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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

臨床心理士を養成する

カテゴリ:心理情報学科
2016.04.05
 

心理情報学科 石川 健介 教授 「ものづくり」が中心でエンジニアを養成するKITだが、意外な職業につける道もある。その1つがスクールカウンセラーなどになれる臨床心理士への道。KITは北陸3県で初めて、臨床心理士第一種指定大学院を設置している。ここで指導されている石川先生に話をうかがった。

----先生は秋田県から埼玉大学教育学部に進まれ心理学を学ばれました。何かきっかけがあったのですか?

 「きっかけは特になかったです。とにかく家を出たかったのです。進学の時に普通に法学とか経済とか、いろいろ見ていく中で心理学というのがあるぞと気がつきました。ちょうど埼玉大教育学部にカウンセラー養成コースというのができていて、それでちょっと興味を持って行ってみようかなと。私はそこの1期生なのです。今はもうないのですけど。

 以前は日本の心理学の多くは文学部の心理学科と教育学部の教育心理学科が大部分。今は時代が変わりまして心理学部というのがあります」

----教育心理というのはどんなことをやるのですか?

 「学校で役立つような、先生がどういう風に子どもに関わったら良いのかとか、どのように教えたら良いのか、子どもはどういう風に発達していくものなのかなどです」

----大学院は金沢大学に進まれます。

 「埼玉大の学部のころから興味のある学会にいくつか参加していました。大学で勉強しているより学会に出た方がいろいろ勉強になりました。その中で面白いと興味をもった先生が金沢大学に移られたのです。

 ちょうど、私は学部を出る頃で就活して企業から内定をもらっていたのですが、自分で働いているイメージが出来なくて。もっと勉強したいという気持ちが強くなり、どうせなら面白い先生がいる金沢大にちょっと行ってみようかなと大学院を受けたのです」

「ヒトに興味があるので心理学を専攻した」という石川先生----その先生の何が面白かったのですか?

 「認知・行動療法(応用行動分析)の大家の1人だったのです」

*認知・行動療法とは認知(ものの受け取り方や考え方のクセ)に働きかけて気持ちを楽にする心理療法の一種。強いストレスを感じると私たちは悲観的に考えがちになって、問題を解決できない心の状態に追い込まれがちだ。認知行動療法は、そうした考え方のバランスをとってストレスに上手に対応できるように手助けする治療法だ。

----修士の時はどのような研究を?

 「その時は、統合失調症(当時は精神分裂病と言いました)の方を対象にしたソーシャル・スキル・トレーニング(SST)を研究していました。認知・行動療法を統合失調症の方の対人関係の障害に適用して、少しでも改善していこうというアプローチです。それを精神科の病院に行かせていただいて、研究しました。その時、その病院にいらしたのが、塩谷享先生(KITカウンセリングセンター長)です。私はSSTの研究をやり始め、修士課程、博士課程へと進みました。」

学習障害を研究中

----現在はどのような研究を?

 「もともと子どもに興味があったので、発達障害の子どもの支援とか、子どもの認知とか、そのような研究をしています。

 発達障害と一口で言ってもたくさんありまして、一番知られているのは自閉症のお子さんでしょうか。自閉症というのは現在では、ASD(自閉症スペクトラム障害)と呼ばれています。スペクトラムというのは連続体という意味です。ASDがもつ特徴的な症状を顕著に現す子どもから、それほど明らかではないが確かにそのような傾向をもっているなというお子さんまで幅があります。

 このASDの他にも、学校では学習障害(LD)やADHD(注意欠如・多動性障害)のあるお子さんもいらっしゃいます。読み書きや計算に困難を抱えていたり、不注意や衝動性の問題を抱えています。

 例えば読み書き障害というのは、簡単に言えば、読んだり書いたりできないのです。でも怠けているわけではありません。文字を読む行為は自然にできるわけではなく、大人から教えられていたり、日常生活の経験を通じて、脳の既存の機能を組み合わせることによって成立しています。この機能をうまく結びつけられないところが、読み書き障害の大きな要因の一つであると考えられています。」

----つまずいてしまうのですか。

 「なぜ、そのような状況が起こるかということに関しては、世界中の研究者が研究している最中で、確定的なことはわかっていません。

 原因というのはいろいろなレベルがあるのです。まず、脳の何らかの機能障害というのが想定されています」

----機能障害というと、脳のハードウエアの問題ですか?

 「いや、ハードがちゃんと動いていないということです。仕組みはできているのだけれど、働きに問題があるということです。脳のある部分が物理的に損傷している、していないといったことではなくて、うまく働いていない。何らかの原因で、語彙がうまく積み重ねられないことが指摘されています。これは読みにも影響を与えます。

 今、公立小中学校で調査すると、約6.5%の児童が発達に何らかの困難をもっているのではないかと推定され、文部科学省も対策に力を入れているのです」

「子どもとの対話のため遊具も備えてある」----発達障害のお子さんと会話をしながら、どこに問題があるかを突き止め良い方向に持って行くということでしょうか?

 「はい。小学校で行われる通常の読みの学習で習得が難しければ、応用行動分析の手法を適用して、一つずつ文字と音声の対応関係を新たに学習したり、書字の困難さを持つ子どもでは、エラーパターンを分析して、運動動作を改善したり、どこに着目して運筆するかを指導したりします。

 また対人関係で困難さをもつ子どもでは、人間関係を築くときに必要なソーシャル・スキルを、認知・行動療法の手法を用いて教えていきます。近年では学校の教育の中にも取り入れられています。

 筆者は心理学に全くの門外漢だが、石川先生は分かり易いように丁寧に説明してくれた。KITに臨床心理士養成の大学院があることは一般にはあまり知られていないが、ユニークで貴重な存在だ。

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