、電気は外に出さないといけませんよね。でも光を入れないと発電できません。つまり、透明でかつ電気を取り出せるように導電性がなければいけません。

 そうした性質を持つ薄い膜を作る方法がプラズマスパッタ法です。薄さ200nm(1nmは10億分の1m)と非常に薄いので、材料を削ってではできません。

 プラズマと呼ばれるものすごくエネルギーの高いイオンを原料になる固体にバーンとぶつけるのです。そうすると原料がいったん、原子、分子レベルまでバラバラになるので、それを基板と言われる土台の上にバーッと散らして作るのです。散らすことを英語でスパッタ(sputter)というのです」

――なるほど。

 「透明で電気を通すというのは実は全く反対の性質なのです。電流をよく流す物は基本的にはキンキラキン、光を反射する金属のように見えます。一方、透明なものは電気を通しません。その二つの相反する性質が両立できるような材料を持ってきて、後は半導体の製造技術で培われてきたドーピングという不純物を少し入れる操作をやってやると出来上がるのです。

 酸化亜鉛で、この特性が出るというのはKITの南 内嗣(みなみ ただつぐ)先生が最初に発見されたと思います。九州にいた頃から南先生の論文を読んで勉強していました」

――その縁で先生はKITに来られたのですか?

 「いいえ、全く違います。私がこちらにはポスドクできたのです。テーマは全然違って高分子関連です。私の指導の先生と、そのご友人の先生との繋がりで、どこかに若くて適当な研究者はいないかと玉突き的に話が回ってきたのです。ご縁があって本当にありがたく思っています」

――海、山越えてはるばる九州からポスドクに来られて、そのまま講師になられた。お若くて、しかもKITのご出身でもなく、企業のご出身でもないのは珍しいケースですね。

 「はい、ポスドクで来て3年で講師にしていただきました。こちらに来た時は高分子関連の研究をしていました。半導体のリソグラフィーで使うレジストに使う物質です」

――それは半導体の複雑なパターンを写真のように焼き付ける時、化学的・物理的な加工処理に対する保護膜として使う物質ですね。

 「はい、そうです。それの材料開発というよりも、結局加工するためのマスクパターンなので加工後に取らなくてはいけないのですけれども、それを取る時にものすごく環境に悪い有機溶媒とかを使うのが一般的なのです。そうした溶媒をできるだけ使わない、いわゆるドライプロセスの方法も研究しました」

――その他には?

 「はい、後、高分子は基本的に電気を流しませんが、それを流すようにするためにナノとかマイクロサイズの金属微粒子を高分子材料の中に入れて、それで特性をコントロールするとか、そのような研究もしていました」

電池は異質のデバイス

――そのように研究のテーマを変えられるのは何かきっかけがあるのですか?

 「一つは、環境、自分の置かれた現状でそのようなテーマを求められたというのもあるのです。

 ポジティブなことを言うと、それで良かったなと思っています。どんな分野でも専門が大きく変わると最初はやはりひるむのですよ。僕は化学をやっていないから付いていけないだろうとか、電池なんて全然知らないしとか思うのですけれども、やってみると結構面白いのですよ。最初はどうしても障害を感じてしまいますけれども。大きく分野が変わっても、その中で自分が今まで培ってきたカラーは多分出せるかなという感じはします」

「異なる分野に挑戦してほしい」と河野先生――それで今、主に取り組んでいるのが電池なのですか?

 「電池関連です。電池を作るという研究ではなく、電池の中でイオンとか電子がどのような動きをしているのかを分析します。例えば電気自動車などいろいろな用途で電池を使った場合に、電池の中でどのような現象が起きていて、それは安全な状態なのか、信頼性の問題は大丈夫なのか、といった問題です。いわばデバイスの物理みたいなことをやっています」

――スマホから電気自動車まで、現代はまさに電池の時代ですから。

 「スマホなど今のエレクトロニクス製品の内部には抵抗とかコンデンサー、半導体などの部品が入っていますが中で化学反応が起きていません。化学反応が起きている部品は電池だけなので、電池はかなり異質なデバイスだと思います。スマホの過充電など化学反応を電気の技術を使って制御しているので、次の段階として外から電流と電圧の信号が入って来た時に、電池の中の化学反応はどういう動きをしているかを明らかにしたいのです。」

 イノベーションは異なる分野の境界で起きることが多いと言われている。いろいろな研究分野を経験されてきた河野先生ならではの成果が期待される。

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