ABUロボコン2007大会報告

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ABUロボコンで熱戦を繰り広げる夢考房「月讀」チーム

夢考房チームを引率された工学設計教育センタの高羽技師から学内誌「旦月会報」に掲載された記事を寄稿して頂きましたので以下に紹介します。大会の舞台裏がわかりとても興味深いですね。


ABUハノイ大会でベスト8、技術賞を受賞 
~ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト2007ハノイ大会~ 
  

夢考房ロボット・プロジェクトのチーム「月讀(つくよみ)」は、2007年8月26日にベトナム・ハノイ市内にあるQuan Ngua(カングワ)スポーツ・パレスで開催された、ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト2007ハノイ大会に、日本代表として出場した。大会ではベスト8に入り、技術賞(Best Engineering Award)を受賞した。  

選手は、2日前となる8月24日にハノイ入りすることが義務付けられている。メンバーは、国内・国際線を乗り継いで午後10時にハノイ・ノイバイ国際空港に降り立った。空港で、予め知らされていたボランティア・ガイドの方と落ち合い、ホテルへと向かった。空港を出ると南国特有のむっとする湿度の多い空気に包まれ、選手は翌日に開梱するロボットのことを心配した。  

翌日の8月25日は開梱とテストランである。午前8時より開梱作業を開始すると、ほぼ1ヶ月の間このスポーツ・パレス内で、放置されていたロボットには錆が出ており、果たしてロボットの機能が正常であるか、不安が募ることとなった。開梱の後はロボットの重量と外形の検査を行い、それをパスしないとテストランを行うことが出来ない。選手は開梱と組み立てを急いだ。ロボットの検査を無事にパスした後で、提供されたテスト場所はピット内と大会会場の2箇所である。大会会場を用いたテストランは1回のチャンスしか与えられないが、ピット内のテスト場所は随時使用できる。このため、大会会場でのテストランを前にして、ピット内での動作確認を行うこととなった。ロボットの動作を行いながら、判明したことは、国内大会の組み立て方と比べ、はるかに雑にコートが作られていることであった。塗られている塗料は薄く、なおかつ貼り合わせ部分には数ミリの段差があり、これが原因と思われる動作異常が確認できた。これでは、大会会場でロボットが正常に機能しないため、センサーの感度とプログラムの変更を行いながら、ロボットを正常な動作にすべく、懸命の復旧作業が続いた。この作業は午後9時まで継続することとなる。  

大会当日は、先ず予選リーグが行われる。KIT月讀チームは、スリランカ・Paradeniya大学チームと対戦し、20対0で勝利した。また、第2戦目はブルネイ・Jefri Bolkiah工科大学と対戦し、13対1で勝利した。リーグ戦を戦い、メンバーが感じたことは、流石に国内大会を勝ちあがり、代表として参戦しているチームは、全てのロボットが機能し、かつ作戦が実行できることである。  

決勝リーグで対戦する相手は、ワイルド・カードと呼ばれるリーグの班に於ける2位以下のチームで、得点が多いチームから割り当てられる。リーグ戦が終了した時点で、決勝トーナメントでKIT月讀チームと対戦するチームは、中国・西安交通大学であるごとを伝えられた。中国チームは、ライントレースではなく、カメラを用いた状況判断が出来る手ごわい相手である。チーム・メンバーは相手の作戦を読み、対応するプログラムに切り替えた。ところが、この時点でハプニングが起きた。1つは天候の急変である。ピット・エリアと大会会場は屋外の通路を通ることになっており、簡易なテントが張られている。そこに豪雨と強風が襲った。このため、簡易な雨避けテントは簡単に壊れてしまい、出場チームはテント地でロボットを囲い、移動することを強いられた。この降雨で、ベトナム・チームのロボットが動作不能となり、決勝トーナメントから離脱した。もう一つは大会での得点計算ミスからワイルド・カードのチームが変わったことである。結局、決勝リーグで対戦する相手チームがマレーシア・マレーシア工科大学であることが判明したのは、競技開始時点でお互いのチームがコート内に入ったときであった。作戦がまったく違うが、このまま競技を続行せざるを得ず、高得点ゾーンの取り合いとなったが、惜しくも12対7で敗れた。  

大会が終了し、表彰式でKIT月讀チームは技術賞(Best Engineering Award)で表彰されることを伝えられた。技術賞の受賞に関しては、後で行われたABU主催の交流プログラムで紹介されたが、ロボット自体の仕様と特性を、選手に把握してもらう為の仕様書を大会参加前に準備し、当日の作戦展開の参考資料として活用していたことが評価につながっている。  大会が終了し、選手たちは各国の代表選手と交流を深めた。ABU世界大会は2002年以降2回目の出場となるが、各国の選手は2002年大会のことも知っており、選手・メンバーは瞬く間にボディ・ランゲージを駆使しながら彼らの間に溶け込んでいった。また、今回の大会競技のモチーフとなった世界自然遺産であるハロン湾の視察では、ちょうど1年前に題材となった物語の翻訳と自分たちの創ったロボットの作戦を想いだしながら、この1年間の過程を振り返ることが出来た。  

今回の世界大会参加を通じ、選手は主催者であるNHK、トヨタ自動車、松下電器、マブチモータ、ミスミの各企業の方々から暖かい声援を受けた。また、出発までの準備に際し、夢考房、こぶし会、学内関係者から多くの支援をいただいたことに感謝したいと思う。大会期間の7日間を通じ、大過なくすごせたことを8月30日の昼に帰着した際にこの感を強くした。そして、大会期間中にベトナム語の通訳と交渉の仲介をお願いした、現地のベトナム国際大学・ボランテイアスタッフの3名にも改めて敬意を表したい。 

                                金沢工業大学 工学設計教育センター  高羽 正人

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