『2012年7月』アーカイブ

知的創造システム専攻の2期に開講している「知的財産マネジメント要論」。本科目で学習するのは「企業」における知的財産マネジメントの基礎。

特許をはじめとする知的財産を、競争優位の源泉として戦略的に活用するにはどうすればいいか?その基本を学ぶことで、後期(3期・4期)に多数配置されている知財戦略系の応用科目・専門科目の前提となる知識や考え方を獲得します。

担当するのは加藤浩一郎教授。日本IBM社のシステムエンジニア、知的財産部門主任弁理士、課長を経て当大学院の教授に就任。現在は専攻主任として知的創造システム専攻全体のカリキュラムを統括されています。

kouichoukato.jpg

全8回の講義のテーマは以下(*は主に題材とするトピック)の通り。最新のトピックスを含め、実際の事例や実務における留意事項にも触れながら講義を進めていきます。

#1 知的財産マネジメント総論
#2 特許の戦略的活用 *知財マネジメントレベル
#3 特許群(発明群)の戦略的管理 *特許ポートフォリオ管理事例
#4 持続的成長に資する発明の戦略的創造 *オープンイノベーションと知財
#5 創造された発明の戦略的保護(1) *発明評価研究
#6 創造された発明の戦略的保護(2) *知財情報システム
#7 戦略的発明管理に資する体制・環境 *CIPO(知的財産最高責任者)研究
#8中小企業・NPEと知財マネジメント

取材日の講義のテーマは「オープンイノベーションと知財」。

従来、技術面でのイノベーションを起こそうとする企業の多くは、研究から開発、製造、販売までを全て自社で賄ってきました。優秀な人材を雇い、莫大な研究開発投資をし、イノベーティブな新製品を“最初”に市場化し、知的財産をコントロールして他社を排除する。これが「クローズドイノベーション」です。

しかし、近年、市場化へのスピードが加速、製品ライフサイクルが短命化し、スキルの高い研究者やエンジニアの流動性も高まる中、社外の知恵を借りながら社内イノベーションを加速するとともに、自社のイノベーションの社外利用を促進する「オープンイノベーション」が注目を集めています。こうした中では、単に知的財産権を防衛的に使うだけでなく、他社の知的財産の活用や共同研究などにより戦略的な知的財産マネジメントが重要になってくるとのことです。

「例えばインテル社は、大学への資金援助や共同研究を積極的に行うと同時に、その研究成果へ無償でアクセスできる権利を得るという契約を数多くの大学研究所と結んでいる。オープンソースソフトウェアとして有名なリナックスについても、多くのIT企業は単なる慈善活動ではなく、より良いリナックスをつくることで自社の競争力を高めることを目的に、開発のサポートや自社特許の無償ライセンスを行っている」と加藤先生は説明します。

他にもマイクロソフト社や技術開発・投資・ライセンス会社、製薬会社の例などを挙げながら、いま多くの企業が採用しつつあるオープンイノベーションの持つ可能性と、そこにおける戦略的な知的財産活用の必要性をお話しいただきました。

今回は講義中心の授業でしたが、次回は各グループに分かれ、企業における知的財産活用事例のまとめを作成し、発表するということで、より参加型の講義になります。準備はなかなか大変ですが、どんな発表がされるのか、楽しみです。

ビジネスアーキテクト専攻では、1期に「リーダーシップ要論」、2期に「リーダーシップ特論」を開講しています。しかし、これらの授業はいわゆるリーダーシップ論を学術的に研究することが主目的ではありません。

受講生一人ひとりが自らの組織においてリーダーシップを実際に発揮できるようになること。そのためのスキルを具体的に習得することを目標にしています。そのため、授業内では課題や演習を豊富に取り入れています。

aikawa.jpg

これら2つの科目を担当するのは相川充客員教授。東京学芸大学教授として、対人心理学を専門に研究・講義をされています。「人づきあいの技術」「先生のためのソーシャルスキル」など、実践的な著書も複数出しておられます。

今回は2期の「リーダーシップ特論」の5コマ目の授業。テーマは「アサーション」です。「アサーション」とは何か、簡単に説明しますと、

対人関係において「自分と相手の考えや感情が食い違う」「相手からの要求がどうしても受け入れられない」「相手に何かを依頼したい」といった場合、攻撃的に自己の意見を主張して角がたったり、時には言いたいことが言えず、自分が我慢することになったりした経験は誰しもあると思います。

そんな時、自分の権利(要求)、さらには相手の権利も尊重しながら、相手の思いに耳を傾け、建設的な意見や代替案を提示する方法が「アサーション」です。

授業では様々な考え方や、具体的なテクニックが出てきます。中でも印象に残ったのが「“あなた”ではなく“わたし”を主語にしたメッセージを使う」こと。一例を挙げてみますと、上司が部下の遅刻に関して言及しているシーンを想像してみてください。「(あなたは)明日、遅刻するんじゃないぞ!」ではなく「明日、遅刻するんじゃないかと(わたしは)心配だ…」の方がより伝わりやすいといった感じです。

さらに「依頼するときは肯定的結果についても説明する」「感情的にならないために丁寧語を使う」といった日常の会話スキルや、どうふるまうかという行動スキルについてレクチャーしていただきました。

そして最後に演習です。例題の一つが「先輩に貸していた大事な本を返してもらったら、コーヒーをこぼしたような跡があった時に、あなたはどう言うか?」。

これが意外と難しく「面と向かって先輩に“汚れているから弁償してください”とは言えませんので、そうですか…と言って受け取る」「お貸しした際は汚れていなかったと思います。元の状態に戻して返していただけますか」など、受講生の皆さんの答えはバラバラで、うまく自分の主張を伝えられない様子の方も多くいらっしゃいました。

しかし、それも仕方のない話で、こうしたスキルは繰り返し使ってみてはじめて身につくもの。相川先生も「ぜひ今後も意識して積極的に使ってほしい」とのことでした。次回の授業に向けて作成する課題も、会社の同僚や家族などにアサーション・スキルを使ってみて、その結果をレポートするものです。学んだことを即実践する、これこそが働きながら学ぶ社会人大学院の醍醐味です。

こうしてあっという間に1コマ90分の授業が終了。たった1コマ後ろで聞いているだけでも、明日から意識して使ってみようというスキルをたくさん知ることができる授業でした。

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 5.2.9