夢考房公開発表会:ロボット業界で注目を集めているセンサを開発した技術本部長が述べたこと

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3月5日(金)夢考房公開発表会がKITで開催されました.

基調講演の講師はロボットのセンサとして世界的に注目を集めているレーザ測域センサを開発している北陽電機の取締役技術本部長森利宏氏でした.題目は「センサ分野での産学共同教育―技術者の育成」,以下,講演の概要を紹介します.

北陽電機は1946年に企業し,現在,従業員160名,売上40億円の中堅企業です.この会社が今,ロボット業界において非常に注目を集めています.それは,小型軽量のレーザ測域センサを5年前に開発したことによります.レーザ測域センサはレーザ光線を周囲に放出しその反射波を計測することにより,周囲の形状を精密に計測するものです.その当時もレーザ測域センサはあったのですが,SICK社の製品は重量3.8kgで消費電力も高いものでした.それをわずか重量160g,サイズも30分の1にまでダウンサイジング,低消費電力に成功したセンサが北陽電機の製品URGでした. このURGはコンパクトなサイズとその優れた性能で,日刊工業新聞から物づくり部品大賞,経済産業省からロボット大賞優秀賞,日本ロボット学会からは実用化技術賞を受賞し,現在までに累計2万台を出荷しています. このURG躍進を支えているのは北陽電機の社内教育なのです.

次の4つのキーポイントがあります.
  1. お金を使う教育
  2. 手作りの教材作り
  3. OJTから階層別教育へ
  4. 教育内容のPDCAサイクル
まず,1番目は今まで就業時間以外に社内教育をしていたものを全て時間内にしたこと.つまり,教育にお金をかけたということです. 

2番目は,社内教育の教材に既製品を使うのではなく,担当者に教材を作らせることです.教材作成には時間がかかります.この作成を就業時間でもOKにし,残業代の上限も設けないことにしました.いざ実行していると残業もほとんどなく,しかも,教材を作ることによる担当者が深く勉強しスキルが上がったということです. 

3番目は,今まで主にOJTでやっていたものを,段階的かつシステム的に実施するようにしたことです.OJTはいい面もありますが,担当の上司により当たり外れが大きく,効果が違うという大きな問題があります.教える教材を作ることなどにより統一的に教育することにより,この問題を解決しています.さらに,自分の専門以外のことを社内教育により学ばせることによりお互いに相手のことがわかり,ディスカッションが盛んになり意志疎通もスムーズになったことも大きな効果だと述べられていました. 

4番目は,教育内容のPDCAサイクルを回して改善することです.そのため,演習問題を導入することにより理解度を定量的に評価し,講師も2年毎に交代することによりマンネリ化を防いでいます.改善するためのレビューに力を注いでいるとのことでした. 

最後に多少表現が違うかもしれませんが,森氏が欲しい学生像を話されていたので紹介します.

「自分の行動を積極的に展開できるアクティビティの高い人材が欲しい.そういう人間はどのような不況になっても生き残っていけるのだから.」

出村

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