『2011年11月』アーカイブ

本日は、知的創造システム専攻・4期に開講している「国際交渉特論」をご紹介します。ビジネスアーキテクト専攻の方も受講可能で、実際に多くの方が受講されています。

全4回(1回・2コマ)からなる本授業。3期の「交渉学要論」で学んだ交渉の基礎を活かし、国際的交渉というさらに難易度の高い交渉に必要な前提知識と戦略シナリオの作成方法を学びます。

本授業の特長の1つが、5名の交渉の実務家と専門家による「チームティーチング」。

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法律実務の専門家としてパナソニック(株)で数々の国際交渉を手掛けてきたパナソニックラーニングシステムズ(株)事業開発総括・主席コンサルタントの一色正彦 客員教授、ファイナンス実務の専門家である(株)インスパイア代表取締役社長CEOの高槻亮輔 客員教授、交渉学の専門家である東京富士大学准教授の隅田浩司 客員教授、慶応義塾大学教授の田村次朗 客員教授、そしてTBSテレビでコンテンツのライツマネジメント業務に従事する田中康之 客員教授の5名が、それぞれの専門的視点から受講生の学びをサポートします。

2回目となる今回の授業では、前回配布された1つ目の交渉ケースについて模擬交渉を実施しました。受講生は2つの立場に分かれ同じ事例について別々の情報がまとめられた資料が配布されています。

完全なるオリジナルケースですので、具体的な内容は書けないのですが、知的財産に関する多数当事者間の訴訟トラブルの事例で、過去に担当教員が実際に体験された事例をベースに作成されました。

これまで100回以上企業の知財担当者や弁理士、弁護士を対象に実施されたというこのケース。なんと10回に1回もきれいな答えにたどり着くことがない難ケースだとか…

●18:50~19:20 交渉チームごとの作戦会議
初めに学習目標を確認したら、チームごとに分かれて交渉の進め方を議論。同じ立場で協力しながら交渉に挑むパートナーと、事前課題として作成した交渉シナリオに基づき、模擬交渉の進め方や役割分担を議論します。

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●19:20~20:05 模擬交渉(前半)
いよいよ模擬交渉を開始。やみくもに議論するのではなく、事前に検討した交渉シナリオや「Mission」「ZOPA(交渉可能領域)」「BATNA(合意可能領域)」に基づきながら、交渉を進めていきます。静かに淡々と交渉を進めるチームもあれば、上司役と若手社員役に分かれて「このままでは家庭が…」など演技を交えて交渉を進めるチームもありました。もちろん交渉のツボはちゃんと押さえられています。

●20:15~20:15 強制ブレイク
立場ごとに前半戦の振り返りと後半戦に向けた作戦会議を行いました。ここから本格的に先生やティーチングアシスタントの皆さんが、議論の整理をサポートしていきます。

●20:15~21:00 模擬交渉(後半)
交渉も後半戦。複雑な状況を整理し、お互いに共有するため全てのテーブルでホワイトボードを使った状況の整理が行われていきます。今回のケースは、交渉の両当事者が連携してトラブルに対応することがポイントとなり、こうした共通認識の形成が重要になります。

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●21:00~21:15 感想戦:ケース交換
それぞれ一定の結論にたどり着いたところで模擬交渉は終了。その後、お互いのケースを見ながら振り返りと意見交換を行いました。

●21:20~22:00 フィードバック
最後に4名の担当教員より、今回の交渉ケースのポイントについて改めて整理が行われました。 

今回のケースは、不完全な情報の中で、利害が完全には一致しない2社がどう協働して損害を最小限にするかというもの。そうした状況でどう交渉を進めていくか、というのがフィードバックのポイントとなり、

参考までに、先生のコメントをいくつか掲載すると…

「問題・課題が進行していく中、現状ではわからないことや、できないことに着目すると何も進まない。今、どうすればリスクを最小化できるかにフォーカスしないといけない」

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「たとえば100億円のリスクがあるうちに、両社が過去の責任について揉めたらダメ。まずは協働してそれを40億とか70億とかできるだけ減らすことにフォーカスして、その後に責任分担の話をすれば良い。現状で大事なのは、そうした訴訟プロセスをしっかり合意することである」

「具体的な手順や体制を決めて、決められることにフォーカスする。そうしないと何も決まらない」

…いかがでしょうか。複雑な交渉もこうしたセオリーを身につけることで、より良い結論にたどり着く。そんなことを実感する授業でした。

11月22日(火)19:00より第51回 KIT虎ノ門サロンが開催されました。今回は東京大学先端科学技術研究センター特認教授のジョージ・オルコット氏をお招きして「グローバル時代の日本的経営の課題」をテーマにお話頂きました。

オルコット氏は日本生まれで10歳まで鎌倉に住んでいたこともあり、キャセイパシフィック航空、シェルインターナショナル、UBSウォーバーグなど外資系企業を経て、日本板硝子株式会社、NKSJホールディングスの社外取締役を務めるなど、外資系企業だけでなく日本の企業経営にも深く関わっていらっしゃいます。

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近年、ケンブリッジ大学時代に書かれた博士論文が日経新聞の目に止まり出版化された外資が変える日本的経営があります。本著の中で「M&Aで外資の傘下に入る日本企業が増えており、日本的経営の基盤をなす企業組織と外資による経営方式とが軋轢や対立を生み出している」と実証研究をベースとした外資との効率的ハイブリッド組織を考究されています。

講演冒頭では「In Japanese?」と言って会場を和ませて下さり、ユーモア溢れる素晴らしい講演会となりました。

一方、その論説は切れ味鋭く「日本的経営の一番の問題点はOBが重役を担っていることである。これは企業文化を守る際にはプラスの要素として働くが、改革を進める際には逆に大きな障害となる」とのことで、読売グループや大王製紙の問題など紙面を賑わせている最新トピックスについても考えさせらせる内容でした。

また、グローバル化の重要性がこれだけ叫ばれている中、閉ざされたガバナンス、全取締役数における社外取締役および外国人取締役の割合、対日直接投資の数値などのデータを明確に示して頂きながら、日本的経営が抱えるその特長(問題点)について警鐘を鳴らして頂きました。

例えば、全取締役数における社外取締役の割合を国別に比較してみると「2008年現在、アメリカ74%、イギリス40%、中国36%ですが、日本はわずか10%。この数値が物語ることは何でしょうか?それはガバナンスの閉鎖性がもたらす危険性だと考えます。つまり社長・取締役のほとんどが新卒→部長→取締役→社長→会長→顧問→相談役のインサイダーで、外国人の取締役に至っては1社あたり0.07人しか存在しない」

グローバルな視点で急速な変化・変革が要求される今、アウトサイダー(外部者)の視点が必要だと言います。

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講演後半には、日本板硝子における経営手法、英国ピルキントン社の買収、そして将来性について社外取締役としてのご意見を頂きました。もともと同社は国内での事業展開が中心の硝子メーカーでしたが、2006年に英国の大手ピルキントン社を買収し、一気にグローバル企業へと発展を遂げた経緯があります。「日本の企業も更なる発展を求めて海外進出を図り、世界的競争の中で生き残りを図ることになるだろう」と日本企業のさらなるグローバル化へ繋がる様々な提言をして頂きました。

外資系企業に買収された日本企業の成功例(日産・中外製薬)や失敗例(社名はイニシャル)についても、各経営者・従業員のインタビューを数多く交えながら、丁寧にご説明頂きました。

質疑応答タイムでは、日本企業の弱みばかりではなく強みや良さについても言及頂き「外資の力を借りてより良い経営を目指すべき」と締めくくって頂きました。

次回の虎ノ門サロンは12月6日(火)特別編として4名のゲスト講師をお招きし「ニッポンを大チェンジ!-若き社会企業家たちからの提言-」をテーマに開催して参ります。NPO法人代表の方々によるパネルディスカッションも予定しておりますので、皆様奮ってご参加ください!

本日は、知的創造システム専攻 第4期に開講している「国際標準化実務特論」をご紹介いたします。第4期になると全ての授業が第1期~第3期で学んできた基礎や応用をベースとした、より実学的な内容となります。

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本授業の主題は「標準化戦略」「技術標準化活動」を知的財産経営の中でどう事業競争力の強化につなげていくか。全15回の講義を担当するのは、前回のブログでもご紹介したキヤノン知財部おいて長年先導的役割を果たしてこられた丸島儀一教授をはじめとする豪華ゲスト講師陣。

ソニー株式会社でFelicaやQRコードなど日本の優れた技術の国際標準化に取り組んできた原田節雄氏や、キヤノン株式会社で国際標準化の流れを踏まえたグローバルな研究開発に取り組んでこられた篠田信比古氏といった標準化戦略・実務のトップランナー。

三菱電機株式会社 知的財産渉外部長の加藤恒氏や、元ソニーで現在パテントプールを運営するアルダージ株式会社を率いる中村嘉秀氏といったパテントプールの第一人者。

それぞれの先生がセミナーでの講演活動や執筆活動にも取り組まれていますが、少人数かつインタラクティブに彼らの話を聞きディスカッションができる機会は日本でも少なく、極めて贅沢な機会となっています。

この日(11/8)の授業を担当したのは丸島先生。知的財産をどう活用していくか、その組織戦略や交渉などの実務的な話から、知的財産経営や国際標準化の流れの中で日本企業がどう戦っていくべきかといった大きな視点の話まで、どれも非常に興味深く時間が経つのを忘れて聞き入ってしまいました。

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受講されている院生の皆さんもレベルが高く、2コマ180分間、様々な業界・職種の実例を交えながら濃厚なディスカッションが行われました。公開セミナーとは違い、固有名詞が多数出てきましたので、内容の掲載は控えさせていただきます…。

そして、授業終了後は先生と受講生で食事に行き、恒例の第2ラウンド(22:00~!ほぼ毎週!)が行われました。

もはや単なる授業ではなく、次の世代の知的財産経営を担うリーダーを育成する“虎の穴”といった雰囲気で、やはりこういった先生に学ぶことができるのは、改めて貴重な機会だと感じました。

11月5日(土)虎ノ門キャンパス13F大講義室にて、KITプロフェッショナルミーティング「知的財産戦略」-技術で事業を強くするために-が開催され、知財業界の“カリスマ”丸島 儀一教授から長年のキャリアに裏付けされた力強いお話を聞くことができました。

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当日は100名近い参加者、それもメーカー知財部や特許事務所の方などを中心とした方々にお集まりいただき、丸島先生の持つ求心力の強さを実感しました。

元々、技術志向型である日本の企業においては、知的財産を活用した事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略の三位一体の経営戦略を実現することがグローバル競争で勝ち抜く唯一の手段であるのは間違いありませんが、それを実現できる人材が不足しており、その育成が急がれています。

このような状況を受け、本セミナーは知的財産の必要性・重要性を語りかけるものであり、非常に分かりやすく企業活動と知的財産の関係を説いたものでした。

知的財産を事業競争力として活用するための経営戦略、事業戦略など、ご自身の経験、現在に至る活動、弁理士としての専門知識をベースとした中身の濃い講演内容となりました。

●以下、丸島先生のお言葉を紹介させていただきます。

「知的財産部門は事業戦略を実行するために存在する。決して知財のための知財になってはならない」

「他社に対する優位は技術が作るもの、それを持続させるのが知財の仕事」

「ある技術で勝とうと思ったら、5~10年前から準備しておかなければ間に合わない。スティーブ・ジョブズ氏はAppleから離れていた10~15年もの間、研究開発と権利化を着実に進めていた。それが現在の成功に結び付いている。つまり先読みの勝負」

「モノを作るのは簡単だが、製品化に至るまでの過程で知財上の弱みを克服せねばならない。そうしないと容易に他社から攻め入られてしまう。某企業のAndorid端末のように弱みを解消しないまま大々的に製品を発表してみても、中身を見てみたら第三者の特許を使っているケースも多い。強みだと思って発売した自社製品が、逆に自社の弱みをさらけ出してしまう結果をもたらす」

「新たに事業戦略を立てる際、自社製品の持つ知的財産上の強みと弱み、その両方を正確に認識しなければならない」

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●強みを増す戦略と、弱みを解消する戦略。知財戦略の取るべき道は2つあると丸島先生は言います。

「強みを増す戦略は交渉、訴訟(妥協してはならない!勝たなければならない!)で解決できるが、弱みを解消する戦略は訴訟ではなく交渉で解決しなければならない」

「弱みを解消する戦略とは、妥協点を探すことである。つまりお金で解決できない場合が多い。交渉が大事になってくるが非常に難しい。弱みの解消の目的で形成した知的財産を最大限に活用し相手の弱みを突いて、NOをYESに変えていかなければならない」

「交渉をする際、自社の攻めの知的財産を交渉の道具として使う。そのためには前もって相手が脅威と感じる(相手が使いたくなる)権利を取っておかなければならない。質と量を維持しながら、強みを守る訴訟用の守りの特許と弱みを解消する妥協用の攻めの特許をはっきりと意識して権利化していくことも重要」

●交渉する際に必要となってくるのが、相手の状況はもちろんのこと、自社技術・製品の強みと弱みを正確に把握する事だと、丸島先生は言います。ではどうすれば良いのか?

「事業部門や開発部門は新しい事業計画(技術製品)の強みは言うが弱みは言わない。しかし事業の強みを維持するためには自社の弱みの真実を聞き出さなければならない」

「そのためには、事業部門、開発部門の人間から信頼されていないといけない。知財の仕事は事業(全社)のためにやっている、知財のためではない。事業部・研究開発者・発明者の方々に喜んでもらえることは何でもやった。その結果、友好な社内人脈が形成され、事業部門・技術部門からの信頼を勝ち取ることができた」

●それでは、知財部門にとって重要な活動とは?

「各事業部の強み、弱みの認識と全社の強み、弱みの認識に基づき各事業部の最適化と全社の最適化の機能を果たす活動が重要である。一例を挙げると販売製品は事業部ごとに異なるが、全社的に見ると技術は共通しているケースが多い。知財部門が全事業部を横断的に活動するような組織作りと仕組み作り、さらには、この活動ができる知財人材の育成も大切」

こちらで全ての話を紹介することが出来ないのが残念ですが、丸島先生のお話はいつでも明快で力強く、知財の仕事の面白さとダイナミズムを肌で感じ取る事ができました。

※さらに詳しい内容を知りたい方には、丸島先生の近著「知的財産戦略-技術で事業を強くするために」をお勧めします。

講演会の後に開催された懇親会も丸島ゼミの方々のご協力もあって盛大に開催することができました。この場を借りて感謝申し上げます。

今後も魅力的なイベントを開催して参りますので、皆様ご期待ください!

 

 

 

 

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