テニスのラケットや釣りざおなどに使われているため、FRP(fiber-reinforced plastic,繊維強化プラスチック)はすっかり馴染みのある言葉となったが。しかし、どのような材料でどうやって作るかは、あまり知られていない。学生時代から実験を通じてそのFRPの奥深い魅力にとりつかれたという斉藤先生に研究の現状や課題をうかがった。
ーー先生は本学では珍しい京都工芸繊維大学のご出身です。京都工繊大の英語の表記はKyoto Institute of Technology で略称はKIT。本学と同じです。混乱しませんでしたか?
「ずいぶん昔のことなので、もう慣れました(笑)。」
ーー理系に進まれたのは何か理由がありました?
「小さい頃から実験好きでした。"子供の科学"などの児童向け雑誌に載っていた実験に夢中になったのです。だから友達もみんな自然に理系に進むとものだと思っていました。そうしたら実際には2割しかいなくて。あれ?という感じでした(笑)。
実験は今でも大好きで、学生にやってもらう実験も本当は自分がやりたいくらいです(笑)。」
ーー材料に進まれたのは?
「学部3年の時に、授業でFRPというものに初めて触らせてもらいました。これは新しい材料でまだそんなに歴史がないという説明で興味を覚えたのです。
私は破壊試験を担当しました。材料を作っては壊しみたいなことを続けます。金属だと、この部分にくびれが生じて亀裂が入って壊れると決まったプロセスで予想がつきます。ところがFRPはやってみると訳が分からなくて。それをどうやって解明するのかと迷いました。
それが、なかなか奥が深いというか、分からないことだらけで、今でもよく分かりませんが、ただ、それをもうちょっとやってみようかなと思ったのが多分きっかけでしょうね」
ーー先生が最初に壊したFRPはどんな種類のものだったのですか?
「今考えたら一番難しいのですけれど、ランダムにガラス繊維が入っているやつです。だから繊維の方向があちこちに向いているし、入っている場所もいろいろだし、無茶苦茶なのですよね。でも強くはなっている。プラスチックだとムニョーンと伸びるようなとこが、伸びないでブチッとちぎれる。しかもバリバリとね。
今はガラス繊維ではなくほとんど炭素繊維を使っているのですが、当時は炭素繊維は高くて買えませんでした」
ーーそれで分からないという魅力に取りつかれたという感じですか?