知的創造システム専攻の2期に開講している「知的財産マネジメント要論」。本科目で学習するのは「企業」における知的財産マネジメントの基礎。
特許をはじめとする知的財産を、競争優位の源泉として戦略的に活用するにはどうすればいいか?その基本を学ぶことで、後期(3期・4期)に多数配置されている知財戦略系の応用科目・専門科目の前提となる知識や考え方を獲得します。
担当するのは加藤浩一郎教授。日本IBM社のシステムエンジニア、知的財産部門主任弁理士、課長を経て当大学院の教授に就任。現在は専攻主任として知的創造システム専攻全体のカリキュラムを統括されています。
全8回の講義のテーマは以下(*は主に題材とするトピック)の通り。最新のトピックスを含め、実際の事例や実務における留意事項にも触れながら講義を進めていきます。
#1 知的財産マネジメント総論
#2 特許の戦略的活用 *知財マネジメントレベル
#3 特許群(発明群)の戦略的管理 *特許ポートフォリオ管理事例
#4 持続的成長に資する発明の戦略的創造 *オープンイノベーションと知財
#5 創造された発明の戦略的保護(1) *発明評価研究
#6 創造された発明の戦略的保護(2) *知財情報システム
#7 戦略的発明管理に資する体制・環境 *CIPO(知的財産最高責任者)研究
#8中小企業・NPEと知財マネジメント
取材日の講義のテーマは「オープンイノベーションと知財」。
従来、技術面でのイノベーションを起こそうとする企業の多くは、研究から開発、製造、販売までを全て自社で賄ってきました。優秀な人材を雇い、莫大な研究開発投資をし、イノベーティブな新製品を“最初”に市場化し、知的財産をコントロールして他社を排除する。これが「クローズドイノベーション」です。
しかし、近年、市場化へのスピードが加速、製品ライフサイクルが短命化し、スキルの高い研究者やエンジニアの流動性も高まる中、社外の知恵を借りながら社内イノベーションを加速するとともに、自社のイノベーションの社外利用を促進する「オープンイノベーション」が注目を集めています。こうした中では、単に知的財産権を防衛的に使うだけでなく、他社の知的財産の活用や共同研究などにより戦略的な知的財産マネジメントが重要になってくるとのことです。
「例えばインテル社は、大学への資金援助や共同研究を積極的に行うと同時に、その研究成果へ無償でアクセスできる権利を得るという契約を数多くの大学研究所と結んでいる。オープンソースソフトウェアとして有名なリナックスについても、多くのIT企業は単なる慈善活動ではなく、より良いリナックスをつくることで自社の競争力を高めることを目的に、開発のサポートや自社特許の無償ライセンスを行っている」と加藤先生は説明します。
他にもマイクロソフト社や技術開発・投資・ライセンス会社、製薬会社の例などを挙げながら、いま多くの企業が採用しつつあるオープンイノベーションの持つ可能性と、そこにおける戦略的な知的財産活用の必要性をお話しいただきました。
今回は講義中心の授業でしたが、次回は各グループに分かれ、企業における知的財産活用事例のまとめを作成し、発表するということで、より参加型の講義になります。準備はなかなか大変ですが、どんな発表がされるのか、楽しみです。