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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

キノコのメッセージを探る

カテゴリ:電気電子工学科
2011.11.01
 

電気電子工学科 平間 淳司(ひらま じゅんじ)教授 電気電子工学科、平間先生の全研究テーマの3分の2は「生き物」系だという。しかも生き物といってもキノコとか植物そして昆虫系だ。ユニークな研究にいたった背景をうかがった。

——最初は電気がご専門ですよね

 「私はもともと小さい頃からものづくり派で、電子部品を使ってものを作ったりしていて、電子工作や電子回路にすごく興味があったのです。小学校5年生ぐらいから真空管でラジオを作ったり。中1の時にはアマチュア無線の資格を取ったので無線機を自分で作りましたね。もちろん送信機も受信機も真空管です。

 電子回路が好きで高校も電気ですし、兄がKITの土木に行っていて、電子工学科もあるというので、親に僕も行きたいと頼んで」

手製の真空管アンプを見せる平間教授——それが、どうして生体の研究に向かわれたのですか?

 「大学出て就職したりしているのですが、基本的にはKITにずっといるのです。ただ学位を取ったのは人間に係るテーマでした。

 ノドが病気になると、声がしわがれ声のような病的な声になってしまう。そういう時に、音を調べて診断技術に使おうというのが、自分の学位論文でした。

 もう少し詳しく言うと、喉頭がんとかポリープになると声がおかしくなるのです。その声を音響分析して、特徴を抽出します。こんどはその特徴から逆に音声合成で病気の人の声を作ったのです。

 それで次はお医者さんを相手にさせていただきました。臨床の現場では患者さんの声を聞いて、この患者はしわがれ声、空気が抜ける声とカルテに書くのだそうです。そのトレーニングをするために病気の声の合成装置を作ってあげたのです。

 それを熟練したお医者さんに聞いてもらって“これは確かに病気の声が出てる”などと評価してもらったのです」

——なるほど、すでに電気、電子だけの研究ではないです。でも、どうしてその学位論文をやることになったのですか?

 「もうお亡くなりになった先生ですが、医学系の先生がちょうどここの電子工学科に入ってこられたのです。その先生の下で研究をさせていただいたので、音声関連に興味が出てきたのです。その時に、自分で装置を作ったりいろいろしますので、電子回路などの技術が役立っているなという感じで研究ができたのです」

——それで生き物系の研究にも目覚めた?

 「学位を取ったとき、ちょうど他の方から“植物関係とか害虫防除とかで面白いことをやってみないか”と声をかけられたのです。

 医学系は大切なテーマですけど、単独でやるのはきついかなと。相手がお医者さんなので実験がやりにくいのです。それならと思い切ってテーマを変えてその話に乗らせてもらおうと。それから15年近くたつのですが、ずっと生き物系です」

——それは農業関連の方のですか?

 「植物工場関連の方です。植物ならお医者さんは関係ないし厚生省も関係ない、好きなように実験ができる。

 昆虫もそうです。昆虫はサルやネズミといった小動物と違うから倫理に絡まない。ただ、うちの研究室は相当、虫を殺してしまっているので、お墓を作ってあるのです。学生にも言っているのですが、“虫も生き物だからゴミ箱に捨てないで。生き物を犠牲にして、今、私たちは食に関する研究をいろいろとしているのだから丁寧に扱って土に返してあげよう”と。

——それで最初は具体的にどのような研究を?

 「生き物の微弱な電気を測る、生体電位から始めました。スタートは植物の葉っぱの電圧とか、キノコのかさの電圧とか、昆虫の目の電圧などですね。

 中でも面白かったのはキノコです。キノコの電圧を測ったのは恐らく日本で初めてでしょうね。でも、それから10数年経つのに誰も同調してくれない。国内でも海外でもかなり発表しているのですが」

マイタケとエリンギで反応に違い

——どのようなキノコですか?

 「マイタケ、エリンギ、ナメコが主体です。人工栽培で増やせるようなキノコが対象ですから。培地栽培やポット栽培ができるので、培地やポットから芽が出てきたキノコに電極を付けるのは楽ですから。今、委託研究を受けているのは“雪国まいたけ”さん。新潟県六日町の企業で、日本で初めてマイタケの人工栽培に成功したとこです。キノコの環境を変えた時に微弱な生体電位が変化するので刺激力が分かるものですから」

——マイタケのどの部分に電極をつけると電圧が測れるのですか?

 「全部出ます。茎もかさも全部、電圧が出るのですが、一番出るのはかさです。かさに光をあてることによって電圧反応がでます。

 頭頂部の所からに2本の針電極を上から5mm深く、5mmぐらい平行に置いておけば良いのです。その間で電圧がでますので、それで計測します。

 これで青い光、赤い光、緑の光で反応が違うので、どの光が刺激力のある光なのかをキノコが教えてくれるのです。その時、嫌いで反応しているのか、好きで反応しているのかは電圧だけでは分からないですよね。ただ、キノコが大きくなったかどうかは分かるし、反応の程度は分かるのです。それで成長にどのように影響を及ばすかということで、実験チェンバーの中でいろいろな光のLEDをつけて、長期間栽培して成長具合を見るのです」

キノコ以外の植物も研究する平間教授——それで今までにどのようなことが分かったのですか?

 「長い間やってるのでほぼ結論は出ているのですが、生体電圧が大きく反応する光は全部成長に関与します。かさが全部、大きくなりますから。これは全種、共通でした。ただ、赤い光は茎が伸びます。ですから、これは栽培技術の一つになるのです。エリンギは自然の中では茎もかさも全部大きいのですが、スーパーで売っているのは茎が太くてかさが小さいです。エリンギは赤い色を当ててやると茎だけがぐっと伸びて商品価値があがるのです。逆にマイタケはかさが重要なので青い光をあててやるとかさが大きくなって茎は伸びません」

 しかし何故、光によって電気がでてくるのか? 実はその詳しいメカニズムはまだわかっていないのだと平間先生はいう。極めて身近で実用的な研究だが突き詰めて行くと思わぬ発見が出てくるかもしれない。

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