評価って何だろう

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近は何でもかんでも評価することが流行っていて,しばしば行き過ぎだと感じています.いちばん気になるのは,評価という言葉が,evaluationではなくてassessmentになっていることです.これについて,以前に書いた文章がありますから,ここでご紹介します.

隠れた成果を見つけよう

所をとりあげる

 

同僚が英語を全く話せない小学生の娘さんを連れてアメリカに留学した。アメリカの先生が、娘さんの首に小さなカードを掛けてくれた。そのカードにはこう書いてあった。

「私は日本語が話せます!」

娘さんは胸を張って学校へ行った。

ハンディを(あげつら)わず長所を前向きにとりあげる。これが評価するということだ。

 

評価はやる気を出させるために

 

「『勉強しよう』とやる気が出たのは、試験の点数が良かった時ですか、それとも悪かった時ですか?」

このアンケートに対して、「点数が良かった時」という回答が圧倒的に多かった。人がやる気を出すのは、失敗した時ではなく成功した時であり、結果が評価された時なのだ。

「評価」という日本語は、前向きで肯定的なニュアンスを持っており、「厳しい」や「低い」という接頭語をつけてはじめて否定的な意味となる。「評価する」とは、「査定する」とか「合否を判定する」「欠点を探す」ではなく、「良い所を見つけ出す」前向きな作業なのだ。

したがって、「評価」に対応する英語には、assessment(事前に査定する)ではなく、結果の中に価値を見出してその量を測るという意味をもつevaluationがふさわしい。

 

失敗には成果が隠れている

 

プロジェクトの結果は、成功か失敗かのどちらかだ。設定された目標を達成できたら「成功」、できなかったら「失敗」だ。目標が曖昧で、成否が客観的に判定できないのは、そもそもの目標が適切でないのだから論外だ。

プロフェッショナルに対する評価は経過や手段ではなく、結果に対して客観的になされるべきであるが、失敗したプロジェクトの評価は難しい。

目標に達しなかったという事実だけを取り上げて、そのプロジェクトを完全な「失敗」と決めつけてしまうことに、私は賛成できない。それは、「失敗」には二種類あると考えているからだ。

一つは、杜撰な企画、調査・検討の不足、怠慢や不注意などに起因する成果のない失敗だ。これは罰せられて当然である。

しかし、ほとんどの失敗は、実は「隠れた成果を持つ失敗」だ。成果とは、プロジェクトの中で生み出された新しい知見のことである。例えば、「予知できない人智を越えた困難によって失敗した」のは、「予知できなかった新しい知見が得られた」という「成果」が得られたことなのだ。

そして、たとえ目標が達成できなくても、副産物として小さくても輝く成果の卵が得られたならば、そのプロジェクトは評価されるべきである。

 

失敗を恐れては成功はできない

 

失敗したプロジェクトが低く評価されるのは否めないが、それをもって罰するのは問題である。罰を受けた人は萎縮してしまい、次回からどうすれば「失敗しないか」ではなく、「罰されずにすむか」を学ぶだけだ。そして、確実に達成できるようにと低い目標を設定するようになり、プロジェクトへ参加しなくなり、酷いときには結果を隠すようになる。

あらゆる研究開発は本来リスクを伴う。成功を狙うなら試行錯誤を数多く繰り返すしかない。ヒットを増やすには打席数を増やすしかない。チャレンジしなくなることは、成功する機会を自ら放棄することだ。

 

隠れた成果の見つけ方

 

では萎縮することなく、失敗を糧として再挑戦するにはどうすればよいだろうか? その手がかりは次の二つだ。

(1)成功の必要条件は、情熱と能力。

(2)得られた結果はアナログ量。

 

情熱と能力は、個人ではなくチーム単位で考えなければならない。それらを若干欠いたメンバーがいる時でも、メンバー同士が切磋琢磨して補えばよい。これこそがコラボレーションだ。

また、情熱と能力は成功するために必要だが十分ではない。能力あるチームが情熱を傾けたプロジェクトでも目標を達成できず、結果としては失敗とみなされることもあるだろう。しかし、成果はまた別である。

 

目標に達しなかったのはすべて失敗だとデジタル的にとらえてしまうと隠れている成果を見落とす。不足量をアナログ的にとらえ、達成できなかった部分を定量化し、その原因を徹底的に究明する。こうして今後の課題を明らかにすれば、隠れていた成果を見つけられる。また、失敗したプロジェクトの成果が別の目的に有効活用できる場合もある。このように柔軟な評価を行えば、技術の蓄積と継続が現場に根づく土壌が作られるだろう。

こうして失敗を正面から受けとめ、新しいプロジェクトに果敢に挑戦する者は、不屈の精神と旺盛な探求心を持つ者として周囲から信頼され、プロジェクトマネージャとして成長する。

失敗を振りかえって後悔し萎縮していても何も得られない。足下を見つめて、隠れている成果を拾い上げるのだ失敗を恐れて、難しいテーマに挑戦する勇気を無くしてはならない。能力あるチームが情熱を傾けた結果には、必ず成果が隠れているのだ。

成功も失敗も、昨日までにしてきたことの全ては今日の、そして未来のための準備である。人がすることに何一つ無駄は無い。

 

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