電気電子工学科の南出章幸先生が開発したインターネットを通じて遠隔操作できるロボット教材が、今秋オーストラリアの通信教育学校で採用されることになりました。
南出先生は、金沢高専の授業でも使用している市販のロボット教材「レゴ・マインドストームズ」に、短距離無線通信技術「ブルートゥース」の機能を使って、インターネットを通じて学校から遠く離れた場所からでもロボット操作を可能にしました。
なぜこのようなシステムを開発したのか、南出先生に聞きました。
「もともとは、提携校であるシンガポール・ポリテクニクと、技術を介した交流ができないかと考え始めたのがきっかけでした。後に、遠隔操作のシステムを利用すれば、金沢高専のものづくり教育を日本中、世界中で体験してもらうことができると思い至りました」
「レゴ・マインドストームズ」は、ロボット教材としては最もポピュラーなもので、価格も安めであることから、小学校でも導入可能と考え、システムを受け入れてくれる学校を探し、沖縄の離島まで訪ねたそうです。しかしながら、日本では遠隔教育という考え自体が未知のものであり、実績も乏しく、受け入れ先はなかなか見つかりませんでした。
そんな時、オーストラリアの通信教育学校・ブリスベン・スクール・オブ・ディスタンス・エデュケーションの教員らと知り合う機会があり、システムに興味を示されたそうです。国土の広いオーストラリアでは、学校のない過疎地の子どもたちにインターネットを使った遠隔教育が当たり前に行われており、子どもたちの好奇心をくすぐるであろうロボット教材は、彼らの目にたいへん魅力的なものとして映ったに違いありません。南出先生は、すぐに現地へ飛び、デモンストレーションを行ないました。2度目の訪問でシステムの採用が決まり、現在、実用化に向けて改良を進めています。
「システムが実現すれば、子どもたちは自宅のパソコンでロボットの映像を確認しながら、自由に操作することができるようになります。複数のロボットを、バラバラの場所に住む子どもたちが同時に動かすこともでき、遠く離れていながら一体感を持って遊んだり学んだりすることが可能です」
教員との一対一の授業が多い通信教育では、子どもたちが飽きてしまい、モチベーションが下がることもあります。そんな中で、こうしたロボットを使った授業があれば、きっと楽しんで取り組んでくれることでしょう。
「将来的には、このシステムを使って、金沢高専の学生が子どもたちへの指導を担当できるようになればと考えています。学生にとっては人に教えることは自分が学ぶ機会となりますし、自分が作ったものを世の中に出すという貴重な経験ができます」
技術開発だけではなく、学生への教育効果についてもちゃんと考えている南出先生。さすがです!
介護施設で3Dシアター体験システムを披露したり、シンガポールの日本人学校で出前授業を予定していたりと、大忙しの南出研究室。今後も目が離せません。