『2012年8月』アーカイブ

K.I.T.虎ノ門大学院では、メディアやエンタテインメントビジネスの世界市場で通用する人材育成を目的に2012年度より「メディア&エンタテインメントマネジメントコース」を新規開講しています。

基礎的な理論や市場の概況にとどまらず、実践的なケーススタディや経営計画・事業計画の作成、さらには具体的なマーケティング企画や法律実務までを、トップクラスの教授陣から学ぶことができるのが最大の特徴です。

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2期に開講している「メディア&エンタテインメント契約・交渉特論」(1単位・全8コマ)は、スポーツビジネスおよび音楽ビジネスを題材に、実務的契約や交渉の世界について理解を深めます。「放映権の販売交渉」「スポーツ選手のマネジメント」「音楽著作権」「アーティスト交渉」といった具体的な場面で必要な専門知識を、実例や最新動向とともに学ぶことができます。

本科目を担当するのは実務経験豊富な3名の教員。エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社の執行役員・経営戦略本部長である阿南雅浩 客員教授、スポーツ法を専門とする弁護士の大橋卓生 准教授、さらには、本コースを統括する北谷賢司 教授(コンテンツ&テクノロジー融合研究所所長)です。

7月末に行われた講義のテーマは、音楽コンテンツにおける「アーティスト」「所属事務所」「レコード会社」の契約。担当する阿南先生は、なんと日本を代表する大手レコード会社のエイベックスでアーティストの契約等を担当してきた業界の第一人者です。

もちろん、長年メディア&エンタメ業界で活躍されてこられた阿南先生のお話は、非常にシビアかつ専門的です。TV出演やミリオンヒットなど、華やかな舞台の裏側で繰り広げられるビジネスの主導権争い。初めて聞くものばかりでした。

例えば、音楽コンテンツが市場に出るとき、アーティスト、所属事務所、レコード会社の間の契約がどのようになっているのかご存知でしょうか。

「印税の取り分は通常どのような配分になっているのか?」
「制作費はだれが負担して、原盤権は誰が持つのか?」
「契約期間はどの程度で、その間のアーティストの義務や報酬はどうなっているのか?」など、

契約上の具体的な論点とその取り決めのパターンついて、豊富な具体例を(もちろん差支えのない範囲で)挙げていただき、生々しいエピソードもたくさん出てきます。

また、通り一遍の「型」をお話しいただくだけでなく、エイベックス社の事業戦略と照らし合わせて、同社ではどういう方針で事務所やアーティストと契約しているのか、という一歩踏み込んだ大変実践的なお話もいただきました。

受講生の方々にとっても、アーティストやタレントなど馴染みのある話でありながら、実はあまり詳細を知ることができない領域だけに、たくさんの気づきがあったようで、授業中は活発な質問が飛び交いました。

知的創造システム専攻では2期に「意匠法令特論2」(2単位、全15コマ)を開講しています。この科目のテーマである「意匠」。知財を勉強していない方でも何となく聞いたことのある言葉だと思いますが、いわゆるデザインのことです。なかでも、意匠法における「意匠」とは、美術品などの一般的なデザインではなく、工業的生産過程を経て反復生産され、量産される物品のデザインのことを指します。

特許庁HPによると、こうしたデザインは「容易に模倣することができるため、不当競争などを招き、産業の健全な発展に支障を来すこと」があり「新しく創作した意匠を創作者の財産として保護する一方、その利用も図ることを定めて、これにより意匠の創作を奨励し、産業の発達に寄与しよう」という目的で制定されたのが「意匠制度」です。

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本科目は1期で基本科目として開講している「意匠法令特論1」の応用科目。すでに受講生の方々は立法過程、立法者意思、起草者意思等を中心に、意匠法を一通り概観しましたが「意匠法令特論2」では、その審査基準や裁判例について集中的に学習する、より実践的な内容です。

担当するのは青木博通 客員教授。法律事務所、特許事務所、会計事務所としての機能全てを有する総合事務所「ユアサハラ法律特許事務所」にて30年近い経験を積まれ、現在も同事務所の商標・意匠部のパートナーとして活躍されているまさに第一線の知財プロフェッショナルです。

取材日は、2期の授業も佳境に入った7月末。講義も今週と来週で終わりということで、メインイベントは、これまで学んできたことを踏まえ、実際にあった意匠権侵害事例を使ったグループディスカッション&模擬裁判です。

お題は「あるメーカーが出した機器の意匠権を、別メーカーが出した類似商品が侵害しているかどうか」。これを教室の真ん中から右側と左側で「侵害している」という立場のグループAと「侵害していない」という立場のグループBに分かれてもらい、それぞれの主張を検討し意見をまとめていきます。

配布された資料に機器の商品写真が載っているのですが、一見するとそっくり、でもよく見るとデザインも機能も少し違います。法律のことを何も知らないと「似ていると言えば似ているし、でも…」と頭を抱えてしまう事例です。

案の定、受講生の皆さんも頭を抱えながら議論をしておられます。もちろん、法律やこういった事例の判断基準などは既に学習済みですが、やはり実際に議論してみると、すぐに難しい事例だと気づきます。

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青木先生も両方のグループを行ったり来たりしながら、議論をサポートします。用意された検討時間の30分はあっという間に経過。再び集合して、グループA・Bで模擬裁判の開始です。対決の構図になると討論もいよいよ盛り上がり、より学びが深まるのがこうしたディスカッションの良い点です。

そして、青木先生から解説講義。詳しい内容は控えますが、印象に残ったが次の一言「この事例は、裁判官も相当悩んだのではないでしょうか」とのこと。なるほど、それは難しいはずですね。

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