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小泉成史 (こいずみ せいし)
早稲田大学理工修士。1974年読売新聞入社。1984年マサチューセッツ工科大学ヴァヌ―バー・ブッシュ・フェロー。米国歴史博物館客員研究員。2002-06年テレビ朝日コメンテーター。03年より金沢工業大学客員教授。著書「おススメ博物館」(文春新書)など。

オリジナルなLSIが作れる教育ツール

カテゴリ:情報工学科
2009.09.01
 

情報工学科 津田 伸生 教授 筆者はごく初期の頃からパソコン(PC)には興味を持ち、ずっと使い続けてきた。その頃のPCは性能も悪く使い勝手も悪かった。長く使っていても、未だに根本的なところでコンピュータの動作原理は理解できていない。自分で簡単なプログラムを組んだこともなく、学校で本格的な勉強をしたことがないからだ。

 入門書を何冊も買い込んだがいつも2進法や基本回路のあたりで挫折してしまい、それ以上先に進まない。一方、PCの方は技術進歩が著しくインターネット端末となり映像も扱えるようになりますます理解不可能なものとなってしまっている。

 そのような筆者にとって津田先生が開発した「NT-ProcessorⅤ1」は驚異的な「教育ツール」だ。

 ごく簡単に言えば、普通に使われている表計算ソフト「エクセル」上でプログラムを書くことで、オリジナルなLSIが作れてしまうのである。しかも「Visual Elite」(ビジュアルエリート」というソフトで、書いているプログラムに対応するLSIの回路が視覚的にわかるようになっているというスグレものなのだ。

――LSIというと大メーカーしか作れないと思っていましたが、どうして可能になったのですか?

 「15年ほど前に米国で開発されたFPGAというデバイスが可能にしました。Field Programmable Gate Arrayの略で"書き換え可能型論理LSI"といいます。これができたのはフラッシュメモリのお陰です。今や誰もが使っているUSBメモリに使われているものと同じです。この集積度があがったフラッシュメモリの中に、論理回路すなわちコンピュータができてしまうのです」

 津田先生は旧・電電公社に入社し、武蔵野電気通信研究所に約23年在籍し、大型コンピュータのパーツ関連の研究やLSIの設計、インターネットを使ったサービス提供などの開発に従事されてきた。

開発したツールを示す津田教授――それだけ長い間、コンピュータ関連の研究をされてくると内容もどんどん変わってきたでしょうね?

 「それはもう。一時、LSIの研究は非常に流行ったのですが、それはLSIという物を作るという観点からやっていたのです。ところ、今は世の中がすっかり変わってLSIはただの入れ物なのです。そこに入れるソフトウエアで作ったプロセッサーをどうすれば良いのかと言う話になっています」

 以前からコンピュータのハードとソフトの区別がつきにくくなっているという話はきいていたが、ここまで来ているとは知らなかった。

――昔はLSIの開発は単に微細化ということだったのですか?

 「そうです。そして微細化した物を作るという技術はもう日本から卒業して、一番大手は韓国で台湾、マレーシアの方に行ってしまってわけです。何が残っているかというと、LSIそのものではなく、中に入れるプロセッサーという計算する構造なのです。この構造の研究はまだ生きているわけです」

――それで、先生の開発された「NT-ProcessorⅤ1」を使えば、学生が簡単な電卓のプログラムを書くだけで、オリジナルな電卓用LSIが作れるということですね。

 「そういうことです。昔は既製品のZ80などのプロセッサーをいかに使いこなすかということが問題でしたが、今は一段深いところでプロセッサーの中身から設計できるといとうことです」

――自分で設計したLSIが作れるというのは学生にとって魅力的でしょうね。オープンキャンパスでデモンストレーションすると貸して欲しいと言われませんか?

 「言われます。出張授業でよその高校に行ってやると、先生がぜひ貸して欲しいという話になります。でもコピー可能なデジタルコンテンツですので残念ながらお貸ししていません」

学生を指導する津田教授PCクラスタもオリジナル

 津田研究室ではその他、多数のコンピュータをネットワーク上で結び、高速かつ大量の処理を目指す「グリッドコンピューティング」を実現させるため、ソフトウエア開発をPCクラスタ上で進めている。クラスタとはブドウの房のことで複数のPCをつないでメモリ分散型の並列計算機をつくることだ。PCの繋ぎ方を独特な工夫をすることで、一つの経路に情報が集まって遅れがでるボトルネックの解消を目指している。将来的には計算処理の効率化だけでなく、通信システムまで含めた全体的なシステム作りまで視野を広げているという。

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