先生の専門、機械工学の中での「燃焼」の研究は恥ずかしながら初めてうかがった。さんざん飛行機には乗ってきたが、ジェットエンジンの開発などにも燃焼の研究は重要だという。日常の便利さが地道な基礎研究に支えられていることを改めて痛感した。
----防衛大のご出身の先生は初めてです。香川県の高校から防衛大に進まれるきっかけは何かあったのですか?
「子どもの頃は模型づくりに熱中して高校は理数系で、船か飛行機を作りたいと。飛行機のパイロットにもなりたかったのですが目が悪かったので、防衛大で機械をやることに。もともと、防衛大は理工系しかなかったのです。私より1、2年後に文科系ができました。理工系の中で何をやっているのかと言うと、一般のカリキュラムはKITとあまり変わらないです。ただ、プラスアルファがあって、銃器を扱って射撃したり、泳がされたりしました。要するにアメリカで言うとウエストポイントの士官学校ですから。自衛官になるための学校です」
----普通の大学生活とは違うのですね。その後、神戸大学に進まれたのは一般の大学でもっと勉強したくなられたのですか?
「いいえ。防衛大学校を出ると自衛官に任官するのです。3等陸尉とか、昔の少尉さんに。その中で職域がいろいろ分かれるのです。私は技術職の研究開発の分野に入ったのです。そこから神戸大学に国内留学という形になりました」
----では、あくまで防衛庁の職員として行かれた?
「そうです、そうです。ここKITでいう社会人過程と同じような感じで行かせて頂きました。」
----と言うことは、お給料をもらいながら勉強ができた? 最高ですね。その頃、学生運動はなかったのですか?
「ありました。私が自衛官として神戸大学に入ったのが最初だったのです。自衛官を受け入れたのは他に大阪大学、東京工業大学など、あまり多くはないです。私は実家が四国の高松で近いところがないかと。ちょうど神戸大学におられた先生が引き受けても良いよと言われて。私が入ると教職員組合からクレームがついたりしました。でも博士課程まで終了して戻りました」
----神戸大ではどんな研究をされたのですか?
「機械工学で燃焼とか伝熱を扱っている研究室でした。熱工学的な意味での燃焼で化学反応の細かいところまでは扱いません。
でも当時の先端で、レーザーや光学計測で燃焼の場の流速や温度を測ったりする実験的な研究をさせていただいたのです。
例えばジェットエンジンがあります。その燃焼室で、流動場、燃やして炎ができているか? 燃焼領域がきちんと確保できているか? その場では一番効率良く、なおかつ排気ガスを出さずにするにはどうしたら良いのかなどを実験的に調べるのです」
----今だと、スーパーコンピューターを使ってやれそうです。