アルミ二ウムを使った究極のエコハウスを創ったり、指導した院生がエコ建築コンペでグランプリを取るなど活躍が目覚ましい宮下先生。今、KITでも最も元気な先生の中の一人だ。
――どうして建築に進もうと思ったのですか?
「いきなり難しい質問ですね。昔からものづくりが好きだったということがあります。空間自体を作ることが好きで、それをずっとやりたかったということでしょうか。
例えば洋服とかは、比較的短くて終わってしまうでしょう。それに対して建築はかなり長く残る。身の回りの物のデザインをしていくのに、建築とか住宅というのはすごく身近で、しかも長く残るという意味で、素敵な仕事かなと」
――なるほど、でも最近は建築もすぐ壊されて長く残らないようになっていませんか?
「そうです。実はその問題にも挑戦していて、RDA(Re-Design Apartment Project)というプロジェクトをやっています。これはどんなものかというと、KITの指定寮の多くが25年近くたっているのです。建てられてから古いものが多くて問題も出てきています。こうした木造のアパートを学生と一緒にリノベーション(改修)しようとしています。
去年2棟、2部屋立ち上げて,新しく直しました。学生がどういうところに住みたいか、何を求めているかをきちっとリサーチし、単に新しいというだけではない価値というのを考えます。それを学生がデザインし、自ら家賃を払って住むというプロジェクトです。そうすると、町自体が、ある意味、学生が自分たちでデザインした町になっていって、一つの特徴にもなるのです。そして、これは環境でいうところの超寿命化で、立派な環境問題への対策にもなるのです」
――環境がご自身のデザインのキーワードですか?
「建築の分野でいうと、構造の人は構造に特化していかないとなかなか専門性は得られない。けれども実際は構造だけあっても意味がない。材料は材料ですごく進んでいるけど材料だけあっても、ものは建たない。それぞれの分野の良さを引き出して一つの形にデザインしていくことが重要なのです。言ってしまうとプロデュースに近いのです。
そして、その源は何かと考えた時に、今、おそらく一番の拠り所は環境だろうと。環境を考えないデザインというのは、これからはあり得ない。構造も設備も材料も、それを合わせたデザインも、環境という一つの大きなフィールドの中で、それぞれがどうあるべきかを考えて建築を創っていくというのが私の研究室のテーマなのです」
――その流れの中にアルミニウムのエコ住宅もあるわけですね。
「昨年、金沢市に完成した住宅は私の研究室と建築家の山下保博さん、約20の企業が参加したプロジェクトです。国交省の省CO2推進モデル事業の第一回に採択していただきました。この家は私の自宅でもあり、全くの実験住宅なのです。
アルミ造という、アルミで建っている建物は全国でもう10棟くらいあります。だからアルミで建てるだけでは意味がない。では何をやっているかというと、アルミの構造体自体は熱伝導率が良いので、これを冷暖房に使っています。壁と天井自体が暖かくなったり、冷たくなったりするのです。なのでこの家はエアコンが一切ない」