金沢高専では、英語の教育方針として、必ず聞く言葉があります。
その1「中学時代に英語が嫌いだった人、大歓迎です」
その2「金沢高専で学ぶのは、受験用の英語じゃない」
多くの中学生や高校生が、半ば受験のために英語を学ぶのに対して、
その3「英語は世界中の人とコミュニケーションするための道具」
と考え、5年間という長い時間を上手に使った独自のカリキュラムが組まれているのです。
なるほど…。でも、英語=ほとんどナゾの呪文、と思っていた中学生でも、本当に好きになれるのか?
某月某日、この疑問に答える場面に遭遇しました。場所は、金沢工大との共有キャンパス内にひときわ高くそびえるライブラリーセンターです。センター内の小教室は、20人も入れば一杯になるような大きさ。大教室と違って、先生が目の前に立っています。
これから外国人教員による英語の授業が始まるのです。微笑みながら学生を見渡すのは、今年9月に金沢高専に着任したロペス・カリナ先生。教室の扉が閉まれば日本語はシャットアウトされ、ずっと英語のみで授業が進みます。
ヒェー、もし発音を間違えたら、目の前の先生に怒られるのか。と思いきや、「犬を飼っている人はいますか?」「ダンスが好きな人は、手を挙げて」とカリナ先生が、分かりやすく、ゆっくり英語で話しかけてきます。
それでも「俺、チンプンカンプン」という人は、どうやら近くの学生を突つくのが、秘密の技のようです。グループ内で英語が得意な学生に、その場でこっそり教えてもらうことも全然OK。答え方も、まずは、知っている単語を並べれば、ノープロブレム。カリナ先生が、にっこりしてくれれば「俺の英語、ちゃんと通じた」と実感できます。
ま、クイズに答えるような感覚ですね。人間は、「間違えちゃいけない」と思うほど、緊張はするし、イヤになったりするもの。でも、シャワーを浴びるように、日ごろから英語になじんでいると、ルールは後から身についてきます。最初は、周りに頼りっぱなしだった学生も、いつか教える側になったりするようです。
その4「文法を間違えないように気をつけながら、日本語を話す日本人はいない」
ハイ、ごもっとも。とにかく口から英語(または英語らしき言葉)が飛び出すことが先決。
こうして、試験に受かるための英語から外国人とコミュニケーションするための英語へ、次第に頭の中が切り替わっていくんだとか。学年が進むにつれて、レベルもどんどん上がっていきます。
5年間かけて学ぶからこそ、こういう教育法も「アリ!」というわけですね。