畝田先生はもともと研究者になるつもりはなかった。修士課程を修了したら就職し、技術者としての道を歩むつもりだったという。それが恩師の勧めで博士課程にまで進み、防衛庁に勤務した後で再びKITに戻って来られて2013年から教授に。今までの研究の一端をうかがった。
――先生は昔から機械いじりなどがお好きだったのですか?
「いや、特にそのような理由がなくて。僕の記憶が間違ってなければ、当時のKITの募集パンフレットの一番上が機械工学科だったので、それで選んで(笑)。でも、ずっと、この道を歩んできたということは性に合っていたということでしょう。
最初はドクターまで行こうという気はなくて、学部にいるうちに修士までは行こうかなと考えるようになりました。
そのような中で修士2年になった頃、指導教授で学長だった石川憲一先生(現 名誉学長)から"ドクターに残ったらどうか"と言われました」
――よっぽど石川先生に見込まれたのですね。
最後に決めたのはよく覚えているのですが、ドクターとして学生の立場でもありながら、任期付助手で残らせていただけることになりました。そうなれば自分で稼ぎながら研究できますから。
見込まれたのか、使い勝手が良かったのか、それは分かりませんけれども、でもありがたかったです」
――博士課程の時はどのような研究をしたのですか?
「"回転薄刃による硬脆材料の振動スライシング加工"。要するに硬くてもろい材料を精密に切断する研究です。薄い砥石(といし)を使って研削をしながら切断します。このテーマを恥ずかしながら学部4年の時に石川先生からいただいて6年間一貫してやってきたのです」
――振動スライシングというのはどのようなものですか?
「刃を振動させることで、もっと能率良く精度良く硬い材料を切断しようとする加工法です。加工する材料はセラミックスとかガラスがメインでした。例えばセラミック材は耐熱材料ですから、耐熱性が要求される機械構造部材などに使ってもらえれば良いなという研究です」
――博士課程終了後に防衛庁技術研究本部に入庁されますが、この研究を伸ばしていこうという考えもあったのですか?
「いや、全くないです。仕事と専門性とは関係ないと思っていたので。僕が防衛庁でやっていたのはレーダーの信号処理の研究をしていました。機械工学でもありません。
防衛庁技官という立場で、普段の職務ももちろんありますが、格好良く言えば、将来の日本の防衛のために今後の防衛技術はいかにあるべきかを考えるのが技術研究本部なのです」
――と言うと、レーダーの勉強はゼロからご自分でやり直したのですか?