1609年、ガリレオは自作の望遠鏡を星空に向け天体を観測し始めた。望遠鏡のお陰で彼はそれまで誰も見たことのない月のクレーターや木星の惑星などを発見した。以来400年、望遠鏡は進化し続け、それと共に天文学も進歩してきた。昨年2009年はガリレオの観測開始を記念し、ユネスコなどが「世界天文年2009」を制定し話題となった。
日本は1999年に標高4,205mのハワイ島マウナ・ケア山頂に世界最大級の光学赤外線望遠鏡「すばる望遠鏡」を完成させ、世界の天文学の発展に貢献している。
別段教授はKIT教授に就任する前は三菱電機で日本が世界に誇るこのすばる望遠鏡の統括マネージャーを務めていた。
――"すばる"は現場も外国だし、約400億円の大プロジェクトだったので、まとめるのは大変だったでしょうね。
「予算を取るまでに十何年かかりましたたが、私は当時、三菱電機の衛星通信部長をしていましたので、予算が決まってからは部下に"すばる"をやらせ、ずっと統括マネージャーをしていました。
参画した人間でいうと、電気関連だけでなく機械とか材料を含めて1,000人近いです。あと、日本で作ったモノとアメリカやヨーロッパのメーカーに作らせたものと全部を統括して私は見に行っていました。
例えば、反射鏡は米国のコーニングというガラスの材料メーカーに径約1.6mの六角形を作ってもらい、その材料は一つ一つ個性があるので、どうやって組み合わせるのかをうちの連中を派遣して統括しました。その後のレンズ磨きは米国コントラベス社(親会社:スイス)といった具合です。
こうした世界のトップの技術を望遠鏡にまとめ上げることができるのは日本では三菱電機だけですよ」
――しかも、現場が富士山より高い。
「現場には何回も行っていて3ヶ月ぐらい現地に居た事もあります。酸素が少ないので普通の人は2時間くらいで頭が痛くなり、眠くなるのだけど慣れてくるとそれほどでもなくなる。作業者は海抜2800mくらいのところに宿舎を作って、そこから通うのです」