大澤教授はもともと高分子化学が専門で、現在は生分解性プラスチックを中心とする幅広い研究を行っている。いろいろ話をうかがっていると、どれも興味深いものばかりだが、一番面白かったのはDNAを"材料"として使うという研究だ。
DNA、デオキシリボ核酸は遺伝子本体として遺伝情報を保持している物質。現場に残された毛髪などごく僅かのものから本人を特定できるDNA鑑定は毎日のように新聞に登場し、「親の音痴のDNAを受け継いだ」など、DNAという言葉はすっかり日常にも浸透した。
2000年のヒトゲノム解読以降、バイオや医薬品などで産業分野での応用も進んでいる。
しかし、これらの話はすべてDNAの遺伝情報についてのいわば本流のお話。最近、注目されているのはDNAを、数億の分子量を持つ安定した超高分子という点に着目して材料として利用しようというものだという。DNAにとっては"傍流"のお話だが、新鮮で興味深い。思わぬイノベーションが出てくる可能性があるのでは。
――DNAをどのように利用するのですか?
「DNAの構造を化学的に見ると二重らせんになっています。この構造の空いたところにダイオキシンなどの環境ホルモンが入りやすいのです。このことは以前から言われていました。分子構造が似ているので入りやすい。入ってしまうから損傷しやすいというわけです。だから毒になる。
分子の形で説明すると、同じもの同士はくっつきやすいのです。水は水と溶け合い、油は油同士で溶け合いますが、水と油は溶けません。環境ホルモンとDNAは構造が似ているのです。
だけど、それをむしろ積極的に材料として、有害物質を取り込む材料を開発しています。ただ、DNAは水溶性なので、これをフィルム化しないといけません。」
――DNAに吸着させて処分するのですか?