いま『「高専」が見直されている』

月刊文藝春秋6月号の「財界の新ご意見番が語り尽くす 日本経済復興会議2012」と銘打たれた記事で、高専が高く評価されています。

会議の参加メンバーは、稲盛和夫・JAL名誉会長、飯田 亮・セコム創業者、牛尾治朗・ウシオ電機会長、數土文夫・JFEホールディングス相談役という錚々たる方々です。

記事中には、『「高専」が見直されている』の中見出しが掲げられ、製鉄会社を率いた數土氏が、「われわれ技術屋の世界では、大学の学部卒業生よりも、高等専門学校、つまり高専の学生のほうに需要がある―中略―総じてどのメーカーでも高専卒のほうが即戦力になる」と述べています。

さらに、「『いい大学』を出た連中が周りにいっぱいいると、若干ハンディを背負っていると思うものだから、一生懸命頑張る」(稲盛氏)、「理屈では負けたとしても、実務で上回ろうとする。その意欲はすばらしい」(牛尾氏)と高い評価が相次いでいます。

一方、パナソニックが昨年、「2012年度入社の採用計画で、新興国などの事業拡大に向け、全体に占める海外採用の比率は過去最高の76%となる」と発表したのをはじめ、多くの企業は今、成長の著しい海外市場へ目を向けているようです。

雑誌記事や報道で、企業側が「実務」と「海外」重視の姿勢を鮮明にする中で、改めて金沢高専の教育内容を見てみると、他校に先駆けて、両方に対応してきたことが分かります。

習うより慣れよ

例えば、実務重視を象徴する「創造設計」の授業。機械工学科の「創造設計Ⅰ」では1年生が、オリジナルの橋模型を作り、強度とデザイン性を競う課題に取り組みます。

より強く、無駄がなく、美しい橋を作るためには、どうすればいいのか。この課題に挑むため、授業では、「質量・力・モーメントの概念」を身につけながら設計の基本を学び、同時に組み立ての要点と段取りを体で覚えていきます。

手を動かしながら、理屈も付いてくる、いわば「習うより慣れよ」と言えるかもしれません。こうしてエンジニアに求められる能力を1年次から積み上げていくわけです。

質量・力・モーメントについて、理屈中心に覚える教育とどちらが「実務」向きか、答えは明らかでしょう。

ニュージーランドからの留学生も体験した「創造実験」の授業の様子

敢えて海外に飛び出す

「習うより慣れよ」は、英語学習でも貫かれています。金沢高専が目指すのは、試験問題を解く英語力ではなく、仕事やコミュニケーションの道具になる英語力を身につけることです。

30年以上続くシンガポールへの修学旅行で、在学中に1度は海外を体験できるほか、ふだんの授業でも11人の外国人教員らが、英語に親しむ環境を作りだしています。

さらに希望すれば、アメリカ英語研修やニュージーランド留学も可能です。これらのプログラムでは、英語が得意な学生より、むしろ不得意な学生にこそ、大きな効果が期待されます。感受性が豊かな若いうちに、敢えて海外に飛び出すことで、視野を大きく広げ、能力を高めた学生も少なくありません。

企業で、海外勤務や海外の取引先を相手にする機会が増えるほど、こうした経験と英語力は、キラリと光ります。

海外留学について帰国報告会でプレゼンテーションした学生

高い就職率に結びつく

企業が求める人物像と高専の教育が合致していることは、数字にも表れています。文科省と厚労省が先ごろ発表した昨年度卒業者の就職率は、大学(学部)93.6%に対して高専は100%(4月1日時点)で、大学を上回りました。もちろん本校も100%を達成しています。

もっとも、こうした環境を最終的に生かすのは、学生次第であることは言うまでもありません。高専が見直されている今こそ、恵まれた環境を目一杯活用して、1人でも多くの学生が、希望する道へ進めるように願うばかりです。

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