建築・都市の分野でもデジタル化が進んでいる。この分野、以前はコンピュータで図面を書くCAD(computer aided design)ぐらいしかなかったがデジタル化はより広く、深く浸透している。その最前線にある技術の一つがBIM(building information modeling)だ。下川先生は目下、このBIMの研究に取り組んでいる。
――もともとはCADの研究をしていたのですか?
「はい、学部4年、修士、ドクターとCADの開発をしていました。まだ、CADが出始めの頃でしたが、このソフトはいわゆる汎用で何にでも使えますよということで機械系の人も使ってました。線を引くとか基本立体を作るという単純なことしかできなくて不便で、それをもっと建築設計者が使いやすくできないかということをやっていたのです。
僕は建築設計は専門ではなく、そういうツールの活用法とか、新しいツールを開発したり、それによって新しい建築を実現させるプロセスに関心があるのです」
――建築CAD学のようなものはまだないのですか?
「建築学会の中に情報システム技術委員会というのがありますが、人数的にはそれほどではありません。
これも難しくて構造計算のためのツール開発ですと、構造系の人がそこに半分、足を突っ込んだり、デザインをやっている人がそこに半分,入ってみたりしています。逆に情報システム技術部門でどっぷりやっている人というのは構造なのか計画なのかはっきりしないという部分もあるのです」
――先生が現在、研究中のBIMはCADとはどう違うのですか?
「今、建築業界の中でもほぼ100%、CADを使ってますが、ほとんど2次元CADなのです。昔の設計図をコンピューターに入れただけの話で、ある意味まだアナログ的な世界なのです。その情報が劣化しないとか再利用が楽だという点では便利ですが。
本来、3次元の立体である建築を3次元記述しないまま、平面図、立面図、断面図といろいろな見方の図面を書いているわけですが、ひょっとしたら矛盾が生じている可能性がわるわけです。事実,現場ではそれによって非効率な部分が結構でてきているわけです」
――BIMはそれを立体化するわけですか?