このブログ形式によるインタビュー連載を始めて1年近くなった。KITの多くの先生方が地域の特色を意識して研究・開発をすすめていることに感銘を受けた。その中で増田先生は都市・金沢そのものに焦点をあてている点が特徴的である。
――都市を研究するにもさまざまな切り口がありますが・・
「われわれは都市というと、どうしても繁華街を第一に思い浮かべますが、ほとんどは住宅地なのです。都市といえども住宅に住んでいる人たちがビジネス街や商店街の周辺に集まり住んで市街地が形成されています。また、郊外の住宅地から中心市街地へ通勤したりショッピングに出かけたりしているわけですから、圧倒的に多いのは住宅なのです。
その住宅をどう快適に住みやすくするかということが大切です。われわれの研究では一つ一つの住宅の設計ではなく住宅規模とか建築密度とかが関わってきます。あとは環境、住環境ですね。例えば道が歩きやすいとか、町並が美しいとか」
――要するに集合としての住宅なのですか?
「そうです。住宅の集合体といいますか、そこに都市との密接な関わりが生じてきます。でもやはり、金沢で面白いのは歴史ですね。伝統のある土地柄なので。研究テーマとしては金沢における都市型住宅の歴史的変遷を追っています」
――金沢の都市住宅はどのような特徴があるのですか?
「一つには城下町ですから、武家屋敷の伝統をひいているということです。京都は公家の文化はあっても武家の文化ではなく、むしろ京都の代表的住宅は町家です。他の古い街、萩や松江といった城下町でもほとんど残っていないでしょう。金沢も決して武家屋敷が多く残っているわけではないのですが、空襲にも合わず歴史が途絶えませんでしたから。日本の中でこれだけの城下町が残っているのは金沢だけですので。研究材料というかデータに恵まれているということはありました。
でも、厳密に言うと武家屋敷は都市型住宅とは言えないのです。大きくて豪華な邸宅でしたから。ただ、それをコンパクトにした下級武士の足軽屋敷がありました。下級武士系の伝統が明治以降受け継がれるのですが、維新以降、武家が没落しますから、明治の初めはしばらく都市としての金沢は沈滞します」
――士族は食べていくのにも苦労するわけですね。